bでも十分上にソートされるはず日記
2001/03 その2

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2001/03/13 (火)

[英語圏から。]

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 アクセスログ眺めてたらhttp://babel.altavista.com/translate.dyn%3Furl%3Dhttp%253A%252F%252Fhomepage1.nifty.com%252F%25257eyu%252Ft_ogre%252F%26lp%3Dja_en%26doit%3Ddone%26frame%3Drandomなんてのがあった。でもindex.htmlだけ見て帰ったっぽい。


2001/03/14 (水)

[evaiya.ra。安酒。]

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 以前まっどちゃんねるに触発されてつくったMADムービーevaiya.raを再アップする。yahooに登録申請する時にマイナス点になるのではないかとびびって隠していたのだが、気を使うまでもなく入れて貰えなんだ。今見るともっと映像のテンポを速く、密度を濃くできたらよかったと思う。

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 最近は偽ビール*1と安ワイン*2。甘くするためワインにリンゴ100%を混ぜる。さらに偽ビールにリンゴ100%。そしてオレンジ。

* 1:
 発泡酒のこと。

* 2:
 紙パックに入っているやつ。

2001/03/15 (木)

[こいつは素晴らしい。]

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 keymacs+。眼鏡の委員長で意地っ張りだけど実は主人公のことが好き級。


2001/03/16 (金)

[世界の果てで恋を唄った尾崎放哉。]

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2002/04/17/01aへ続く。
 YU-NOについてちょっと書き加えてみた
 YU-NOをしょせん一本道のアドベンチャーゲームと言うことはできる。それを「歴史を上書きして塗り替えていく歴史」をたどる道と解釈することで、時間ネタSF萌えな人間は大喜びするわけだ。
 と、大喜びする時間ネタSF萌えな人がそこここにいるかのような表現をしてみても1人。ごほごほ。


2001/03/17 (土)

[物理タグと論理タグの狭間で。]

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2001/03/19/01aへ少し続く。
 手短に行こう。
 HTMLには論理タグと物理タグとがある。前者の利用は盲人のための音声ブラウザや、機械的処理にとって都合がいい。一方後者はWebページの多彩な表現に役立つ。
 本家であるWorldWideWebConsortiumは前者の見た目を定義しておらず、InternetExplorerやNetscapeはこれを任意に表示している。そのため論理タグの論理的意味を無視しそれをあたかも物理タグのように用いるユーザが生じ、うるさがたをうるさくする。これは比較的穏やかなうるさがた。
 手短に言うと、論理タグは見た目を変化させてはいけない、と定義すればよい。論理タグを<l>、物理タグを<g>として、<g bold><l strong>こうすればいいのだ!</l strong></g bold>
 それに加えて、マクロタグ<m>を用いる。CascadingStyleSheet同様、どこかに定義ファイルを置いて、<m strong>=<l strong><g bold>とでもするのだ。これは各ユーザが好き勝手に定義すればよろしい。
 これとHyperTextMarkupLanguage+CSSとに違いはほとんどないが、わずかにある。HTML+CSSでは論理タグに見た目を与えていいので、ブラウザ、IEやNetscapeが論理タグを放っておいてくれないのだ。嫌がる論理タグに無理矢理物理属性を与えてくれるわけである。
 たとえば<p>タグにIEとNetscapeが物理属性「1行空け」を付与してくれてしまっていることは、一部の人間を40cmくらい悩ませている。


2001/03/18 (日)

[ハイパードールにおける眼鏡。よつばスタジオ繁盛記からの引用。]

