エヴァンゲリオンコマ送りer/3人の盲人

送れ! コマを! 止めろ! エヴァを!
「エヴァ」の7秒に23時間を費やす者どもを人々は呼んだ。
コマ送りer……と。

はじめに

 媒体の変化は表現を変化させる。ビデオデッキその他の映像再生機器の普及によって一時停止とコマ送りが容易に行えるようになったことが、TVアニメーションでフラッシュバックを多用する手法を可能にし、「新世紀エヴァンゲリオン」におけるその登場を準備した。
 ここでは、TV版「新世紀エヴァンゲリオン」第16話「死に至る病、そして」Bパート開始後6分30秒頃から始まる約7秒間のフラッシュバック、特にそこに登場する雑誌記事らしきものの内容を分析する。
 素材は本放送を3倍で録画したVHSビデオテープ。当該映像中の文章・単語の判読は難しく、筆者の憶測が相当の程度で混じっている。
 なお、分析中「記事4」および「記事5」、「記事6」、「記事7」とした部分は、製作者側の完全なオリジナルではなくて何らかの既成の文章を引用したものが含まれているのではないかと考えられる。
 これらの文章の内容は「新世紀エヴァンゲリオン」本編と関係が薄く思われた。それが筆者にこの分析を行わせるきっかけとなった。「3人の盲人」とは、この「記事4」および「記事5」の中にある表現である。
 これらの文章のオリジナルについてお心当たりのある方は、ぜひご一報願いたい。
 この部分について分析を行った方は筆者の他にも多数おられると思われる。この分析は筆者が独立に行ったもので、以後このページをアップするまで同様の分析を見たり読んだりしたことはないが、内容の重複等があるかもしれない。その場合、それは偶然である。
 また、このような分析を行った方、そのような方や文献をご存知の方は、無学な筆者に一言教えていただけると大変ありがたい。

概要

TV版「新世紀エヴァンゲリオン」第16話「死に至る病、そして」
 シンクロテストで好成績をあげたシンジは慢心し独断専行、襲来した球状使徒の影に呑み込まれてしまう。使徒の本体はその影であった。影の内部に捕らわれ無力化した初号機の中で、シンジは自分の中にいるもう一人の自分に気付く。他人から誉められるためにエヴァに乗るのか、と糾弾されるシンジ。
 一方ネルフはN2爆雷とエヴァ2体による初号機の回収を準備していた。「この際、シンジ君の生死は問いません」というリツコ、それに反発するミサト。しかしまさに回収の行われようとしたその時、エネルギー0のはずの初号機は使徒を内側から引き裂いて帰還するのだった。

 この第16話のBパート開始後約6分半、回想の中でシンジが「父さん、僕は要らない子供なの」「父さん!」と叫び、直後自分自身に「自分から逃げ出したくせに」と非難された後に、約7秒間のフラッシュバック場面がある。
 そこに登場する様々な映像がこの分析の対象である。

読み方

以後コマ数を用いる。筆者の使ったビデオデッキでは1秒が約30コマになる。
ぼやけて読みとりにくい文字は、平仮名だと思われる場合「仮」で、片仮名だと思われる場合「片」で、漢字だと思われる場合「漢」で置き換えた。仮名とも漢字ともその他の文字ともわからない場合は「字」で置き換えた。
黒く塗りつぶしてある部分は「■」で置き換えた。画面端は「〜」で示した。つまり、「〜」の先には言葉あるいは文章が続いている可能性がある。画面端で切られている文字は、ほんの少ししか切れていなくて容易に読みとれるものからかなり憶測にたよって読みとったものまで、すべて「〜」のように下線を引いて示した。
筆者の読みとった限りでは、この場面に「仮」「片」「漢」「字」「■」「〜」の文字、および下線は用いられていない。

Bパート開始後6分32秒
画面左に顔をしかめたシンジ、右手に幼いシンジ。
幼いシンジ「自分から逃げ出したくせに」
画面、右へパンし始める。
この後続く台詞は以下の通り。

