MMORPG関連の話

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和を尊んでみる

 20020507からの続きであり、暗いよ狭いよ怖いよの訂正です。語尾がですます調です。
 ある一定範囲のフィールドPに、一定に固定された量のモンスターが発生しているとします。
 あるレベルで複数人数の、たとえば20レベル4人の、パーティがそこで狩りをすると、効率よく経験値・アイテム・現金を入手できるとします。レベル20のプレイヤーキャラクター1人では戦力が足りなくて、すぐ帰還スクロールを使う羽目になったり、回復アイテムの消費がはげしすぎたりするため、パーティを組むほうがよいのです。
 本来、そうした面にパーティプレイの利点があります。
 しかし実際にはどんな現象がみられるでしょうか。
 それはこうです。つまり、20レベル4人のパーティでちょうどよいそのフィールドに、30レベルのプレイヤーが1人であらわれるのです。
 20レベルのキャラクター4人でちょうど処理できるモンスターを、30レベルのキャラクターは1人で処理することができます。そして30レベルの彼は、複数の人間の間で必要となる、スケジュールの調整や獲得アイテムの配分といったさまざまな摩擦をはぶけるのです。ですから彼は、モンスターがもっと強いフィールドQで30レベルのキャラクターを4人集めてパーティハントをするよりも、ひとりきりでフィールドPに赴くことを選ぶのです。
 おなじ論理から、20レベルのプレイヤーも、モンスターがフィールドPより弱くて自分ひとりで狩りのできる、フィールドOに赴くことになります。
 こうして、パーティを組んでの狩りからは利点が失われてしまい、プレイヤーの間では「まじめな狩り・レベルあげ・資金稼ぎ」の合間の「息抜き」、一種の娯楽として(娯楽であるMMORPGのなかでの娯楽とは、変な話ですけれども)とらえられています(ただしひとりでモンスターを撃破できるまでに成長することが望めないボス戦は、その例外といえます[boss])。
 この問題を解決するためには、いくつかの手法が考えられます。ただしいずれの手法にせよ、プレイヤーがある程度成長して、パーティプレイをこなせるだけの経験を積んでから適用するのがよいと思われます。

ネガティブなモンスター
 ある程度高レベルのプレイヤーキャラクターがあらわれた場合、モンスターがそのキャラクターから逃げるようにします。つまり、現在の「何もしなくても攻撃してくる(アクティブ)」「何もしなければ攻撃してこない(パッシブ)」の他にもうひとつ、「何もしなくても逃げていく(ネガティブ)」という性質を追加するわけです。そしてこれをたとえば、プレイヤーキャラクターのレベルがそのモンスターより5レベル高い場合に適用することにします。あるいはエンカウント式のMMORPGでならば、そのフィールドに対してレベルの高すぎるキャラクターには戦闘が発生しないようにします。

発生量を人数に比例させる
 あるフィールドに発生するモンスターの量を、そこにいるキャラクターの人数に比例させます。高レベルすぎるキャラクターにとって低レベルのフィールドでひとりきりで狩ることのメリットがなくなります。そして(言い換えているにすぎませんが、)同じフィールドで狩りをしているキャラクター達の間では、20020507で述べた協力のメリットが生じることになります。

獲得資源量をレベルに依存させる
 抽象的に書くとこうなります。
 フィールドごとに、適正なレベルXと、適正なパーティ人数Yを設定します。そしてレベルX-なキャラクターがY+な人数で、あるいはレベルX+なキャラクターがY-な人数で、挑んだ場合、ひとりあたりの獲得経験値や獲得アイテムが減るようにします。これはFF11が採っている手法です[ff11]

 これらの手法のうちの多くは、すでに稼働しているMMORPGに追加するかたちで実装するのは困難な仕様です。修正によって狩りが困難になれば、プレイヤーはそれを非難するにちがいないからです[exp]

ボス戦*boss
 リネージュでは、ボス狩りをしているプレイヤーの間では、広範な協力関係がみられます。

狩りが困難になる*exp
 といってそれを補填して獲得経験値・資源量を増やせば、ゲームの寿命が短くなって採算がとれなくなります。
 獲得経験値・資源量は、MMORPGのユーザーと運営会社との利害の本質的な対立点です。ユーザーは一刻も早くその世界のすべてを見尽くしてしまいたいし、運営会社はその時を一刻でも引き延ばそうとしているのです。ですからユーザーの要望のうち、「もっと稼げるようにしてほしい」「狩り場を広くしてほしい」という類のものは、まさに<傍点>要求</傍点>であって、ゲームを改善する提案とはいえません。しかしそれはあまり自覚されていないように見受けられます(例:リネージュの運営会社へ寄せられた要望:モンスター不足による改善案メール)。

