1998年 5月第2週

 事務局からのお知らせ

たくさんのご意見をお寄せいただきありがとうございます。事務局ではより活発な討論を進めるために、ホームページの情報を参考にしたご意見、新たな視点からの発言、そして、これまでに寄せられたメールについての具体的な感想や反論などをお待ちしております。

意見番号 108-124(108-117)

あなたは原子力エネルギーが必要だと考えますか?
あるいは
必要ないと考えますか?

4月

第1、2週

第3週

第4週

第5週

-

5月

第1週

第2週

第3週

第4週

第5週

6月

第1週

第2週

第3週

第4週

第5週

7月

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第3週

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意見NO.108-117

意見NO.118-124

 



- あなたは原子力エネルギーが必要だと考えますか? -















 

----------への意見

意見NO.108


日本にとって原子力は本当に必要?

名前 安達 徹 (23歳)


日本

私は学生であり、そこから見た一つの意見として述べます。私はいま新潟の長岡にいます。ここは柏崎・刈羽原発の目と鼻の先であり、山を越えると発電所が見える所に住んでいます。また、電力会社から年間1万円の電気料金の払い戻しがある地域でもあります。(迷惑料らしい)しかし、だからといって、ここでは、柏崎のように避難訓練やパンフレットが配られてはおりません。また事故の際に必要なヨウ素剤が配られているわけでもありません(長岡市のヨウ素剤備蓄量は10万錠、人口は19万人!!です。ほとんどの人はあることすら知らない)。これが原発付近の地域の現状なのではないでしょうか。地元の人と話しても話題の種として、せいぜい「事故があったらまず助からない」と笑うことぐらいです。現在の日本の原子力政策はどうもやっていることがちぐはぐにおもえてなりません。人間の作ったものに絶対ということは存在しません。必ず何らかの事故を起こすものです。これは今までの数々の歴史の中で証明されてきたことです。だからこそ、慎重さや、もしものことを想定した用意が要求されるのです。それに対し、日本の原子力発電は絶対安全であるという前という前提の下に宣伝がなされています。しかし現状はどうなのでしょうか。もし事故が起きた場合、日本での大規模災害に関する対応を考えると、お寒い事情であるように思えてなりません。そういったまだまだ未知の部分が残されている技術を安易に使うべきではないように思えます。そのまえにできる事があるのではないのでしょうか、太陽電池による、電力のピークカットや、燃料電池やコジェネレーションによる温熱供給での利用効率の向上、都市を分散し環境負荷の低減と効率の良いエネルギー利用(ヒートアイランド減少や夏季の渇水防止)など、まだまだ選択肢は残されています。まずはそれをやってから考えてはどうなのでしょうか。

私は、けして原子力が絶対にいけないといっているわけではありません。ただ、現在の技術水準では絶対に安全でも効率的でもありません。また、原発から出てくるごみや、原子炉そのものがごみになったときの処理や、方針さえはっきりしていません。普通のごみを捨てる場所さえ苦労している現在どこに捨てるのですか。エネルギーとして、確かに有用なものではありますがまだ時間が必要なのではないのでしょうか。私達の子孫の未来を奪うことはできません。原子力は最後の選択肢です。




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----------への意見

意見NO.109


対立をつくる原発の立地

名前 木原 省治(49歳)


日本

原子力発電には絶対に反対です。その理由はたくさんありますが、身近なところで起こっている、山口県上関町での上関原発を建設しようとする動きを見ていると、痛烈に感じます。

