bでも十分上にソートされるはず日記
2002/04 その3

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2002/04/22 (月)

[ウソの中にもホントがあるのさ/Medal of HonorとQuake。(game)]

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 Medal of Honorという第二次大戦もののFPSがある。これはかなりリアルだ。しかしこのゲームのプレイヤーの上手さ、熟練、玄人ぶりは、どのように表れるだろうか? どれだけ表れるだろうか?
 どんなに上手いプレイヤーでも、たいしたことないのでは?
 実際の第二次大戦での熟練歩兵は、煙草の吸い方ひとつから、装備の身につけかた、行軍時の歩調、目配り、などなどいちいち違ったはずだ。よく知らんが、そういうプロっぷりがさまざまな点でみられたはずだ。
 しかし、Medal of Honorではそういうところまで表現できない。現実世界の歩兵の、新兵と古兵とを分ける点が3000あったとして、コンピューターゲームで表現できるのはは200くらいか? ゲームには限界がある。
 さてそこで、「SFチックなへんなものを取り入れるのはおかしい。嘘はついちゃいかんでしょう。リアルにいかなきゃ」といって200で満足する手もある、が、別の手もある。
 ウソをついてへんなフィーチャーを入れる。つまりQuakeをつくる。Quakeにはアイテムとかワープポイントとか、いろいろな非現実的イカサマがつけくわえられており、絵面でみるとMedal of Honorよりはるかに「リアルでない」。まさにアンリアルだ。しかし、そうした非リアルな戦術行動において、熟練歩兵と新兵との違いがみられる。試合開始直後に平行移動しながら無駄弾を撃ってラグの具合をはかるベテランQuake戦士の背中に、われわれはMP40のマガジンを交換するシュタイナー軍曹を見る。
 現実の戦争では、ベテランとルーキーとに違いがあったのだ。だがMedal of Honorでは、プレイヤーの技量の差があまり出てこない。Quakeにはそれがある。その点で、Quakeはリアルだといえる。Medal of Honorは3000の現実のなかからやっと200を再現した。Quakeは200にウソの200を足して400にした。ウソが入ってるからウソだが、3000には近い。情報の量ではかれば現実に近いのだ。
 もともとゲームは、いやつくりごとはすべて、情報量において現実に及ばない。その情報量を補填するために偽物を混入するのは有効な手段だ、などというと話が一般的になりすぎるか。
 この問題を別の言葉で言えば……見た目をリアルにするアプローチもあるが、システムをリアルにするアプローチもある*1。そして後者のために前者を犠牲にするケースがある。
 すごく抽象的に、大仰に言えば……ホントのことを表現するためにつくウソもある。ウテナとか鈍色の攻防(参照:鈍色の攻防/≠架空戦記)とか俺屍(参照:海に浮かぶマトリョーシカ人形)とか。
 ことばは沈黙に、光は闇に、真実は虚偽の中にこそあるものなれ。
関連:
綾茂勝太郎 リアルということ
伊藤悠 リアルって言うな!
* 1:
 システム……要素間の関係とか。
 1939年に装甲擲弾兵をフェルディナントに乗せてイギリス本土を蹂躙するゲームと、お菓子の国戦線を崩壊から救うためチョコレート山要塞の白熊に柿の種を補給して継戦能力を維持するゲームと、どっちがリアルか? はにゃがほげってもがもがするとしても、それらの間の関係が現実のシステムと対応していれば、リアルといえるのではなかろうか。

2002/04/24 (水)

[会話二択類型。(diary)]

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2001/10/11/01aからの続き。
 人の会話は、

それは大したことだ
それは大したことじゃない

の二択になりがちだ。あるいは、

それはあたりまえだ
それはあたりまえじゃない

俺だってそうだよ
俺はそうじゃない

そんなの知ってる、見たことある、よくあることだ
それは知らなかった、見たことない、めずらしいことだ

など。この状態に陥った人の発言は、論破説伏モードになってしまう。たとえば「それは大したことじゃない」を、相手に納得させるための発言・主張になってしまう。言うこと論ずることどれもが、相手にそれを認めさせ、いわば勝つことを目指したものになってしまう。そして、勝ったら満足して、それで終わり。残念なことだ。
 特に「大したことだ、ことじゃない」「面白い、つまらない」「語る価値がある、ない」などという切り口はつまらない。「赤か、青か」と具体的にいけば7倍マシなのだが。
 論破勝負モードじゃなくて、話題をずらしていくモードがお勧め。