FF11の経験値システム*ff11
 ゲーム制作者は、PCとモンスターとのレベル差と獲得経験値量との関係や、パーティ時の経験値分配システムを任意に設定することにより、1戦闘におけるもっとも効率のよいパーティ人数・モンスター数が何対何であるかを操作することができるわけです。他の手段も利用できますし(クラスやスキルの相性・連携など。EQで顕著と聞きます)、そのほうが迂遠で素敵ですが、expシステムによっても操作できる。
 で、ここで気になるのは、FF11ではその効率の良い対戦人数が、
PC:モンスター=n:1
であることです。
 プレイヤーは、パーティが何人であれ、モンスターは1体になるように戦闘しているっぽい(参考:うさだ)。
 これって、ちょいとヤバいと思うのです。というのは、n:1で辛勝、というバランスの狩り場に行って戦ってるわけですから、そこにモンスターがもう1体リンクしてn:2になったら戦力比変動がはげしすぎて圧敗って羽目になる仕組みだからです。実際、見てたら全滅してまして、まあ友人どもがある程度下手だったのかもしれませんけれども。
 1inc(EQ用語。リンク)即死──リンクの影響が大きすぎて、大きすぎるために意味を失っている。
 比較するにリネージュだと、n人対1〜2体で楽勝、4〜5体辛勝、8体ガタブル即逃げ、みたいな分散の少ない狩りをします。EQでは釣ってきてからの1匹box(MMO用語。取り囲んでの箱殴り)が基本だが、4〜5体同時に来た時はParkingなりMez keepなり(それぞれ呪文だかスキルだか)して1体ずつ順に各個撃破していく(Cloud Controlとか呼ぶ)らしいです。
 2Dと3Dとで視界の広さ(=一画面内にいられるモンスター数)の違いとかも関係あると思われるが、考えどころ。
 FFは、せっかく恣意的な経験値システムを仕組んであって、制作者の好みの操作ができるのだから、n人対3〜4体の戦闘を推奨(リンク時に適当な分量のexpボーナスを与えたり)すればいいのに、と思ったり。

暗いよ狭いよ怖いよ

 20020507からの続きだが、つまり、ラグナロクは現在ベータ版ゆえにマップが、世界が狭い。人口密度が高い。プレイヤーあたりのスポーン(モンスター発生)量が少ない。それがパーティプレイの利点を無効化するらしい。