男の声1「そうだ。この男は自分の妻を殺した疑いがある」
男の声2「自分の妻を殺したんだ」
シンジ「違う、母さんは……笑ってた」

このわずかな台詞の間に画面には非常に多くの情報があらわれる。これからその分析を行う。
画面の平行移動が始まった瞬間からコマ数を数え始める。前述したように、30コマで約1秒となる。

25コマ
シンジ2人は左端から消え、ほぼ画面全体が白くなる。

27コマ
水平方向に線が何筋か。活字が引き延ばされたもののようだ。

32コマ
南極
引き延ばしと中断でかなり読みとりにくい。

41コマ
水平方向の線と『こ』らしき明朝体の字。

42〜60コマ
様々な何本もの水平方向の線。

65コマ
黒地に白抜き、縦書きで『調査団帰〜』。

70コマ
机を囲む人々の写真らしきもの。

75コマ
横書き『〜カンドインパクトの〜』
右端だが、ほとんど画面外に出てしまっていて字の一番左側の部分だけしか見えない。しかしおそらく漢字であると思われるので、ここでは「」と表記した。「風」や「反」といった漢字の左側の「はらい」のように見える。

78〜85コマ
『〜結晶遺伝子」論』
『我国遺伝子学界の〜』
右下へパン。縦書き。

87〜92コマ
写真。右へパン。3人の男。左側の男は片手を挙げている。左側と中央の男は笑っているように見える。右側の男はよく見えない。

93コマ
『〜連の暗〜』
『〜公開組織の腐敗〜』

97コマ
記事1。横書き。雑誌記事風にまとまった最初の文章である。
連非

 バイオ医薬品〜
 バイオ企業間での〜
 しいもの〜
 ■■■〜
「〜連非〜」が見出し。それ以降が記事本文である。
記事本文4行目は黒く塗りつぶされている。太いマジックで一引きしたように見える。以後、すべて塗りつぶし部分はマジックか何かによるものと思われる。5行目以降は画面外になって見えない。

101〜105コマ
横書き、右へパン。
『〜学の殿堂「AEL」人工進化研究所が研究す〜』
『〜「死海写本」の秘密とは〜』

「人工進化研究所」は黒地に白抜きで右上がりになっている。

107コマ
写真、右へパン。よくわからないが、2人の人物が向かい合っている場面のように見える。

113コマ
記事2。横書き。
大学閥の光と
〜企業              ネットは、ヨーロッパではすでに市販されている。
 〜市場に提供している先行バイ  ■■■■■漢漢漢や漢漢以外の分野にも、バイオテ〜
 〜■■■■■■■■■■■■■  クノロジーを用いた漢漢の複製は漢〜
   〜ロニクス社、そして片片片  ニクス社は■■■■■■■〜
    〜の3社があげられる。  片片片片片片〜
    〜子組み替え技術〜
見出しの「」だが、「東」もありうる。
次の「企業」はゴチック太字。小見出しらしい。
この記事は活字が小さいためか、3行目以降、片仮名や漢字で読みとりにくい文字が相当多い。
記事本文2行目左側の塗りつぶし部分は、左端から9文字目と10文字目との間(1行目の「る」と「先」の下)でいったんとぎれている。
左側も右側も6行目以降は画面外になって見えない。

117コマ
『〜企業と癒

121コマ
写真。上へパン。放射状に並んだ棒、中央には垂直に並んだ棒。建造中の原子炉中心部を写したものかもしれない。
一番下に、しゃがんでいる人と、その右側に立っている人の頭部らしきものが見える。

130コマ
横書き『2004年』

135コマ
縦書き『〜伝子操〜』

138コマ
横書き。
『〜工進化研究所
『〜大事故〜』

142コマ
横書き。
『〜イオハザードの〜』
『〜の領域を浸食する技〜』

146コマ
横書き『〜怖』

151コマ
縦書き『〜者一〜』

156コマ


159コマ
記事3。縦書き、下へパン。見出しはない。活字がかなり大きく、読みやすい。
  〜ための研究を行〜
 〜同研究室で研究に従〜
〜た碇ユイさん(27)が、〜
〜、その犠牲者となった。〜
〜いて、操作を誤っ