上関町というところは、瀬戸内海に面した自然が豊かで人情の厚い町でした。

そこに今から16年前に原子力発電所の建設問題が起こりました。原子力発電所を建設しようとする人たちの理由は「原子力発電所の建設で町を活性化させよう」というものです。その時から町民の中には、「推進」「反対」という対立の構図が出来てしまいました。推進、反対ではお互いにあいさつも言葉も交さない。お互いの店では買い物もしない。などなどあらゆる分野で、分裂してしまいました。それは親戚関係、お互いの兄弟姉妹でもそうです。親が死んでもその子どもたちが全員集まれない。このような状態になってしまいました。それも小さな町の中でのことです。原子力発電所問題が起こる以前は、お互いに助けあい協力しあって生活してきました。だからこそ、ますます悲しくなります。このような対立が延々と16年もつづき、これからもいつまで続くやらわからないのです。

その最大の理由は、お金の問題だと思います。1平方メートル4〜5円の評価しかない山林や原野といった土地を、電力会社はその350倍以上の1400円〜1500円という法外な値段で購入したいと言ってきます。それに対して、原子力発電によって自然を破壊されたくない、極端な金持ちにならなくても、今までのような漁業を中心にした仕事で生活していきたい。そう思う人たちとの間で対立の構図になるのです。これまでの平穏な生活をまさに破壊させてしまうのが原子力発電所の建設問題です。大型のプロジェクトを実施しようとする場合、このような対立が発生するのは仕方ないという意見もあると思います。しかし、原子力発電所の建設では、電力会社が国策というものをバックに強引に進めることは、大きな社会問題です。原子力発電所の負の部分をいわゆる過疎地が受け、そこから作り出される電力は都会に住む者が享受するという、犠牲の上に立つ「豊かさ」というものは改められなくてはなりません。

電力の自由化や国際的に日本の電力料金が高すぎるといわれる中で、電力会社や政府もこれまでのように国策といって湯水のように原子力発電所の建設にお金をばらまくということのできる時代ではないと思います。

もちろん、原子力発電から出てくる各種の放射性廃棄物の処分や、寿命のきた原子力発電所を解体した後の放射性廃棄物の問題も未解決です。




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----------への意見

意見NO.110


いくつかの間違った考え方を正そう

名前 ラルフ・バーガー(41歳)


アメリカ

1.原発プラントが放射線やバックグラウンド放射線を放出するというのは間違っている。放射性潜在エネルギーは自然界に存在する。ある意味では、原発プラントは、放射性潜在エネルギーを急速に使用することによって、その量を減らしているのだ。

2.放射性廃棄物の量の問題が厄介であるというのも間違っている。40年のプラントの運転期間に排出される廃棄物など、一つの大きな水泳用プール、あるいは倉庫の一並びの空樽に収まるくらいの量にすぎない。

3.半減期と放射線の危険性には間接的な関係がある。短い半減期をもつ同位体は急速にエネルギーを失うため非常に危険である。一方、千年くらいの半減期をもつ同位体は、もっとゆるやかにエネルギーを流出させるため、危険性も少ない。

4.放射性廃棄物を何千年もの間貯蔵するという問題については、おおげさに考えられすぎている。子孫に残すものとしてあなたはどちらを選ぶだろうか。大気が何千年もの間にわたって酸化物に汚染された状況か、それとも放射線の監視機能をもつ一定の場所に廃棄物をコンクリート中に閉じこめておく状況か。




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:----------への意見

意見NO.111


「放射性廃棄物の危険性」

名前 居 泰郎 (26歳)


日本

原発推進者は,放射性廃棄物を安全に管理できると言いますが,現状はどうでしょうか?

天然ウランから原発の核燃料ウラン235を濃縮する際に,大量に出来る劣化ウラン(主にウラン238)ですが,果たしてこれは地下深く安全に埋設管理されているでしょうか?いいえ,そうではありません.高密度な劣化ウランは,湾岸戦争以降,軍事兵器としてミサイルの芯や戦車の装甲に利用されています.劣化ウランとの因果関係はまだはっきりしていませんが,イラクでは先天性異常を持つ子供が産まれ,戦争に参加した軍人には湾岸戦争症候群という症状が現れているのは確かなことです.また,この劣化ウラン弾は日本でも 1995年12月から翌年1月まで沖縄本島西100キロの鳥島射爆場で,アメリカ軍が 1520発を誤射しており,それをアメリカが日本に公表したのは 1年経ってからのことでした.