参考:
小ネタ&攻略 PSO <経験値配分> 敵を倒した時に入る経験値は「トドメをさした人に100%」「途中攻撃を当ててた人に80%」入ります。 つまり、敵の経験値は固定分配ではないので、当て得ということになります。 当てるダメージは0でもOKですが、MISSはNG。 シフタやデバンドといった敵の能力を低下させるテクニックをかけた場合も攻撃を当てたとみなされるので、フォースなどは少ないTPで効率よく経験値入手権を発生させられます。 余談ですが、「ハンターフィールド」「レンジャーフィールド」「フォースフィールド」のレア防具を装備しているとトドメをささなくても100%経験値が入ります。
どっかの掲示板の過去ログ ラグナロク。 = 経験値分配System = 経験値は普通Monsterに一番、 大きなDamageを与えたCharacterが多くもらえます。 MonsterのHPに被害を与えた数値と並べて 経験地が上がります。 例 ) HP100のMonsterからもらえる経験値が"100"と言う あるPlayerが65のDamageを与えたと言えば もらえる経験値は"65"。 ただし他のPlayerとの協同Playの時は次と同じ。 上のMonsterをひとつのPlayerが 50のDamageで攻撃しているとき後に他の Playerが50のDamageで攻撃すれば、 先に攻撃したPlayerは後に攻撃したPlayerの 二倍になる経験値をもらう。    = Damage 50 : 50 => 経験値 50 : 50 = X   先 : 66 . 後 : 33 = O   またMonsterを攻撃するとき1名以上のとき1名に5%ずつ Bonus経験値が増える。 例 ) 経験値100のMonsterを Playerひとりが倒した時 = 経験値 100。 経験値100のMonsterを Playerふたりが倒した時 = 経験値 105。 経験値100のMonsterを Player三人が倒した時 = 経験値 110。 = Party経験値分配System = 上の経験値分配Systemの上に適用され、 PartyのCharacterのLevelについて、もらう経験値は違う。 Levelが高いPlayerが高くもらう
Lineage クランについて リネージュ。 リネージュでは7人(?)までのパーティを組むことができます。パーティメンバー同士では経験値のバーが全員同じ程度に伸びるように経験値が分配されます。プレイしてみると分かりますが、このゲームはだいたいレベルが4つ上がったくらいごとに極端に経験値の増え方が悪くなります。ということで、パーティメンバーに4つ以上レベルの離れた人がいた場合、レベルの低い人はどれだけ戦ってもほとんど経験値が入りません。全員が楽しく狩るためには、全員がほぼ同じレベルであることが重要です。
パーティでの戦闘 FF11。 パーティを組むと、経験値は自動で分配される。 ただし、LVが高さに比例して、経験値が分配されるので あまりLV差があるパーティを組んでしまうと、低LVの人にはほとんど 経験値が入ってこなくなる。 これは、低LVの人が高LVの人と組んで、楽に経験値を稼げない仕組みだそうだ。 敵が落としたアイテムなんかは、プールといって、戦利品を一時的に貯められる。 そこで、リーダーがロットインというコマンドを使うと分配される。 分配は、誰に分配するという指名ができなさそう。 感じとしては、貢献度が高い人にいってしまう傾向にあるみたい。
FF11と他のMMORPGを比較するスレ その3 2ch。 381 :既にその名前は使われています :02/07/05 23:42 ID:ZOvQRCdQ >>380 FF11ではレベル30の人が経験値を100得たとき 同じPTのレベル20人は80近く経験値もらえる。 レベル10差でこれだけもらえれば十分だと思うけどなあ。 ちなみにレベル補正の式は 0.5+0.5×(自分のLV/PT内最高LV) つまりレベルが高くなればさらにレベル差は気にならなくなる。

混沌協定の話題20020601に対して、それをきっかけとして
 ──獲得総経験値がパーティプレイによって増えないのは、現実的に、理屈的に、おかしくないと言えるだろう、たしかに。そしてその配分が活躍した人間・ダメージを多く与えた人間に多く与えられるというのも理屈だ、たしかに。
 しかし現実的な理屈がそうであっても、ゲーム的な理屈はそうではないと思う。ゲーム内の事象を現実の理屈で説明して納得しようというのはよくないアプローチだと思う(参考:リアルって言うな!)。なんとなればコンピュータには現在、現実の事象を表現するだけの能力がないのだから。現実に近いことはプレイヤの初期学習効率を上げるけれど、利点はそれくらいであって、経験値システムなどという裏方な場所ではおもうさま犠牲にすべきではなかろうか。

 あれだな、たぶん、MMORPGが最大化すべき値は、コミュニケーション量だ。
 これはそんなに飛躍した話じゃない。まああたりまえか。
 次。コミュニケーション量を増大させるには、顔馴染みとの接触回数、接触時間を増やすことだ。
 接触とは、パーティプレイや戦争のほか、アイテム取引や忠告・アドバイスである。

 MMORPGでは、プレイ時間によってプレイヤー層が分離していく傾向がある。ミルクとクリームのように。FF11式の経験値分配システムは、同レベルによるパーティプレイを推奨している、つまり、ミルクの分離を推進している。リネージュもそうなのだ。そしてリネージュでは、血盟システム[pl]が顔馴染みとの接触を促している、にもかかわらず経験値システムは分離を進めていく。矛盾している、すなわち──クランハントやってらんないんじゃヴォケ!! レベル低いキャラクターからすると、高いキャラにexp吸われちゃうし金・アイテムも入らない。高いキャラからすると低い奴が死なないように援護し、ポーションやら復活スクロールやら変身スクロールやら世話してやんなきゃいけないから足手まといで、なおかつexpや金の収入はほぼ変わらない。
 そして、その時点での低レベルキャラから将来恩返ししてもらうことも期待できない。というのも、高レベルキャラが高レベルなのはプレイヤーの1日あたりのプレイ時間が多いからであり、低レベルキャラが低レベルなのはプレイヤーの1日あたりのプレイ時間が少ないからだ。よってレベルは逆転するどころか日に日に開くのであって、将来恩返ししてきたとしてもその頃にはその金なりアイテムなりは高レベルキャラにとってはいっそう価値のない物になっているに違いないのだ。あえて、レベルが逆転したとしよう、しかしそれは先輩キャラが引退していく時であって、残念、無念。
 具体例はこちら[ln]

