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ICOマンセーの巻

2001年12月27日
伊藤悠 FZR02073---a---t---nifty.ne.jp

概して

発音は「イコ」。PlayStation2のソフトで、3DのアクションADV。2001年12月6日発売。角の生えた少年が霧深き古城から少女の手を引いて脱出する。

なお関連日記が指輪世界の日記2002年1月9日

詳しく

懐古の涙を流すなり

おや、MYST。というのがオープニングでの第一印象ですが、おお、MYST! がゲームを進めていったときの第二印象で、おおお、MYST! が終盤の第三印象となります。つまり古き良きMYSTの正統進化形なのですが、正統に進化するということがこれだけ力強いことなのかと落鱗しました。わかったふうになって済ますのもいい(人生は有限なので)ですが、ちゃんとやってみると、いいもんですな。寺田さんありがとうございました。

MYSTではグラフィックは一枚絵でしたが、ICOはリアルタイムに描画していてR2ボタンでのズームインや右スティックでの視線方向操作が可能。建物の外を眺めたりできまして、この城の外景のきれいなことよ。視界は数kmあるんじゃないかな。断崖の下の波打つ海面、その向こうの木々そよぐ丘陵、はるか遠い山並み。あるいは、霧に沈む岬、かすむ水平線。たれこめる雲を通してさす太陽。テラスや外庭に出て、城内の謎解きや戦闘からくる緊張感から解放された際のこうした景色は、じつに素晴らしい。MYSTの世界をリアルタイムに、自分のカメラで鑑賞できるという自由がこれほどに気持ちよいものとは知りませんでした。ビバ、PS2、マンセー、PS2、幸いなるかな、PS2、その名は称えられん。

答えは簡単

救うべき相手を連れていくという点ではエイブアゴーゴーなんかを思い出しますが、引っ張って歩く際のコントローラのバイブレーション機能がごつごつしてて楽しいです。ねえやんも頼りなくてどうにもかわいいんですが、「自分より背が高い萌え」が発生します。

先日漫画誌電撃大王のコラム「よつばスタジオ繁盛記」で里見英樹氏が、「かわいいという感情はどうしたものやら、どうしようもない。悲しければ泣けばいい、楽しければ歌えばいい、寒ければ震えればいい、幸せなら手を叩けばいい。だが、かわいいという感情の前にわれわれはなすすべがない」と苦悩して、愚痴を書いていましたが、なに、大丈夫ですよ、里見さん。

助ければいいんですよ。

鷲のマークのカメラワーク

3Dジャンプアクションはトゥームレイダー的ですが、カメラは主人公背後上方の二人称視点ではなくて、主人公の座標に対応して移動し定位する三人称です。ので、あまり厳密なジャンプパズルではないです。しかし、断崖絶壁の連続を高い位置から見下ろすというカメラのフレーミングが素敵です。クリフハンガーの演出はカメラワークだけではなくて、キャラクタも崖淵にぶら下がる際にいちいち「ウワッ」とか叫んで両手を振り回してよろめきますし、それを見てねえやんが息を呑むし、あるいはねえやんを呼んでジャンプさせると、たいがい飛距離が足りずに落ちかけて、手を掴んだリポビタンDになるし。ここらへんは、天空の城ラピュタを観て、「高台のふちから落ちかけたり落ちたりする怖さの演出法」を見比べると面白いでしょう。してみると、ICOでは落ちそうになる演出はあっても実際に落ちると死亡確定だったが、*実際に落ちて、そして助かる*という演出があってもよかったな。ジャンプして着地した瞬間に足元が崩れてすごい距離を落下するんだが、どうにかなって助かる、という……

カメラワークが既定なのでポリゴン欠けが起こりません。人物に寄り過ぎもしません。面白いのは音の処理で、カメラが主人公から遠かったり、主人公の方を向いていなかったりすると、主人公の声も遠くなることです。視聴覚系が主人公から離れていることになります。カメラワークで残念なのは向ける方向が制限されることで、これを解決する操作形態はないものかしらん。たしかに真後ろを向いた場合、スティックの方向指示とカメラとが支離滅裂になってしまうわけですが──カメラ位置ごとに基本の視線方向が定められているけれど、L2ボタンを押すとその位置が「第二の基本視線方向」になって、そこから改めて右スティックで視線を動かせるようになる、とか。

五臓六腑に、しみじみと

憎い演出としては、鳩なんかが憎いですな。遠景を見晴らしているときなんかに、はるか崖の下方を白い鳥が飛んでいたりして、空の青と本当の気持ちと……じゃないや、空の青にも海の青にも染まらず……だっけ、とにかく例のあれが発生して「さみしくなる回路」が励起されてひたぶるにものがなし。これらはzorkとかでもそうですが、「人のいない廃墟もの」で重要な要素です。だからたぶん、われわれの心の中の廃墟たる洋館(アローンインザダーク、バイオハザード)、鉄骨と鉄パイプ(ミスト)、古城(デスクリムゾン)のほかに、ひなびた農村とかもありえる。思い起こせばサイレントヒルがそこらへんで多彩で、学校や遊園地といった普段人が大勢いるところを舞台にしていてとても怖かったです(また丁寧に日常から異世界への移行を演出するんだこれ)が、でも恐怖と寂漠とはまた違いまして、ICOの静謐には敵さえも出会うとある面でほっとするようなうら悲しさがあるのでした。そこでもってきて、この世界には君と僕との二人きりだね、ねえやん。てな、くはァ、萌えますなあ!

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最後にバッファローマンさんから一言。