1
この前、ホゲラ観にいったんですよ。そしたら吐いてる火炎がね、かっこいいんですよ。ヤバイ。
2
でもあの映画、話がしょぼい。あと役者の演技がヘボ。俺さ、けっきょく話のつまらない話はダメなんだよね。

これは「ホゲラがダメ、ダメじゃない」の二択になるルート。

1
この前、ホゲラ観にいったんですよ。そしたら吐いてる火炎がね、かっこいいんですよ。ヤバイ。
2
あの同じ特技監督の「2001年ビル大爆破」でも、爆発がすごくてさあ。

こっちルート推奨。

2002/04/28 (日)

[メモ。とかいう題名は死すべし。(diary)]

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 そっかーそうすればよかったのか。ありがとう、わかりました。

[名前とハンドルネーム(照)。(web)]

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2001/10/23/01aからの続き。
 名前はさ、
「伊藤悠氏」
「伊藤さん」
「悠! 時間は大切だぞ!」
「もう、悠君ったら、バカなんだから……(照)」
というふうに使えると吉。その点、「お父さん」とかいうハンドルネームは死すべし。
「お父さん氏」
「お父さんさん」
「お父さん! 時間は大切だぞ!」
「もう、お父さん君ったら、バカなんだから……(照)」
いずれも不合格。あるいは「江頭2:50」なんてのはどうよ。
「江頭2:50氏」:合格
「江頭さん」:合格
「2:50! 時間は大切だぞ!」:不合格
「もう、2:50君ったら、バカなんだから……(照)」:不合格
うーん不合格気味。やっぱり4番目のがダメだと痛い(何の心配だかしらんが)。
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 といって、伊藤悠というのも、同名の人がたくさんいて検索性に不安がある。
 だから、
 人間、「二つ名」がほしいところだ。つまり「衝撃のアルベルト」「大暴れ天童」「素晴らしきヒィッツカラルド」というアレである。さあみんなで考えよう。自動でつけてもらうのもいいかもしれない:美しい号のために

2002/04/29 (月)

[死せる被害者生ける探偵を……どうする?(book)]

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2002/03/05/01aからの続き。
参考:森博嗣浮遊研究室内4月8日ミステリィ特集
 「女王の千年密室」を読んだ。漫画版も見た。100年後くらいの技術について、説得力があるよなあ……ロボットの用途とか、ジャイロ付の銃とか。殺人事件推理小説を、人が死なないことになっている社会でやる、という趣向が面白かった。殺人が殺人でないので、殺人者の動機ではなく、探偵の動機が問われるという仕組み。why detect it ってわけか。
 すると殺人の定義を問うとどうなるか。その人の社会的存在を消せば殺人と呼べないかな? 戸籍とか人々の記憶とか。だから、探偵が殺人事件を追っていって、真相をつきとめて叫ぶ。「殺されていたのは、俺だ! そして死んでいたあの男こそ、俺を殺していたのだ! 奴は俺を社会的に抹殺するために死んだのだ!」あまり面白くないかな。

2002/04/30 (火)

[GPMエリートの発生。(game)]