 だから、どうすればいいのか? このように分離していこうとする人間関係をいかにつなぎ止めるか、混ぜ合わさったままにしておくか?

 経験値ボーナスによって顔馴染みの接触を促進する試みの例としては、リネージュでクラン長のプリンス・プリンセスがリーダーとなったパーティには獲得経験値5%ボーナス、とか(雀の涙だ!)。極端なのだと、PSOの100%+80%システム(上述。大盤振舞だ!)。Asheron's CallのAllegianceシステム[as]とか(封建制だ!無限連鎖講だ!)。面白いですな。

血盟システム*pl
 クランとも呼ぶ。クランのシンボルが名前わきに表示され、/whoコマンドで他人の所属クランが確認できる。クランチャットが簡易に行える。クラン共有の倉庫があり、各街で出し入れができる。戦争、城所有、アジト所有はクラン単位で行う。

キャラクター分離の具体例*ln
 Lineageの思い出に浸るスレ2

Allegianceシステム*as
西尾ゆきの海外ゲームレポート内プレーヤー同士が忠誠を誓い合うシステム/仁義を感じる異色MMORPGの拡張パック/「Asheron's Call Dark Majesty」 経験値ネズミ講で「出入りじゃあ、タマぁ殺ったるでえ」なゲーム? なのか?


微妙に関係ある:
GAME Watch内Richard Garriot氏インタビュー/新作「tabula rasa(タビュラ・ラサ)」、「リネージュ2」に迫る!

カルメンな世界/MMORPGにおける死

混沌協定内20020521を読んで。
 かつてゲームでの観測者問題。救世と地獄と学園祭前日。というものを書いたが──
 つまり、スタンドアローンなゲームでは、ゲーム世界が、プレイヤの引退につきあって、同時に終わってくれるのだ。PCと心中してくれる、思い入れのいい女である。しかしMMORPGの世界は違う、「わたしあなたといっしょに死ぬ気はないわ。だってあたしには、まだまだあたしを必要としてくれてる人達がいるんですもの。死ぬならお一人で死ねば?」

 われわれは死にたいのだ。きれいさっぱり消え去りたいのだ。寝たい、降りたい、逃避したい。スタンドアローンなゲームでは、それが実現できる。なにもかも忘れて、放棄できる。放棄して、現実の世界に帰ってこれる。
 言い換えると、これまでコンピュータゲームとは好きなときに自分ひとりの判断でケリをつけられる世界だった。現実にはそんな状況はほとんどないにも関わらずだ。われわれは現実世界においてしばしば『ああもうやってらんねえ。もう俺降りる! おしまい! しゅーりょー!』と叫びたくなるが、いろいろしがらみがあって、残していくものがあって、実際にはなにかを独断で放棄する権利や、あるいは自殺する度胸はない。
 MMO世界もまた、ひとりで打ち捨てて消すことができない世界である。自分がいなくなるときには、ゲーム世界に知人友人を残していくことになる。そして自分が観測していなくても、ゲーム世界は知人や友人が観測することによって存続していく。

 さて話を変える。コンピュータゲームには、支配する、という要素がある。思うがままさ。システムを組み伏せ、壊し、好き放題にするのです。陵辱するのですッ!(餓狼伝ネタ) しかしMMOでは世界に他プレイヤが含まれるため、そうもいかないのだ(それでもなんとか壊そうとがんばるプレイヤもいる。ブレーカとでも呼ぶべきか……参考:ジョカ日記。チータや詐欺師は資本を得るためにゲームを壊す。ブレーカはゲームを壊すために資本を消費する場合がある点が違う)。
 対戦格闘ゲームの他プレイヤは、まさに組み伏せて壊す対象ですな、互いにそれを承知で席に座るわけだし。「目の前の肉体を好きにしていいって……」
 悪くねえよな。
 CBサクラたんハァハァ。