164コマ
写真。白い長方形の周囲に人々。よくわからない。

166コマ
横書き『〜ミスか?〜』

170コマ
記事4。縦書き。
「〜体実験の〜」と「■■■という年月が生む人間の存在〜」が見出し。
本文は後述の記事5と同じもののようだ。詳しくは解説で後述する。
かなり読みにくい。「仮」「片」「漢」「字」のオンパレードになってしまった。
本文18行目以降は画面の外になってしまい読めない。
体実験の
■■■という年月が生む人間の存在〜
 以上、この一冊を通じ■■■■■■■■  ■■■■■■■■■■■〜
■■■■■■■ ついて種々様々、それこそ  ー片ーンスを漢漢する漢〜
随分かってなものまで含めて多くの意見を  こそ、ジャンルの漢漢を〜
述べさせてもらったが、それではいったい、 たいものはことごとく漢〜
■■■■■とはどういう■■■■■ろうか。 仮、漢漢漢的なアプローチ〜
 もちろん■■■■■■ない。ジャンルを  は■■仮も、漢漢ものにも〜
超えているとはいうが、さりとて全く無軌  えるのである。だが、その漢〜
道なでたらめの作品でもない。       漢を仮仮仮いるのは知っての〜
 ここで思い起こされるのが、初めて象を   それに対して、■■■■仮〜
見に(触りに?)いった3人の盲人の■■  仮漢漢をもっている。そして仮〜
である。それは象の全体的な姿をとらえる  全体像とはいかないまでも、字〜
ことのできない3人が、それぞれ象の鼻や  だけはとらえられるようになって〜
胴、尻尾などに触って、まるでかってな(そ  まり、漢字字まれたとはいって〜
れでいてでたらめな)象の姿を想像すると  字の字字〜
いうものである。
 今の私たちは、まさ仮仮仮


174コマ
縦書き『人災

177コマ
写真。よくわからない。

179コマ
横書き『〜物情報〜』

185コマ
横書き『〜暴走

189コマ
写真。よくわからない。

192コマ
記事5。縦書き。「〜既知の危険〜」「元同僚研究者を〜」が見出し。
記事本文は前記記事4のそれと同じ内容のように見える。こちらの方が活字が大きく読みとりやすい。
〜既知の危険
元同僚研究者を
     この一冊を通じ、■■■■■■
■■■■■■について種々様々、それこそ
随分かってなものまで含めて多くの意見を
述べさせてもらったが、それではいったい、
■■■■■とはどういう■■なのだろうか。
 もちろん■■■■■■ない。ジャンルを
超えているとはいうが、さりとて全く無軌
道なでたらめの作品でもない。
 ここで思い起こされるのが、初めて象を
見に(触りに?)いった3人の盲人の寓話
である。それは象の全体的な姿をとらえ〜
ことのできない■■■■それぞれ象の鼻〜
胴、尻尾などに触って、まるでかってな〜
れでいてでたらめな)象の姿を想像す〜
いうものである。
〜の私たちは、まさにこの3人の〜
       〜ではないだろうか。


196コマ
横書き『〜金工〜』

199コマ
縦書き『〜ゲンドウ〜』

203コマ
記事6。
「〜ノム生物〜」が見出しで横書き。本文が縦書き。見出しは本文の上にある。
1行目より前、27行目以降にも文章が存在するようであるが、画面外になって読めない。
ノム生物
 ■■■■■そして■■■〜
った展開を見せる■■■■■■■■■〜
■■■■■しかし、■■■とはいった〜
なのだろうか。
 確かに、今回の■■■■キーワード〜
■■を特徴づけるものが多い。頻発す〜
の怪事件、知らず知らず怪事件に巻〜
れていく■■■■■ 漢漢、脱出、漢〜
そして■■■■■■…。まさに、■■〜
の王道をいくがごとしだ。
 しかし、ここでふと考えてしまう〜
ある■■■■■■■は冒険ものでは〜
たのか?と。なぜなら、そこにも漢〜
件、事件に巻き込まれる■■■■■〜
■■■■■■■■■■といった漢〜
ルコースで含まれていたはずだか〜
 だが、そんな■■■■■■仮■〜
呼ぶ人はいるだろうか。■■■■〜
■■もの(?)等々……。■■■■〜
いろいろな呼び方が可能であった〜
のに、なぜか■■■■と呼ばれる〜
なかったような気がする。もしか〜
これは一方的な意見なのかもしれ〜
らないところで■■■■■■こ仮〜
!とよばれていたのかもしれな〜
       〜だとしても、〜