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gpm関連の話へ続く。
 ではわたくしめがガンパレード・マーチについて語りますわい。行きます。行くぞお。
 GPMはシステムの複雑性が、ある臨界を越えている。まとめるとそういう言い方になる(なおこの性質については、ときメモとの共通点が多数ある? 下の方のggを参照されたい)が、まとめすぎなので、詳しく考えてみよう。
  • GPMはまずアレだ、もろに「プレイヤーを試す」ゲームだ。もう試しまくり。数値パズル技術について言えば、発言力を軸とした提案・戦闘・日常スキル獲得システムを適宜適時解く能力を試されるし。ここが、ゲームマニア(試されるの大好き人間共)を引き寄せ、同時にゲームマニア以外を弾く点だ。試されたくない連中はノベルゲームでも読み下してろってんだ(優越感。後述)。
  • というふうにパズルを解く技術を試すのに対して、もう一つ試されるものがある。それは目標の選択だ。目標についても、GPMはプレイヤーを試す。つまり意志決定で、コスティキャンだ*gc。「お前が望むものは、いったい何だ!」 ギャルゲーやおいゲー的に娘っ子/小僧っ子を選択させ*ggもするが、それにとどまらない*nsp
  • まったく同じプレイを繰り返すことができない。ランダムな現象が多く、セーブも不便なため。よって読み尽くせないゲームとなる。一回性すなわち歴史。そのプレイは、そのプレイヤーのその一回にだけ起きるものであって、他人のしたプレイと同じものにはならない。鑑賞ではなく経験であるとでもいうか…… どんなゲームにもある性質だが、GPMで顕著。(だから、リセットはあまりしないほうがお奨め)
  • なにもかもが連関しており、ある目標を設定すると、そこ以外のシステム構造すべてが、それを達成するための新しいゲームシステムとみなせる。したがって目標の数だけゲームが形成される。どんなゲームにもある性質だ*aimが、GPMで顕著。なお多数の目標を同時並列に進行させているとみなすことも可能。
  • アイテムコンプリートでLV99で全キャラと仲良くなることができない(一例:争奪戦)。言い換えると、パズル構造がトレードオフを起こすようになっている*tのですべてを得ることができない。したがって選択が行われ、すなわち意志決定。
  • いや、フルマックスフルコンプな人生も、できるかもな? でもその場合にも、何かを犠牲にしている気がする……つまり「だらだら不良学生・不良学兵をする人生」を犠牲にした、と思える。不良学兵人生も面白い、価値があると思える*c。さらに、もし全エンディング全イベントを見たとしても、読み尽くしたり体験し尽くしたりしたことにはならない、とまで言うと誉めすぎだがそんな感じで。同じイベントであっても、発生の順列組み合わせと状況、つまり文脈によって、違う体験・物語になりえるからだ。喧嘩した友人と仲直りした直後にそいつが戦死するのと、仲直りする前に戦死するのとは違う…… したがって、すべてのエンディングやイベントを読み尽くそうというプレイスタイル・マインドセットは不推奨。自分のプレイ経験は、非常に多数のありえた歴史の中のただ一つだ、と考えることを勧める。
  • ゲームは、インタラクティブぅ〜なメディアぁ〜。なので、作品の価値を鑑賞者が決める度合いが高い(映画や小説にもあるが、程度が違う)。先に述べた試練性(なんだこの言葉)や一回性により、GPMではその度合いがかなり高い。つまり、平均値からすごく上の価値を得る鑑賞者もいれば、平均値からすごく下の価値を得る鑑賞者もいる。分散が大きい。→俺はこんなに高い価値を得たぜ。へえ、君はそれだけの価値しか得られなかったの? ヌルいねふふふ。 よって、GPMマニアの優越感および絶賛は、他のゲーム・あるいは映画や小説よりも大。参考:沢月亭内物語作成モデル
  • だから、この文章についても、あまり信用しないように。話3割で読む推奨。
  • 登場人物の行動に人格が感じられる。のは、アルゴリズムが優秀なためか? むしろたぶん、ゲームのパズル構造・システムの複雑性(構造の良さ?)に負うところが大きい。NPCを包む(連関する)構造(要素)が、NPCの行動を人格あるものに見せることに成功している、といったところか。
  • 人間関係の矢印が、ときメモではPCを中心とした*状、星状、ヒトデ状であったのに対し、PCを中心としたウェブ状になっている。言い換えると、NPC間の横のつながりがある(もっともどれくらい機能しているのか僕は知らない)。
  • プレイヤーはPCをたくさん、NPCをある程度、自軍をすこし、敵軍をちょっと、世界をわずかに、操作可能である。そうした操作を通じて結果を出し、世界を救うことも可能である(たぶんこのへんで、コスティキャン的に狂喜乱舞)。芝村舞であっても、速水であっても、来須であっても、森であっても、中村であっても……誰でも(半公認裏技を使えば5121小隊全員使用可)。それを目標とし、考えてパズルを解いて、行動に移せば。楽天的で挑戦的な世界観。
  • NPCのキャラクター性は、そいつの語る物語(制作者がお仕着せに作って、鑑賞者が順々に読んでいくもの)だけに表れるのではない。そいつの性格はそいつの行動に表れ、あるいはPCの働きかけ(操作)もそいつの行動をうごかすことができる。そして、そいつの物語はそいつの行動によっても語られる。お仕着せ物語式のゲーム(例:kanon)においてプレイヤーは、NPCの物語を読む・進める・分岐させることができるが、GPMでは、もっと多様な物語が実現できる(PCがNPCのどれと仲良くなるか、だけでなく、NPCとNPCを任意に仲良くしたり、そもそも仲良くなる過程を多様に、喧嘩してから仲直りさせたり、できる)*cc。しかもそれは、オリジナルショートストーリーや論文を書いて同人誌に載せるようなゲームの外で行う解釈・記述だけではなくて、ゲームの中で行う行為だ。──この項言い過ぎ。
  • 目標の多様性により、パズルの難易度がごまかせる。言い換えると、パズルを解きそこねたゲーム展開にも(ある程度の)価値があって──たとえば先述した不良学兵人生や萌え燃え戦死イベント──それがパズル能力を欠くプレイヤーの受け皿となる。これによってユーザー間のパズル能力の分散問題(参考:ざるの会Online内ゲームデザイン入門3-3-4e「『ゲーム』のマイノリティー性」)を一応緩和できる……か?