腕輪と首飾り/社会学でGO

 従来のスタンドアローンなコンピュータゲームが、ロビンソン・クルーソーにとっていかに心地よい無人島を設計するか? というゲームだったとするなら、MMOゲームは十五少年にとっていかに心地よい無人島を設計するか? というゲームなわけだ。デザイン間違えると漂流教室になっちまったり。むしろもともと蝿の王を狙ってたり。
 つまり、いかに心地よい社会をつくるか? 人々をして心地よい人間関係を構築させるか?
 同じ神でもアダム1人用の世界じゃなくて、10000人用の世界をデザインしなきゃいけないわけだ。
 現在のわれわれの社会構造・人間関係のなかで、経済関係ってのはすごく重要な要素ではあるんだけども、着眼点を経済に限ることはない。
 だから、生贄捧げるために花の戦争PKするアステカ社会なMMOとか、赤い貝の首飾りと白い貝の腕輪を逆回転トレードするクラ交易なMMOとか、成立するんじゃ……しないかしらん。まあいいや。そういう文化人類学なアレが。
 ていうかそれ系もっと勉強したほうがいいかも。現在のMMORPGの社会が現実の社会構造でいうといつのどこのそれに類似しているのかわかればさぞ参考になろうて。
 てかもー、人為的に環境つくって、数千〜数万人の人間ぶちこんで数ヶ月生活させられるんだから、MMOゲームって社会学方面の人にとってはウマウマな題材ではないかと、門外漢としては想像するがどうなんだろか。今まで現実世界の歴史からくみたててきた理論が有効かどうか調べるためのテストケースがじゃんじゃん供給されてるってことではないのか? 言い過ぎ?
 さらにさらに、MMO世界には<傍点>神がいる</傍点>わけだが、そこらへんでどうよ? 欧米と日本とでプレイヤーのGMや運営会社に対する態度が違うとか違わないとか、ありそうな、なさそうな。

パーティハントと矛盾と恥と

 もう半年前のことだが、ROやリネージュを遊んでいてつらかったのは、ソロハントの効率がパーティハントのそれを上回ることである。それがために、パーティハントには「楽しみのために」いくことになる。そうしたパーティハントにおいては、回復呪文と攻撃呪文とアイテム使用のトレードオフとかを考えていてつらい。それ以前に、根本に、そもそも、効率上からはソロハントをすべきだ、という矛盾を抱えているからである。その矛盾が公理体系全体を冒すので真面目に考えられなくなる。つまり、パーティハントの戦闘中に発生するパズルを素直に解いて楽しむことができない。
 また、バレバレなのがへこむというのもある。しょせん寂しいからMMORPGをやっているのであり、寄り集まりたいのでパーティハントをしたいのだが、ROやリネージュではそれがバレバレである、なぜならソロハントのほうが効率がいいから。ほげほげオンラインはパーティハントの効率がいい;効率重視だからパーティを組む;パーティを組みたいからほげほげオンラインを遊ぶ──というふうに一段階クッションを挟ませてほしい。それなら少しは体面が保てるというものだ。

カタンのMMORPG

 MMORPGにおいては、自分以外のプレイヤーと自分との関係は単純になりがちである。乱暴に言えば、(1)狩場における邪魔キャラ、(2)パーティハントにおける仲間、の2種類である[bg]。もっと多様であっても悪くなかろう。そこで、ドイツゲーム(ボードゲーム)的関係を持ち込むことができるような気がする。妄想だが。
 たとえばカタン(概略:Table Games in the World)の資源交換を持ち込むなら、

狩場で敵から得られる資源が重く、重量制限にすぐひっかかる。そのため自分たちのパーティだけで狩をして、いちいち街まで戻っていたら効率が悪い。
アイテムの合成によって資源を軽いアイテムに変化させることができる。しかしそのコンボは、自分達のパーティだけでは回らない。
よって「この時間帯、あの狩場人少なすぎて嫌だなあ。4パーティぐらいいないとダメでしょ」などという会話が発生する。
この場合、同じ狩場内でどのパーティが何をlootし誰が何を合成したのかが(自動アナウンスなどで)感知できるとよいだろう。

