bでも十分上にソートされるはず日記
2003/07 その2

[索引へ] [一つ過去へ] [一つ現在へ]
[最新版へ]
[指輪世界へ]

2003/07/12 (土)

[神の国。神の国とはいかなるものか。(general)]

_
2002/07/22/01aの続き。
 人間の体の幸福評価回路の目盛は、現在、かなり甘い設定になっている。人類の生産力がここ数千年、加速度的に増加しているので、適応が間に合っていない。われわれの体はたとえば500年前の食生活にあわせて設計されており、栄養学的な糖分の必要性と、当時の糖分の入手環境とから、糖分に感じる幸福の大きさがセッティングされている。つまり500年前は糖分が手に入る機会が稀だったので、そんな機会が訪れたら、それを逃さずたくさん摂取しておけ、というプログラムになっており、糖分を前にした時に強い欲望を感じ、摂取後に感じる幸福が大きかった。現在、砂糖キビやてんさいの生産技術の進歩によって糖分の摂取は容易だが、欲望算出回路と幸福評価回路は500年前からわずかしか変わっていないので、人は甘いものをたらふく食べ、幸福である。
 糖分を評価する回路のほかに、脂肪分評価、アルコール分評価、ヘロイン評価、他個体視認評価、被賞賛評価、等、等、など無数の回路があるが、遺伝的に形成されるものについては、そのほぼすべてが大きくずれている。多くの場合、それらは甘い側にずれているので、現在の人類の平均幸福量はかなり大きくなっている*hn
 これらのずれには、原理的に、大きな淘汰圧がかかっている。糖分やヘロインを採り過ぎたりすると繁殖成績が下がるが、目盛はそちらにずれているからだ。より糖分を控える遺伝子が人類集団内に広まっていくはずである。つまり、より適正な感覚を備えた人間が子を多く成す。言い換えると不幸な人間が増える。

 人の世が幸福で満ちるとは、技術の進歩が、このように人類を追ってくる不幸の淘汰圧の手を逃れて、それに先行し続けることである。
 というのも、生産力が定常状態に移った場合、淘汰がいつかは、幸福評価回路を適正に調整してしまうからである。こうして追いつかれた場合、そこで発生する一人あたりの幸福量は、数万年前の人類のそれと等しくなるだろう*hh。遺伝子は神経系に適切に行動をおこなわせることしか考えていない(ほんとうは何も考えていない)ので、いくら気候が快適無謬で物がありあふれていても、適切に幸福で適切に不幸なように回路を設計する(設計に十分な時間が与えられれば)。

 人類がたとえばこの100年後から定常状態に移行した場合、その状態での資源消費量は数万年前のそれを幾乗倍したものになるだろう。にもかかわらず幸福量は数万年前と変わらないので、効率は悪い。
 総幸福生産量で考えた場合、100年前に定常状態に移行した場合と、今から定常状態に移行した場合と、100年後に定常状態に移行した場合と、可能な限り淘汰圧から逃げ続けた場合とでは、どれが上になるのか。パラメータに依存する問題である。
_
 ここまでは遺伝子の設計する幸福評価回路について述べたが、ミームが設計する回路はどうなるか。
 ミームは遺伝子よりも環境変動への応答が速い。適応速度が大きい。だから現在、ミームのつくる評価回路と肉体的な評価回路をくらべれば、ミームのそれは悲観的な設定になっているだろう。欲求不満で、扇動的で、個体を督励する傾向が生じているとおもわれる。言い換えると肉体のほうが怠惰である。思想のほうが志が高い*hw。また、文化的快楽のエスカレーションのほうが貪欲である。


[hn]現在の人類の平均幸福量はかなり大きくなっている
20030506の脚注03からの続き。
 ときどき、人類はまるで進歩していない、などと言う人がいるが、のんきである。昔の王様はかき氷を年に1度、洞窟に入れて保存しておいた氷を持ってきて削って食べることしかできなかった。今、われわれは望んだ5分後にグリコの野菜&くだもの(地球上で水の次にうまい液体)を飲むことができる。王様にそれができるか。曾々々々……祖父祖母からこっち、数百世代、勝ちもあり負けもあったが、トータルでははるかに勝ち越している。曾々々々……祖父祖母は、勝ったのだ。

[hh]追いつかれた場合、一人あたりの幸福量は数万年前と同じになる
 つまり、万年一日の変化ないユートピアが達成されても、人類の幸福評価回路はその環境に適応してしまうので、人々の幸福量は現在のわれわれより少なく、数万年前のそれと同じ程度になるだろう。

[hw]思想のほうが志が高い
 これは書いて字の如し読んで意の通りというやつだ。高い志を持つ人は多いが、肉欲の大きさにはそれほど分散がない。

[索引へ] [一つ過去へ] [一つ現在へ]
[最新版へ]
[指輪世界へ]

メール[管理人伊藤悠 / ITO Yu / FZR02073---a---t---nifty.ne.jp]

この日記は、GNSを使用して作成されています。