GPMの多様な目標 [nsp]
 『電撃ガンパレード・マーチ』収録の「OVERS祥人のスタンダード嘘ガンパレ講座」によると、まず基本は、NPC同士を恋人関係にすること。そのためには「みんなでお昼」提案を利用し、よけいなキャラとくっつかないよう、クラスや職場を引き離し、あるいは邪魔キャラを一時的に自分の恋人にする──最悪戦死させるなど(「弾は前からくるとは限らないんだよ」)。  ちなみに祥人さん曰くどんなに好きでもゲームキャラ! 「そのキャラのためにどれだけ手間をかけたか」という形でしか愛情を表現できない… この不器用なプレイヤー心をわかってくれよわかってくれよっ!!含蓄ある言葉だ。

読み尽くせない理由その2:所要時間に対する情報量 [t]
 ゲーム進行が遅い(1プレイ数十時間コース)のに対してデータ量が多すぎる(し、同じ要素でも順列組み合わせによって解釈を変える(こともできる))ため、読み尽くし型ゲーム*naのように遊ぶには向かない。

読み尽くし型ゲーム [na]
 読み尽くし型のゲームとは、全データの読み下しを期待しているタイプのゲームである。かまいたちの夜や痕やAirやDQ(5以外)、アクションゲームやシューティングゲームの大多数など。人物バリエーションの読み比べとしてのかまいたちの夜については、看板はここに置いていきなを参照。
 この逆が、読み尽くしを期待せず、何本かの物語を用意した上で、そのうちの一部だけを読まれることでも満足するタイプのゲームである。同級生やTLSやkanonなどが挙げられる。GPMはこの一極例といえる。

情報量と不良学兵人生の価値 [c]
 不良学兵プレイに価値が生じるのは、ゲームシステムの複雑性(の生む情報量)のおかげである。たくさんの情報(=経験・人生)を生むことができるからだ。