206コマ
写真。中央に文字を書いた縦長の垂れ幕か何か。
両脇に数人の人。文字は『漢漢裁勝訴』と読めなくもない。

210コマ
記事7。
見出し「〜高裁で無罪判〜」が横書き、本文は縦書き。
本文左側に写真。本文と写真の上に見出し。
写真は粒子が粗くなく、見やすい。並んで左方向へ歩く二人の男とその背後に詰めかけるカメラを構えた人々。右側の男は黒っぽい背広にサングラス。左側の男は白っぽい服と髪。
高裁で無罪判

漢漢漢としてはより古典的な〜
字も陽子崩壊の検出実験に用いられてる。
 字字字字字からインドのメタ漢漢漢漢漢〜
大漢漢大、東大宇宙研究所が共同で行っ〜


214コマ
横書き『〜命倫理の欠〜』

218コマ
引き延ばした画像。

221コマ
縦書き『〜神の技〜』

224コマ
縦に何本かの筋。

227コマ
写真の絵。赤ん坊を背負った女性。右上にハレーションがあり、女性の顔の半分ほどが隠れている。わずかに反時計回りに回転している。
フラッシュバックの終了。

解説


 このフラッシュバック部分にはセル画がなく、文字あるいは写真のような画像から構成されている。どちらもモノクロームで色はない。写真はかなり画像が粗い。文字は雑誌記事の見出しおよび記事の本文に似せてあるようである。
 では各画像の解釈に移る。多分に筆者の私見が含まれる。

75コマ セカンドインパクトという言葉が使われている。このフラッシュバック部分に登場する記事や画像はセカンドインパクト以後のものだと考えてよいかもしれない。
この部分はセカンドインパクト後に生まれたシンジの回想場面なのだから、その可能性は高い。

78コマ 「結晶遺伝子論」の内容は不明だが、結晶構造をとる遺伝物質があるということか。結晶の成長能力に着目した理論なのか。碇ゲンドウは「結晶遺伝子論」を提唱していたのではないかという想像も可能であろう。
また、碇ゲンドウという人物が学者として「我国遺伝子学界の誇り」であったという想像もできるが、そうだとすると「ネルフ、誕生」における冬月の回想でそうした描写がないのはおかしいかもしれない。
「我国遺伝子学界の誇る」何らかの事柄、たとえば結晶遺伝子論という理論や、機関、設備などがあるのかもしれない。

87コマ〜92コマ これらの写真も何らかの資料から引用されたものである可能性がある。
お心当たりの方はぜひ教えていただきたい。

93コマ 国連非公開組織とはゲヒルンのことか。腐敗していたらしい。

97コマ 記事1。これも国連非公開組織に関するもののようだ。
その組織とバイオ企業との間に癒着でもあったのだろうか。

101〜105コマ 「AEL」とは Artificial Evolution Laboratory の略か。「死海写本」を研究していたらしい。

113コマ 記事2。学閥とは碇ゲンドウと冬月コウゾウのことか。とすると「新世紀エヴァンゲリオン」本編においては彼らの出身大学に関する唯一の記述ということになるかもしれない。が、ここでは「東」であるか「京」であるか判然としない。
また「京」であったとしても、「東京」であるといった可能性もある。
記事本文は遺伝子組み替えなどのバイオテクノロジーとバイオテクノロジー企業に関するもののようである。

117コマ 「一部企業と癒着」であろう。

121コマ AEL には原子炉があったのだろうか。

142コマ 生物災害の「恐怖」、あるいは「恐れ」、そして「神の領域を浸食する技術」であろう。

151コマ 記事3。碇ユイの事故死に関するものである。何らかの誤操作によるものとされているようだ。

170コマ 記事4。非常に興味深い箇所である。
見出しは碇ユイの死について人体実験の疑いありというもののようだが、記事本文はそれとは全く関係のないものではないかと思われる。
黒塗りなどの修正は異なっているが、同じ文章が記事5でも使われているようだ。
「■■■という年月が生む人間の存在〜」という見出しは、大きさからして引用元の文章にはなく、つけくわえられたものものと思われる。