また,放射性廃棄物運搬時の安全性はどうなのでしょうか?日本の使用済み核燃料は,イギリス,フランスに委託し再処理しています.台湾の放射性廃棄物は,ロシアで貯蔵しようと交渉が始まっています.原発のウランではありませんが,1994年にはカザフスタンからイギリスへ,また先月は,グルジアからイギリスにウラン235が空輸されました.今日,世界中を放射性廃棄物が飛び交っています.

さて,空輸などして事故は起きないのでしょうか?1992年10月にオランダ・アムステルダム郊外の高層アパート群に,約400キロの劣化ウランを積んだイスラエル航空の貨物機が落下しました.それ以後,周辺住民の排泄物中に高濃度のウラニウムが検出されています.回収された劣化ウランは約200キロでしかないと言います.発着国のアメリカとイスラエルは事故の詳細をまだ明らかにしていません.

このような事故が闇に葬られているのに,何をもって放射性廃棄物の輸送が安全と言えるでしょうか?僕たちはただ無知でしかないのではないでしょうか?




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TO::意見No.91竹森 一正 

意見NO.112


原子力のコスト

名前 山下 幸彦(37歳)


日本

隠されたコストへの心配ですが、火力発電所はどうなのでしょうか?100万kwから出される年間200〜300万トンの二酸化炭素はどうなのでしょうか。直接的にはドライアイスにして海に沈めるにしろ(これで本当に処理になるかどうかはわかりません)、間接的には、植林を進めるにしろ(現実には、森林は減る一方です)、かなりのコストがかかるでしょう。

それに比べ原子力の廃棄物処理についてはコスト的にも技術的にも解決しています。(もちろん、さらに低コスト安全な方法について研究を進めていますが)

高レベル廃棄物はほとんどウランが変化したものです。ウランは地表近くのものが露天掘りで採掘されています。ウランが変わって生じるラドンによって、私たちは被曝しています。地下数百メートルにある高レベル廃棄物と地表近くのその元となったウランによる長期的な人類に対する被曝を比べれば、高レベル廃棄物の方が遥かに小さいと計算されています。(B.L.Cohen)すなわち、原子力発電を行うことによって、人類の被曝を減少させることができるのです。

廃炉についても世界的には何例かあり、コストの目処もついています。

また、原子炉自体のコストダウンも進められており、ABWRなどでは、火力に対する優位性もはっきりしてくるでしょう。

1996年度に日本の9電力会社の損益計算書から計算した発電コストは、原子力6.3円/kwh、火力8.3円/kwhだったそうです。もちろん原子力方が稼働率が高いため(原子力80%、火力50%)単純には比べられませんが、コストに関して心配いらないと思います。




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----------への意見

意見NO.113


原子力は安全か?

名前 ヴェベール・フローレンス(??歳)


フランス

このホームページ、及び討論はよいアイデアだと思います。非常に興味深く拝見しました。しかし、原子力エネルギーの未来に関して、唯一かけている点があるように思います。その点について、簡単に述べさせていただきます。

「エネルギー」というものに徹底的にこだわった場合、他の資源と比較した場合の利点などに鑑みて、原子力は必要だといえます。これは、私が個人的に確信を持っていることです。しかしながら、原子力エネルギーの開発は、政治的な判断にまかされています。そして、政策を練るにあたり、安全性は軽視されています。原子力は、当初、軍事的目的で開発され、その後、公のためのものとなったのです。