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2002/08/02/01aへ続く。
「何も言わずに読め、とか、とにかく読んでくれ、といった紹介はB-{ビーマイナー}だということはお判りでしょうな*1
「その作品を賞賛推薦するにあたって独自の議論ができないことを告白するも同然だからね」
「しかし、まだ誰も使っていない視点から物事を語るのはたいへんに難しい。世の中にはおおぜい人がいますから」
「近代の苦悩に気づいたか、若者よ、最初の丘が山ではなかったことに。そこから前にのびるアイデンティティの戦いの道が見えたか」
「そして偉人も歴史の目からは一握りのトッププレイヤーの脇役にすぎず、百年紀のトッププレイヤーは千年紀の脇役であり、その歴史の目にすら熱的死のさだめと読む運命のあることも」
「永遠がほしくなってきたろう。まだホイル先生が売ってたと思ったが……」
「伊藤伸平の漫画を話題にしているウェブページは少なく、やあ若者シケた顔してどうしたいなどです。正直、ライバルが少ないから書こうというわけです」
「マイナーな集団に入ればアイデンティティがある。しかしファンの集団が小さすぎても寂しい。そのトレードオフというか、頻度依存だな」
「今日は『楽勝! ハイパードール』における眼鏡について話しますよ。さあみなさん、集まって」
「サー、イエス、サー」
「娘っ子の眼鏡に対する愛好の歴史は眼鏡の発明以来、描かれた娘っ子の眼鏡に対する愛好*2は絵と眼鏡の発明以来のものです。ここで長文の引用をします。先輩」
「サー、イエス、サー。電撃大王2000年6月号、よつばスタジオ繁盛記、vol1、社長とメガネとレースクィーンの巻。

S「とくにメガネがいい」
A「あんた本当にそれしかないのな」
S「このメガネのレンズの屈折で輪郭が微妙にゆがんでるところがまたたまらんのです。先生もなんだかんだいって描写が細かいですなあ。ひゃひゃひゃ」
A「べつに俺はそんなもんどうだっていいんだけどな」
S「まあ口ではそう言っても体は正直ですわ」
A「てゆうか、あんたがいつも『メガネっ娘は輪郭がゆがまなきゃウソだよなあ』とかうるさいから。人の原稿見て、そればっかチェックするのな」
S「いや、それは違う。違うぞ東清彦。メガネごしの顔の輪郭がゆがむのは、理屈として正しいだろ? それなのに『とりあえずメガネっ娘でも出しとくか』と記号的にメガネを描くのは間違っていると言いたいんだ。つまり形而上なメガネッ娘か、形而下なメガネっ娘かどうかが大きな問題であって……」
A「はいはい」
S「よし分かった。じゃあこうしよう。まずノーブラでTシャツを着ている女の子を想像してみてくれ」
A「突然だな」
S「してみてください」
A「……しました」
S「その子に水をパシャっとかけてみてください」
A「かけました」
S「胸にはなにが見えますかあ?」
A「乳首」
S「そう! 乳首が見えるだろ? で、仮にそれをイラストにするとしたら、Tシャツだけじゃなくその乳首も描くだろ? だって常識で考えたら乳首の突起が出てるんだもの。こだわりのある絵描きなら当然描くな。描くな? そしてそれを見て萌えるよね? だってオッパイが透けてるんだもの。いいねいいね。グッとくるね」
A「そりゃまあ」
S「さ、そこでメガネだ。ふつう、度が入ってるメガネをかけたら輪郭がゆがむね? ゆがむよね? ここでもしそのキャラクターがただの記号的な女の子だったら、輪郭はそのままだ。困ったことにたいていの漫画もアニメもゲームもこれに当てはまる。でも形而下な存在であることをわきまえたイラストなら当然、輪郭はゆがむだろ。ゆがむのが自然だろ? だってメガネをかけてるんだもの。胸があれば乳首が透けるし、メガネがあれば輪郭もゆがもうってもんだ。さあ、リアルなメガネっ娘の一丁あがりだ。わーい。メガネっ娘だメガネっ娘だ。ヒャッホウ!」
A「よく分かんないけど、あんたかなり特殊やで」
S「いや普通です。メガネっ娘が好きだという人はみんな同じ考えのはずなんです。ただ、あまりにも世の中のメガネっ娘が本当のメガネっ娘じゃないから、それに耐え忍んでいるのです。その点、『あずまんが大王』のよみちゃんはいいね。実にいい。俺の彼女にしておくにはもったいないくらいだ」