192コマ 記事5。記事4と同じ文章であると思われるが、比較してみると後から手を加えたと思われる部分に違いがある。
冒頭の「以上、」という一言が削除されているし、黒く塗りつぶしてある箇所も違う。しかし、内容を推測するうえで重要な語句があると思われる部分、本文1行目後半から2行目前半と5行目前半は隠されたままである。
また6行目でも同じ6文字が塗りつぶされている。
ただ、「以上、」の削除や「寓話」「3人が、」の塗りつぶしなどには特に意味があるのかどうか疑わしい。

199コマ 碇ゲンドウの名が出てくる。おそらく「碇ゲンドウ所長」であろう。
とすると前出の AEL の所長ということか。

203コマ 記事6。
画面端で切れているため1行が何文字かわからないが、12行目「は冒険ものでは〜」と13行目「たのか?と。」とは「は冒険ものではなかったのか?と。」という一文であると考えていいのではなかろうか。
とすると1行は19文字である。
この1行19文字をはじめとして、書式、活字、言葉づかい、内容の類似から、記事4・5と記事6は同じ資料から引用されているとみてよいだろう。
記事4・5にくらべて記事6は読みやすいこともあり、直接読めない部分が推測しやすい。
3行目〜4行目は、「とはいったい何なのだろうか」であろう。
7行目〜8行目は「怪事件に巻き込まれていく」であろう。
16行目「ルコース」は「フルコース」であろう。
21行目〜22行目は「なぜか冒険ものと呼ばれる事だけはなかったような気がする。」だろうか。
22行目〜23行目は「もしかすると、これは」あるいは「もしかしたら、これは」か。
23行目〜24行目は「なのかもしれない。知らないところで」だろうか。
なお、13行目で疑問符「?」の後にそのまま次の文がはじまっているが、この書き方は現在一般には少し珍しい。普通、疑問符「?」や驚嘆符「!」の後には1文字分の空白を置いてから次の文をはじめる。

206〜210コマ 記事7。最高裁判所で勝訴して無罪判決をもらったのか。
しかし記事本文の内容は裁判に関するものではなく、物理学の実験手法か何かに関するもののようだ。これは記事4・5、記事6とも違う別の資料からの引用と思われる。

解釈

 このフラッシュバック部分は、人工進化研究所所長碇ゲンドウが碇ユイの死に関して殺人の嫌疑をかけられ起訴されるも、最高裁で無罪となるという筋書きである。そこに国連の非公開組織である同研究所と民間企業との癒着疑惑、その研究の冒涜性などが描写される。
 シンジは実際にこれらの報道記事を読んだのだろうか。それとも幼いシンジが感じたスキャンダルの雰囲気がこのフラッシュバックで表現されているのだろうか。
 読んだのだとしたら、ある程度成長してから古い雑誌記事などを読んだということになる。事故直後の年齢では記事の内容を詳しく理解できないはずである。
 おそらくシンジは事故直後父のスキャンダルの雰囲気を感じ、その後成長してから雑誌記事などを調べたのではないか。このフラッシュバック部分では、事故直後の記憶とその後調べた記録が錯綜しているのだと考えることもできるだろう。

 また各記事本文の内容に着目すれば、記事1と記事2はバイオテクノロジーと企業に関するもの、記事3は碇ユイの事故死に関するもの、記事4・記事5と記事6は何らかの表現作品に関するもの、記事7は物理学に関するものと、いくつかの分野にわかれている。
 記事3は「新世紀エヴァンゲリオン」でオリジナルに作成されたものといっていいと思うが、それ以外は何らかの資料からの引用である可能性が高い。
 その中でも記事1・2・7と記事4・5・6とは傾向が異なり、前者は科学関係の文献からの引用と思われるのに対して、後者は何らかの作品に関する文献からの引用である。
 前者で引用されている資料は、一般の出版社から刊行されている書籍、特に企業・組織の固有名の使われ方などからみて雑誌ではないかと思われる。