私の言いたいのは、発電所は2つの意味で安全でなくてはならないということです。第一に、技術面での安全性。あのチェルノブイリのような事故は二度と起こさないためです。第二に、これははるかに定義が不明確でかつ不確実なものですが、国際的な安全規定をもうけることです。というのは、原子力発電所は、攻撃目標になりやすいので、爆弾と同じくらいの危険性を持っています。その一例として、1993−94年に北朝鮮で起こった核兵器問題があげられます。韓国同様、日本の発電所は、平壌の兵器に脅かされかねませんでした。

これは、大げさに聞こえるかもしれませんが、考慮に入れられるべきことです。このエネルギーの抑止効果を信頼しながらも、結果としてもたらしうる様々な危険性を認識しなければなりません。すなわち、地域安全性や国際的な安全性についても考慮しなければならないのです。

結論として、この議題について、各国の市民が議論すべきだと思います。原子力発電を始めようと試みている国も、すでに所有している国もです。




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TO::意見No.61カリン・ヴルツバッハー

意見NO.114


原子力のコスト

名前 武藤 正寿(30歳)


日本

地球環境・エネルギー問題を考えれば、カリン・ヴルツバッハーさん(以降、カリンさんと呼ばせていただきます。)も、現状科学では原子力発電の比重が増すことに異論はないと思います。

カリンさんが気になさっているのは、政治問題ですよね。例えば例に出されたイラクでも、政治的に安定すれば、カリンさんも心配はなさらないはずです。日本にも、少数ですが原子力発電を政治問題として扱おうとする人達がいます。「東京に原発を造れ。」と言ったり、「原発に北朝鮮(昔はソ連)のミサイルが飛んで来たら、広島、長崎みたいになるぞ。」と言ったりします。こういう人達をカリンさんはどう思いますか。おそらく東京電力も、どなたかが土地を提供してくれれば、東京に原発を造るでしょう。しかし、何倍(何十倍?)ものコストをかけてまで東京に原発は造らないでしょうね。可能性としては既存の火力発電所と立て替える方法がありますが、両者の設計上要求される条件にはかなり隔たりがあるので、今のままでは困難です。また、電力の割引や交通環境の整備などによる付加価値によって、地方へ産業を分散させたい、という狙いもありました。ミサイルうんぬんの話は、ジョークなのか判断しかねているのです。ミサイルを打ち込むような戦争状態にあって、原発に狙いをつける理由がわからないのと、原発の破壊と核爆弾による爆破は大違いだからです。

政治的に不安定な国々はなぜ不安定なのでしょう。私はこういう地域にこそ、原発による安定したエネルギー供給が必要なのではないかと思うのです。戦争の引き起こすリスクを考えたら、世界が協力して、率先して原発を設置運営してあげたほうが、世界の平和への近道なのではないでしょうか。




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TO::意見No.41松本 奈津子 意見No.42北林 義隆

意見NO.115


人間道

名前 築地 賢治(18歳)


日本

要点は、今現時点で、技術的に原子力以外のクリーンエネルギーという技術があっても現実問題としては、つかえないということである。結果的にやはり完全ではないのだが原子力を使ってつぎの時代のエネルギーを考えていくしかないのである。

いまさら、原子力という人類が発見した、人類にとってはいくらか大きめの発明に対しおそれおののき、白旗をあげても、明るい未来は見えてこないであろう。多くの危機に対して立ち向かっていくのが人間道であると私は思う。

それから少し余談であるが、アメリカのように、民主主義という名において、原子力発電所がつくれなくなり、石油をむさぼり消費し、それが本当に正しいとは、少なくとも私は思わない。これまた余談であるが、太陽って基本的には原子力なんでしょ?太陽の恵、風の恵そもそもそれを生み出してるのは、原子力(=太陽)ってことですよね。原子力あってこその人類であったことは、誰にも否定できません。




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意見NO.116


人類の自殺への道標

名前 小松 庸一(34歳)