「はい、そこまでで結構。書き手の感情をよく表現できましたね。里見英樹はこの他にも文趣に富む文章を電撃大王やwebページで残しています。暇がある人はバックナンバーからコピーを取っておきましょうね」
「サー、ノー、サー」
「これを踏まえた上で、ハイパードールの間祥子嬢を見て頂きたい。彼女の眼鏡*3はミドルショットではリム、ブリッジ、テンプルが2重線で描かれ、アップでなくても智または蝶番部分まで判別のできる場合が多数です」
「ふむ」
「里見英樹的歪曲は5巻54頁をはじめとしてアップショットでは明確に、またミドルショットでもしばしば、見てとることができます」
「ふむ」
「素晴らしいのは第14-16話、暁のモーゼル婆ァのエピソードです。ここでは改造人間ヴェア・チカーデの高周音波によって祥子嬢の眼鏡のレンズが割られ、当然それ以後、彼女の輪郭線は歪まなくなります。いわば『形而上なメガネっ娘』のように描かれるようになるのです。これは欠如によってその存在を提示する描写であり、記号的眼鏡表現を鋭烈に浮彫します」
「ふむ」
「ほう」
「ふむ」
「ほう」
「あ? 終わった?」
「終わりです」
「ハイパードールにおける眼鏡、という本題が最後の3発言だけじゃないか。20行も引用だし」
「しかし、本当にこれだけなのです。論旨をあまりに簡潔にまとめうる自分の明瞭な思考様式が憎い。では、この眼鏡表現に留まらぬ伊藤伸平の汎富な描写力を賞賛し、蛇尾を膨らますとしますか」
「ふむ」
「と思ったけれど大変だなあ、ある漫画のどこのなにがどう上手いのか、なんてもろに主要論題*4ではないですか。空も白んできた。眠らせてもらいましょう」
「根のないことだ」
「眠気とは喧嘩をしないことにしているのです。このうえなく贅沢な信条だと思いませんか?」
「殺意をおぼえるよ。だが、寝首をかかれても、畳の上で死ねる」

* 1:
 それまで面白いことを言ってきた人間が「とにかく見ろ」と書いた作品は、きっと面白いだろう。その言葉にそういう価値はある、しかし、その「とにかく見ろ」という言葉自体は、面白い言葉ではない。

* 2:
 めがねがねDelusion Circuit OverDrive!その1Delusion Circuit OverDrive!その2を参照。第2者にはハイパードールにおける里見英樹的歪曲についての指摘あり。

* 3:
 眼鏡の構造について、ここここを参照。

* 4:
 特殊で個別なすきま論題ではない、ということ。主要論題を述べた文章は一般的訴求力を持つが、市場での競争は激しく、自分より優れた文章に出会い敗れ去る恐れが高い。ハイリスク・ハイリターン。

2001/03/19 (月)

[<p>タグと<br>タグとの狭間で。]