 後者は興味深い。
 記事5冒頭に「以上、この一冊を通じ」とあるので、記事4・5は一冊の書籍からの引用である。しかもこの書籍は、問題の作品に関して述べているこの文章からのみ構成されているようである。引用箇所は引用元の最後の部分、まとめに相当するようだ。
 引用された部分の内容は、ある表現作品を論じたもの、あるいはある表現作品を論じる人々を論じたものである。
 「私たち」「呼ぶ人」などの表現からすると、対象となる作品についてはすでに盛んな論議がなされているようであり、これらの文章はそれを前提として語られている。
 記事4・5では、問題の作品を論じる自分やその他の論者を象を触りにいった3人の盲人たちにたとえて、問題の作品を総体的にとらえるべきではないのかと指摘している。
 記事6では、作品の物語展開が何らかの分野の「王道をいくがごとし」であるとしたうえで、しかし本来当該作品は冒険ものではなかったか、にもかかわらず知る限り冒険ものという呼び方はされてこなかった、と述べている。
 記事4・5と記事6で異なる作品が取り上げられているとすると、記事5冒頭の表現からして、記事4・5と記事6とは異なる2冊の書籍からの引用ということになる。
 文体・書式を同じくする2冊の書籍を想像することも可能である。その場合、同じ作者あるいは作者集団による複数の刊行物のうちの2冊である可能性が高い。
 また記事4・5と記事6が同じ作品についてのものであり、単一の引用元から抜粋されたと考えることもできる。記事4・5・6が1冊の書籍からの引用であるとするならば、記事4・5がまとめの部分に相当すると思われるので、記事6は記事4・5より前に位置する部分からの抜粋である可能性が高い。
 しかし一つの文章から引用されたと考えるには、記事4・5と記事6の内容にはそぐわないものも感じられる。
 たとえば記事4・5の4〜5行目に「それではいったい、■■■■■とはどういう■■なのだろうか」という一文があるが、これは「それではいったい、■■■■■とはどういう作品なのだろうか」と考えることもできるだろう。一方、記事6の3〜4行目には「しかし、■■■とはいった〜なのだろうか。」という一文がある。先述したように1行を19文字とすれば、「しかし、■■■とはいった」から「なのだろうか。」の間には2文字入るのだが、すると「い何」を入れて「しかし、■■■とはいったい何なのだろうか。」とするのが自然に思える。この場合、記事4・5の4〜5行目と記事6の3〜4行目は非常に類似している。こうした類似した表現が同一の文章内で繰り返されることは、普通嫌われる。
 また、記事4・5の当該文で黒く塗りつぶされている部分の最初の方、および記事6の当該文で黒く塗りつぶされている部分には、問題となっている表現作品の作品名が記されていた可能性があるが、そうだとすると記事4・5のそれと記事6のそれとでは文字数が異なる。もっともこの場合は、前者のそれには芒括弧「」がかかって2文字ふえていると考えることもできるが。  また、記事4・5では3人の盲人のたとえを用いて、作品を総体としてとらえるべきだと論じているにも関わらず、記事6では問題の作品を冒険ものと呼ぶべきではないかと主張しており、少々矛盾しているようにも感じられる。
 といってこうした違和感自体、推測にもとづく推測から出てくるものである。これらの材料だけからでは、同一か別個か、判定を下すことは難しいだろう。

おわりに

 以上で分析を終わる。この分析は非常に不完全なものである。文字部分は誤読をしている可能性が高いし、それにもとづく推測もきわめて恣意的な憶測にすぎない。皆さんのご意見・ご指摘をたまわりたい。
 特にこの場面でもっとも興味深い部分である記事4・5・6については、引用元の資料を入手しなければどうしようもない。にもかかわらず、浅学の身、そのためにどうしたらいいものか全く思いつかない。お心当たりのある方はぜひご一報いただきたい。
98.3.4 伊藤悠

1998.9.17 追記

goo で多少検索したところこのようなものが見つかった。
「結晶遺伝子論」について「エヴァンゲリオン用語事典 第1版(エヴァ用語事典編纂局、八幡書店)」からの抜粋

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