参考ページ
あたらしいゲームのはなし アルファシステムスタッフによる自画自賛。自意識もレトリックも防御もないのでびびる。珍しい文体だが、パッケージの煽り文句と目的を一にするものなのだろう、話n割で読むのがいいだろう。
コスティキャンのゲームデザイン論言葉ではなく、デザインのみが、ゲームを語ってくれる 意志決定万歳。本論はほぼこれに基づく。[gc]
クロフォードのゲームデザイン論コンピュータゲームは芸術たりうるか 「ゲームと物語の違い」のくだり、因果関係と枝分かれとかが本論と関連あり。[cc]
馬場秀和ライブラリ内外へ向かう言葉(後編) 日本TRPG論客の一人。意志決定について、コスティキアンの議論をさらに発展させている。
世界機械内ガンパレとAI かなりわかりやすく読みやすい。ほぼ同意。MMORPGの他のプレイヤーをCPUが担当しているのがGPM、ってのはちょっとひっかかった。MMORPGとGPMの違いはかなり大きな違いだと思う。プレイヤーがGPMをそうみなした時にGPMが非常に面白いゲームになる可能性は十分あると思うけれども。こう考えてみると、ゲームについて理屈をこねる行為の一部に、ゲームの遊び方・解釈しかた・みなしかたを提案する行為が含まれるわけだが、これは意識しとかなきゃいけないかもなあ。GPMの社会では発言力が焦点となっているためわかりやすくてウマー、という意見は卓見と思う。ガンパレでは真の意味でのロールプレイ(役割を演じること)の楽しみ得ることができる。という箇所には疑問を感じる。ロールプレイって言葉を誉め言葉、なにかふかふかしていいにおいのする言葉だと考えているのではなかろうか。社会がプレイヤーの入力に対して多様なふるまい(出力)をみせることは、べつにロールプレイじゃないと思う(参照:プロレスにおけるロールプレイングと矛盾)。面白いことではあるが。「リアリティ」も同様の、ふかふかした誉め言葉として使われている気が……(あ、でもそれを言うと僕の使う「意志決定」もそうかも……自戒するふりテスト)
記事数から見たファンパレと謎板の歴史 アルファシステム公式サイトの掲示板での世界観展開の概説。
テクストゲーム史・2/ポストモダン、あるいは「過去のアイロニカルな再考」 教育がどうとか。
どっかのIRCのログ 「コンピュータゲームは膨大なデータと情報の隠蔽によって構成されていた擬似ゲームだったが、AIを意志決定者として用意することで、真のゲームに近づける」
2chのゲーム談義ゲーム理論について語ろう GPMとはあんまり関係ないが、けっこう面白い。43-49、72、149、274-277「コスティキャン厨」とか呼ばれてる。ふえ〜ん
5人タクティクスオウガ内塀の上を歩く あるゲームシステムの目標を変更し、設定しなおすことによって、解くべきパズル構造を異なるものにすることができる。[aim]

[ギャルゲーと意志決定。(game)]

_ [gg]
2002/02/23/01aからの続き。
 娘っ子選択式のギャルゲー*1は、コスティキャンの理論におそろしく適合するためおそろしい。
 ときメモは育成ゲーム式の時間資源管理・スケジュール管理パズル構造を持ち、目標としては娘っ子12人のうちの1人を選択することができる。そしてプレイヤーのとる行動ひとつひとつが、パズルを解いていく行為であるとともに、目標を選んでいく行為でもある。つまり、プレイヤーは(普通は)電源投入直後に「この娘っ子に決めた! ポケモンゲットだぜ」と心を決めるのではなく、「どの娘にしようかな、とりあえず体でも鍛えてみるか」と、いわば心の中で12股をかけてゲームをはじめる。PCに国語を勉強させたり、魅力を上げさせたりしたとして、その行為は12人中のある1人の娘っ子を倒すために有効なのではなく、12人中7人とか10人とかに対して有効なのであり、その時点ではまだ特定1人の娘っ子を目標としているわけではない。プレイヤーは、複数の目標娘っ子に対して有効な行為をとっていって、だんだん目標をしぼりこんでいき、最後に1人の娘っ子を選ぶ・倒すのだ。そして目標のしぼりこみを行わせるのは、ゲームがプレイヤーに与える情動(娘っ子の萌え攻撃)であり、こうしてインタラクティブ性ぃ〜が生じる。