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2001/03/17/01aと微妙に関わりがある。
 <p>タグと<br>タグの問題、別名俺<p>問題について書こう。
 HTMLでは<p>タグは段落をあらわす論理タグだが、IEもNetscapeもこれに「一字下げかつ一行空け」という物理属性を与えてくれている。一方<br>タグは「改行」属性をもつ物理タグである。W3C勧告私的日本語訳を参照。
 さて指輪世界のコラムのような見た目の文章、行空けによって区切られる「段落の塊」のある文章を書きたいとしよう。いくつかのやり方がある。
 (A)段落を表示するために<br>タグを、「段落の塊」を表示するために2つの<br>タグを使う。
 (B)段落を表示するために<br>タグを、「段落の塊」を表示するために<p>タグを使う。
 (C-1)段落を表示するためにCSSで行空け属性を抑制した*1<p>タグを、「段落の塊」を表示するために一行空け属性をもたせた*2<DIV class="hogehoge">タグを使う*4。たとえばこう。ときどき見る。
 (C-2)段落を表示するためにCSSで改行属性を持たせた*3<DIV class="hoehoe">タグを、「段落の塊」を表示するために<p>タグを使う*5。(C-1)のいわば逆。見たことない。
 いずれの方法もそれぞれに弱点がある。(A)および(B)には今にもうるさがたの叱咤(たとえばここの項目"p"を見よ。こんなとき筆者は文字列をそのままアンカーにしたいと感じる)が聞こえてくる思いである。といって(C)の方法にも一抹の気持ち悪さがある、と思わない? 思わなければそれはそれでいい。第4のやり方もあり、
 (D)段落を表示するためにCSSで改行幅を0とした*1<p>タグを使い、「段落の塊」を表示する際は必ず<h>タグによる見出しをつけることで区切りとする。たとえば、形式内容の両義で、矢野啓介さんの「HTMLにおける「段落」をめぐって」など。しばしば見る。
 この手法(D)をさらにおしすすめると、
 (E)段落を表示するために<p>タグを使う。「段落の塊」は表示しない。たとえばこう。まま見る。
 手法(D)や(E)を一貫できるのはきれいな生き方だが、できなければいけないとまで言えるだろうか? 筆者はできないわけで、……まあそんな愚痴。

_
「で?」
「うん。『段落の塊』*6を示す論理タグがあれば、それに一行空け属性を持たせてやって解決する問題だと思うのだが」
「それは英語では使わないタグということになりますね」
「そうなる。この俺<p>問題は、遡れば英語と日本語との表記習慣の差異に発しているものではないかと思う。英語だとそんなに短いparagraphってないけれど、日本語では数文節の段落がある。そんな違い」
「日本語の『段落』を英語の『paragraph』に相当するものとして扱いたくないんですな?」
「だ。ま、こんなもんだろう、この話はこれくらいまでだろう。寿司屋のランチに行くか」
「日曜やってましたっけ?」
「あー」
「とりあえず見ますか」
「ではそういうことで」

* 1:
 margin:0em;とする。

* 2:
 margin-top:1em;とする。

* 3:
 margin:0em;とする。

* 4:
 このとき、この<DIV>タグを「俺<p>」と呼ぶ。

* 5:
 「俺<br>」。

* 6:
 「行空けによって区切られる段落の塊」って何て呼べばいいのだろう? 勉強不足だ。

2001/03/20 (火)

[伊藤伸平。]

_
「昭弘くん」
「なんか用か」
「さんをつけろよデコ助野郎じゃないの」
「会話では漫画版のほうが応用しやすいのですよ」
「2001年3月19日の日記の末尾の台詞だが、日曜というのは、この日記が現実と同期していないことを暴露してしまう記述ではないかね」
「後藤君。君はどう思うかね」
「内閣総理大臣、森喜朗君」
「それより、<ruby>タグがXHTML1.1の規格だったことが問題ですよ。大喜びで使ってたけれど、うちはHTML4.0を名乗ってたわけだからかなりアウトです、さらにHTML4.0Transitionalも推奨できないとか」