日本

現在の私たちの生活に必要なエネルギーの一部はすでに原子力エネルギーに頼っています。もちろんパソコンもテレビも電話もエアコンもすべてです。

このように地球の環境問題も地球温暖化も、知識や学問上ではいくらでも人間にとって都合の良いように解釈されますし、原子力エネルギーに関して地球温暖化しないための炭酸ガスの削減や化石エネルギーの節約などの理由づけが行われます。また、すべてに人類愛とか環境保護などの大義名分が振りかざされており、結果、不幸な事故や広島、長崎の原爆が象徴されています。

人間はすべて究極のシステムの姿を目指しているものですが、原子力発電のシステムが人間のミスや自然災害をどの程度カバーすることができるのか疑問です。

現在の20世紀の文明を維持するためには原子力しかこれから頼るものがないのであれば、何とかして原子力事故をなくすることできればよいと考えるのですが、あまりにも生活環境、自然環境や人間や他の動植物に与える被害は甚大すぎると思います。

未来は、また地球は人間が尊大さ追求すると不幸な結果、つまり人類の自殺への道標を世界各地に築いていることになるのではないでしょうか。

これから長く何世紀もこの地球に住みたいのであれば、科学者は安全なエネルギーの開発に全英知をもって進むべきだし、地球の市民は今までの生活に不必要なエネルギーの浪費はしないべきであるし、政治家は経済の追求に躍起とならず、どのような生活、経済が理想であるかをもっと議論すべきである。人類自殺への道標は原発だけでない。資源の浪費からくる環境ホルモンなどは最たるものだ。人は終を望むものである。始まりは緩やかに幕切れは突然に!




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意見NO.117


ウランは安く、石油は高い、それがすべてだ

名前 グラハム・コーアン(37歳)


カナダ

原子力エネルギーについて討論する場を設けてくれるとは、NHKもよいことをしてくれる。私は情報を与えてもらった部外者という立場にあります。科学と技術には常に関心を持ち、大学でも科学分野でのトレーニングを受けました。1970年代、少年の頃、原子炉がどのようなはたらきをするのかを図書館で知って、「よし。これがあれば公害を引き起こすことなく必要なエネルギーはすべて得ることができるのだ。問題がひとつ解決した」と思ったものでした。

好ましい点のひとつは、この新しいエネルギーがかなり安価であるということでしょう。ウラン1Kgは最も原始的な方法で燃やされた場合でも、石油80バレルと同量の熱を発するのです。これを書いている時点で、原油80バレルがUS$1,260、ウラン1KgはUS$24、50分の1なのです。価格は時と共に変わりますが、歩調を揃えて変わる傾向にありますから、原子力発電に必要とされる原料の価格は、常に石油による発電の50分の1ということです。ここから単純な教訓を引き出せます。1ドル分の化石燃料が原子力に取って代わられると、ある金持ちはほぼ1ドルを失うという計算になります。その金持ちがウランまでも所有していようと問題ではない、とにかく1ドルを失うのです!98セント失うことは1ドル失ったと感じるのと全く違いがありません。

昨年、世界中の石炭、原油、天然ガス鉱山の所有者は、原子力エネルギーのために総計約1千億ドル、約2兆円の減収となりました。今年はさらに減ることになるでしょう。10兆円の減収も時間の問題だと思います。

減収を経験する人達がいる一方で、それ以外のすべての人達は得るものがあると思います。原子力発電所が稼働することにより、空気はきれいになり、子供たちは健康になります。1970年に大阪の地下街で天然ガスが爆発し、何百人もの人が地下に埋まりました。今年2月27日、エクアドルでは石油パイプラインが爆発して、家の中にいる人の命を奪いました。このようなことは原子力エネルギーでは起こりません。

ですから、みんなのためになるこの進歩を、数人の金持ちがとどめることはできないし、さらに言えば、とどめるべきではないのです。この進歩は、彼らのためにもなるのです。彼らも家に住み、それは大阪かもしれませんね。私たちと同じ空気を吸っています。政府は金持ちにかまわず、とにかく原子力発電所を建設するべきなのです。