プレイヤーが12人の中からとりあえず10人くらい選ぶ(例:国語を勉強する)。プレイヤーからゲームへの働きかけ。
10人のうち7人の萌え演出が行われる。ゲームからプレイヤーへの働きかけ。
プレイヤーが5人くらいにしぼりこむ。プレイヤーからゲームへの働きかけ。
……

 すなわちときメモは! 巨大なパズル構造と複数の目標、と、パズルを解くためのものであると同時に目標をしぼりこんでいくものでもある微細な一手を大量に積み重ねていくこと、から成る。そしてその微細な一手ごとに、ゲームからプレイヤーに情報の提供(萌え攻撃)が行われ、プレイヤーはそれに基づいて自分の目標設定を修正し(しぼりこみ、あるいは覆し)ていく。
 フィードバックループが多数回まわるわけだ。
 さてそうするとだ、ときメモには、巨大なパズル構造と、プレイヤーの一手一手に対応して繰り出すべき萌え攻撃用の大量なデータが必要だということになるわけだが、それらを用意するのって、大変そうだ。ときメモの後発ソフトって、はたしてそこらへんを用意できたんでしょうか?>誰か。僕はTLSを2人倒して、サクラ大戦とセングラを後で見てただけだから、みつめてナイトとかどうだったん? と聞いたら、幹いわくみつめてナイトでは大量の、山のようなイベントが能力値・好感度・スケジュールによって発生したらしい。よおし理屈通りだ。
 TLSでは、パズルは下校会話にだけあって、下校会話は特定1人の娘っ子のみを目標としたパズルだからなあ。娘っ子選択は放課後の移動先で行われて、そこでも特定1人の娘っ子を選ぶわけだし。ときメモにおけるスケジュール管理と爆弾みたいな、娘っ子間のトレードオフ気味関係もないし。かなり「後藤さん! 君に決めた!」なゲームだよな……つまり複数物語パッケージゲーム*pgに近い。
 なおこの理屈からすると、あくまでこの理屈からするとだが、ギャルゲーをやるときに「さあ全員倒すぞー」と気合を入れちゃうプレイヤーはギャルゲーマーじゃないかも。
* 1:
 痕とかはノベルゲームなギャルゲーと考えて、娘っ子選択式のギャルゲーには含めない。痕の情報はけっきょく──プレイヤーが事件の真相とハッピーエンドとを追求する結果──全部読み下され、読み尽くされてしまい、プレイヤーが娘っ子を選ばない。意志決定が薄い。kanonでは、中盤に一回だけインプット機会があり、つまり全体がただひとつのループになっていて一応フィードバックがあると言えなくもなくもなくもない。この話はサクラ大戦の安全弁につづく。

[pg] 複数物語パッケージゲーム:
(1) n本の物語がまとめて与えられる。その中から1つ、最初に「これに決めた!」と決めて、それを読み下す。
(2) それを読み終わっても、他の物語を読まなければならないわけではなく、1つで満足して放り投げてもよし、次を読んでもよし。
(3) ある物語を読み下したことがフラグになって、新しい物語が読めるようになったりしない。
(4) 物語Aから物語Bへの途中乗り換えなし。
(5) 物語間の横の連携が薄い。  TLSは乗り換えできるから(4)があまり適合しない。途中から登場する娘っ子がいるから(1)も厳密には適合しない。でもやはり、かなり近い。
 Kanonとかかまいたちの夜とかは全物語の読み下しを期待しているから、つまり(2)と正面衝突するから遠い。(3)ともぶつかるし。
参考:一〇cm四方の青空内「ゲーム機で見る映画」とそれを越えるもの<分岐型ノベルゲームってけっきょく全ての読み尽くしを期待してるから、意志決定は微小だと思う。
参考ページ:
www.trpg.net内掲示板の過去ログTRPGのための心理学設定の部屋 LOG 001 「円卓の騎士を題材としたTRPG『ペンドラゴン』は『中世版ときめきメモリアル』と呼ばれております」だそうだ。

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メール[管理人伊藤悠 / ITO Yu / FZR02073---a---t---nifty.ne.jp]

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