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「まあそう泣くなよ。それより、エンゼルハートの話しようぜ」
「ぜ?」
「この世界観は素晴らしい。『ジル、相手はセーラー服!! もしも地下迷宮の秘密を知られたら─────』ってねえ、手術台とアイロンと蝙蝠傘だね。密林の中にピラミッドが建ってて、そこが女子校で、生徒会の副会長の名前がジルで、生徒会長はスフィンクスの化身で、主人公は元文部省コマンドのお尋ね者でセーラー服」
「第2話の設定のトバしっぷりは抜きん出ていますね」
「これって、幕府と公儀隠密崩れの浪人、地方の小藩とその藩主、な時代劇かなにかが下敷きになってるってことかな?」
「さあて……時代劇詳しくないです。主人公の格好はスケバン刑事で」
「第3話葉隠学園は『用心棒』か」
「かな? 『用心棒』は『血の収穫』が下敷きでしたっけ。何が下敷きなのかには関わらず、『何かを下敷きにしている感じ』の面白さってありますよね」
「背景に豊かなものがある雰囲気?」
「氷山の一角というか、出し切っていない気配。先人の歩んだ道、よく知っている手法を使うゆえの余裕つうか」
「たとえばまじかるとこちゃん。FreeBSDや魔法少女方面に僕は詳しくないのだけれど、詳しい奴が色々な元ネタをからめて作ってる与太話なのだろうな、という面白さを感じる」
「他人のオタク酔狂博識を眺める楽しさですね。ハイパードールと違って主人公のキャラクターとレギュラーの少なさから会話の言葉とテンポとの妙はないのですが、単発の台詞に攻撃力の高いのがあって、『こいつがありゃ首都じゃ何人もの人間の命が──』とか。世界の広がりを感じさせるいい描写と思います」
「『こいつはおまえらの引導さ。このラインに沿って歩けば、迷わず地獄へ堕ちられる』なんて、面白い台詞だったね。決め言葉っぽいのだけれど、第1話世紀末学園でしか使ってない、けれど、アディ・リンの決め言葉という印象が強い。桜吹雪みたいな見得を切る展開が結局第1話だけなんでそうなるのだな。おっと、友達じゃないのにアディって呼んでしまった」
「『友達だったらアディって呼ぶさ』。毎回繰り返されるのはこっちですね。これがこの」
「行くも帰るも大阪の?」
「行くも帰るも別れては、です」
「語句検索って便利だよなあ」
「この漫画最強の台詞ではないかと」
「なぜ」
「ところがそれを言ってしまうのは無粋にも思えるので」
「それが君の足元だな」
「足元ってなんです」
「理屈で他人や自分を記述していくのには楽しさがある、たとえばダーウィニズムから人間を観たりとか、それは自分の足元を削っていくことでもあり、それもまた楽しいのだが、しかし自分の足元にはもうこれ以上は削れないという限界がある。それを言っちゃあお終いよ*1、という奴だ。他人の足元を面白い面白いと言いながら削ってきた報いは、いずれ下される。そう思ったことはないか」
「報い? 誰が下すんです。神様ですか」
「『なんでよ おがんでみたいじゃんお宝!!』のリンの表情好きだ」
「『悪く思うな お互いさまだ』の手のひらを閉じ開きする仕草とか」
「ゲストキャラクターいいよな。第2話のジル、第3話のミツヤ、第4話のヤン姉さん」
「ちゃんとリンとからんでいるところが良いと思うのです。主人公が他人の人生に一瞬手助けするだけのパッセンジャーになっていない。あ、今、ナチュラル親父ギャグを2つ踏みかけた」
「ちょっとやばかったね。エピソードが重ねられていくと主人公は狂言回しにならざるをえないから、エンゼル・ハートが4話で終わったのはその視点からは良かった」
「くー! やっぱり第4話いいわ。しかたない、喋るよ。喋ります。言おうじゃないですか」
「われわれは皆、いつか喋らなくてはならないからね」
「1話2話は、ラストでのリンとロビンのやりとり『友達だったらアディって呼ぶさ』『はいセンパイ!!』が主です。2話ではそれに『案外いいお友達になれたかもしれませんよ』がつきます」
「よくわからんが」