そうでしょう?彼らが2兆円の損をすると私、言いましたっけ?1千億ドルでしたっけ?税金のことをすっかり忘れていました。石油と天然ガスは課税されていますから、原子力エネルギーのおかげで、世界中の政府にとっては、炭化水素供給者が実際に失ったものに加えて、少なくともあと1千億ドルの減収になりました。精神科医が家庭問題を扱うとき、「記録上の患者」という言葉を使うことがあります。本当の精神病患者は病院に連れてこられたその人ではない、あるいは、その人だけではないという意味です。政府が石油の消費者からと同様、石油会社からも金を取り立てている場合に、これと同じような状況が見られると思います。民間石油供給会社は「記録上の石油会社」です。彼らの背後に隠れているのが政府であり、石油とガスから多額の金を儲けている、つまり、ある種例外的に特権を与えられた巨大な石油会社のようなものです。

原子力エネルギーを無効にするために、まことしやかに合理的な説明をして、さらにそれが世間に公表されるうな公開討論の場を、政府が喜んで設けるのはこういうわけなのです。公開され、丁重に論じられる。私が考えるに、このことに対して敬意を払う必要はありません。反核運動はロビー活動であり、石油会社とそれに依存する者の短期的な金銭上の利益として役立つにすぎません。政府は安全性について話しはしますが、誤った方向付けによって、政府の利益のために私たちが被ることになる被害、あるいは被害の危険性に耐え続けることを私たちに納得させることこそが、その真の意図なのです。韓国のタエグーで天然ガスの爆発のために子供たちが死亡するという事故がありましたが、それは一例です。

石油会社に依存する者というのは株主に限らず、政府からもらう小切手の世話になっているすべての人を含みます。(炭化水素の課税率がかなり低い米国はその限りではない。これは、今のところ米国が世界最大の原子力産業を有するからであろう。)

特に放射性廃棄物の重大性は、一部の人にもっともらしく聞こえるのもわかります。その人たちに私は次のような仮説の質問を投げかけたいと思います。あなたが放射性廃棄物は全く問題にはならいと知っていたとしても、またそう声高に主張したとしても、財政上の問題についてはどう考えているのですか、と。

もちろん、ささいな金銭上の問題など、このような重大問題に関するあなたの認識に影響を与えるはずもありませんが、マスコミには確実に影響を及ぼします。しかし、あなたは何を信じるべきか、何を信じないべきかわかっていることでしょう。原子力エネルギーに反対しながら政府からの小切手を受け取れば、どういうことになると思いますか。さらに、原子力エネルギーがその小切手の税収基盤を揺るがすことになるとしたら、あなたはその小切手を現金化して過ごす生活などしない方がよいのではないでしょうか。

ここまでの私の意見を要約してみましょう。原子力エネルギーは、ネズミを捕まえる1ドルのねずみ捕りです。私たちはネズミではなく子供たちの半数を捕える50ドルのねずみ捕りという世界に生きているのです。しかし、その50ドルは何億倍にも増えて、政界・産業界の人間の食卓上にパンをもたらすこととなるのです。これが、いわゆる原子力論争の基盤となっているものです。

これは、金と主義の間の議論であり、多くの人はどちら側に金があるのか分からず混乱しています。そのために、自分自身が賄賂を受け取ることになるかもしれないということまで想像できなくなっているのです。しかしながら、議論の余地の無い事実、最も根本的な事実、つまりウランは原油の50分の1という安さであることを知っていれば、混乱する必要がなくなるのです。

最後にもう一点。原子力エネルギーはおおいに必要だと思うのですが、たとえそれが必要でなかったとしても、またたとえ何十億トンもの原油があらゆる村落の下に眠っていたとしても、子供の健康と安全のためには原子力エネルギーの方がよいのです。必要性の点から問題を設定すると、正反対のことを行う意図がはたらいているかのように思われます。