ひとつで上等ですよ

 アニメは、特にテレビシリーズは、長く、話数が多い。そこで、あるタイトルの中からまずひとつだけを見るとしたとき、どれがお勧めかを挙げる。


少女革命ウテナ: 第6話「七実様御用心!」
ブレンパワード: 第9話「ジョナサンの刃」
ターンエーガンダム: 第50話(最終話)「黄金の秋」
月詠: 第7話「……だって欲しかったんだもん」
創聖のアクエリオン: 第6話「想い彼方へ」


理屈:
 放映中のシリーズ作品を視聴していくというのはリアルタイム性が高く、周囲の盆暗衆や2chの実況スレに連れあって即興のネタ出しを交わし、あるいは沈思黙考しタイミングを計って投下したレス群によって本副その他のスレの流れを変えてみたりといった、現在進行形の遊びである。また、まだ本放映が終了していない、という状況と、すでに完結しているがまだ自分が見終わっていない、という状況とでは、人間前者のほうが興奮する(人間の感覚はやはり唯我論では出来てないな)。
 このふたつの上乗せ分によって、話自体がストレスフルあるいは低テンションな回であっても、リアルタイム視聴組は血圧を保って先へ進むことができる。そして話数を連ねて重ね溜めたストレスは、やがてどこかの回でピークを成し決着し解消し、そのカタルシスによってそれまでの視聴コストが上書きされる*1。ここが見落とされがちで、そのため全話視聴組は放映終了後の新参者が低テンションな回を引いて眠まる怖憂がわからなくなってしまう。
 全話視聴済の先輩たちは、うっかり「最初から見なよ。順番に全部見てこそわかってくる良さがある」などと言ってしまいやすいが、新参者には上記上乗せ分の側方支援が無く、コストが引き合わない。どうせ、いったん放映が終了してしまったら、全話視聴組がした体験を新たな誰かに与えることはできないのだ。人間、同趣味の友人と、体験と言葉を共有したいものだが、この場合前者はもう無理だ。
 そういうわけで、おすすめする時も、その一話がシリーズ全部のテーマを含み、縮図になっている必要とかはない、単発でよい。DVD一枚だけ借りて来ればよい。ひとつで十分とは言えないが、上等だ。

*1 テレビシリーズのストレスとカタルシス
 作画資源の投入に多寡をつけて、少ないところで低テンションのストレスフルな話をやり、多いところで高テンションのカタルシスな話をやる。その二種を文脈で、ドラマでつなげる。そんなしのぎ。

書いた人: 伊藤悠 (ITO Yu)
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20050518 作成。