「3話はミツヤです。ミツヤはリンと同等の戦闘力をもっているのですが、友達にはなれないのです。ミツヤを殺す場面のカタルシスは素敵です」
「他人をかばって死ぬ、ってのが2話のジルに続いて3話の名無し君で出てくるが、冒頭でリンに苛められてる描写から、人情が小爆発*2して泣けるんだよな」
「さあ白眉、4話ですよ。さっそくヨウ君の『言わないでください』から始まります」
「着衣の乱れを直すヤン姉さん萌えるね」
「一通り人物の描写の後、再びヨウ君とリンの場面、『あなたはそんな人じゃない』『わたしがどんなヒトだろうとおまえの知った事か』つまりヨウ君は注文をつけている。こういう人間になれよ、と言うようなものです。ここまでリンにそういうことを言った奴はいない。いや、ロビンは、私の先輩になれよ、と言っていますがね。ここはですね、あれですよ、フリットクラフトなんですよ」
「なにそれ」
「古典、教科書、聖書、『マルタの鷹』のフリットクラフトです。序盤1/3くらいの、ほらここです。読み返してごらんな」
「『タコマで不動産売買の事業を営んでいたフリトクラフトという男が、ある日、昼飯をたべに事務所を出かけたきり、帰ってこなかった……』」
「あれ、こりゃ創元の村上啓夫訳だ。あまり気の利かない翻訳ですけれど、まあつまりこれなんです。ブリジットにフリットクラフトの逸話を語るスペード、それがヨウ君なんですよ」
「さっぱりわからん」
「むう。でも気を落とさないことです。大人になればきっとわかります。で、そのヨウ君にリンは銃を撃てない。撃って弾が外れる、という描写が可能なのにもかかわらず」
「なんなんだ一体。実際吹き矢はヤン・ヨウの差し金なんだから、撃つのが理屈だよな」
「だがやはり裏切られるリン。結局ヤン・ヨウ姉弟も相手を縛ってから喋る類、優劣主従弱肉強食な人間関係な人達だったのです。ここの169ページ2コマ目の平手打ちをするヨウ姉さん、左手首の角度、素敵です」
「ヨウ君あっさり死ぬし。この人耳血や目血の描写するね。4話最後に首折って殺す子供が失禁してたり」
「そして結局リンを助けに来るのは損得づくのレグです。さあヤン姉さんを殺すシークエンス。盛り上がる! 『だから?』の繰り返しから『みんなそう言うね』。見事だ!」
「どうどう」
「爆発、『わたし達友達になれるわ』、リンの狂笑。素晴らしい、ああシュタイナー軍曹*3っ!」
「春先だからなあ」
「結局リンをアディと呼ぶ奴はいないし、隙をみせたせいでリンは死にかけますが、ロビンが助けに来ます。で終わり。物哀しいハッピーエンドです」
「ロビンじゃ不足なの」
「ロビン凄く怖い女じゃないですか。あれアンシー*4ですよ。『お姉さんって呼んでいいのよ』『はい、香苗さん』ですよ」
「あー」
「だから第3・4部まで行かないアンシーみたいなもんなんですよ」
「そう考えると怖いねー。萌えるねー」
「まあ僕もアンシーの眼鏡のびかびかっぷりには惚れたくちですがね。ともあれ! それやこれをも含んでエンゼル・ハート全4話はかっちり綺麗にまとまって過不足ないのです。珠玉の短編です」
「君の気持ちはわかった」
「結構。しーゆーねくすとうぃーけん」
「はばぐっほりでぃ。ばぁい」

* 1:
 それを言っちゃあお終いよ。そこまで言っちゃうのは無粋だ。それは言わないでおこうぜ。しかし、どこまで言ったら無粋か、という限界線は人によって異なり、だから文章は暴力だ。僕がここやそこでこねた屁理屈がある人にとって無粋だし、さる人が書いた解説は僕には言ってほしくなかった話だ。
 これはまあ仕様がない問題だろう。お互い近づかないことだ。これは人間の集団を形成する力の1つだ。

* 2:
 人情が爆発……AN EIN BESSERES MORGENの映画評が使う表現。

* 3:
 「戦争のはらわた」の主人公。

* 4:
 「少女革命ウテナ」のヒロイン。本文ではTV版第14話の会話を引用している。概略はここここにある。

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