など。ほかには、アクワイア(概略:The Game Gallery)や1830(概略:暁の鷹)のような、株券とか投資といったシステムも流用できるやもしれない。

アイテムやペットをログアウト中などに他のパーティに預けておくことができる。これが投資となる。
預かっているアイテムやペットが戦闘で役に立つ。
アイテムやペットはその「株主」にある程度の経験値なり金銭なりの配当を生む。ペットが育つというのでもいいだろう。
時間あたりいくらの借り賃を払うというシステムでもいい。

 ヒストリー(自分の手番に受け取った戦力マーカーでもって領土を広げると勝利点がもらえる。他人の手番でそれらを潰されてもそれほど勝利点を失うわけではないので、防御を考えず大きく薄く拡張する傾向があるゲーム。概略:名古屋EJF)的RvR(&mob配置)の交互繰り返しシステムってのはどうかな。攻め側はクラン規模で、守り側はmob+個人単位で、とか非対称にする手もあるかと。守り側が攻め側の予定にあわせて集合するのって手間が一段階増えてつらいし、lineageで来ない攻めを待ってる守りの人ら[war]って暇そうだ。

狩場*bg
 (3)街における商取引の相手、というのもあるのだが、ここでは狩場における関係について考えるので除く。今はなぜだかうまく詳しく言えないが、戦闘-成長システムにとっては街より狩場のほうが本質的であるからだ。

戦争*war
 EQおよびDAoCのPvPやRvR、戦争については暁の鷹など。

RPGに共有はない

 Asheron's Call 2をしばらくやって書いた日記2つ。
愛しい人、狩場で会いましょう。
PvP Quest。

 話は微妙に変わるが、現在、MMORPGに資本はない。
 つまり、RPGの戦闘-成長システムが、生産手段を個人化している。
 貨幣は渡せるがアイテムの装備に必要最低レベル条件があったりする。雇用・賃借の契約が結びづらく強制力も皆無。そもそも貨幣ではなく、経験値が生産の根源である。そして経験値は譲渡賃借できない。
 生産効率の上がる集団の人数が、現実の経済活動に対して非常に小さい。たったの6人とか10人とかだ。分業に伴う利得の格差も小さく、地主と小作人はいない。階級構造もない。資本もない。
 共有できる生産手段がないのだから資本主義も社会主義も共産主義もない。
 ただし、上で書いた生産という言葉には実は全部鍵括弧をつけなくてはいけない。現実の生産はそれによって食ったり楽しんだりできるようになるものだが、MMORPGではまず第一に食う必要がない。そして第二に、楽しむための物体(財貨)を譲渡することがほとんどできない。現実では生産活動→貨幣→財貨→快楽であるが、MMOゲームでは「生産活動」、すなわち戦闘自体が快楽である(ゲームとは活動の過程でありその快楽は活動自体にある。御褒美グラフィックなどもあるがそれはいわば活動をはじめる口実であって、真に御褒美に価値があったらそれ単体で販売するのが筋である)。

リセットタイマーと行動指針

 Asheron's Call 2をしばらくやって、もう飽きた。
 20レベルくらいまでは、システムを理解しながら上がる。あとあと考えると効率の悪いことをしており、セカンドキャラクターを育てる時などは数時間で通過できる。そこから30レベルくらいまでが花である。面白い。
 愛しい人、狩場で会いましょう。で述べたが、Asheron's Call 2のクエストシステムは時間利用の行動指針にメリハリがつくのでよい。

ログインする
→クエストのリセットタイマーをチェック。定番のお使いクエストと定番の狩りクエストのタイマーがリセットされている。よろしい。
→フレンドリストをチェック。DonとNeroは今日はまだいないな。
→定番のお使いクエストをやる(受領条件レベル26+、リセットタイマー24時間)
→定番の狩りクエスト(「Aを5匹、Bを5匹、Cを10匹狩れ」、受領条件レベル25+、リセットタイマー24時間、カウントはパーティ内で共有されるので3人パーティでも60匹狩る必要はなく20匹でよい)の狩場へいく。
→狩場にレベルが同じくらいの見知らぬ他プレイヤーXを発見。Ito「あなたも定番狩りクエストしに来たんですか?」X「そうですよ」Ito「パーティ組みませんか?」Y「オーケー」
→5匹くらい狩ったところでNeroがログインしてきた。tellメッセージを送る。Ito「Hi, Nero. いま定番狩りクエストやってんだけど、君、クエストタイマーリセットしてる?」Nero「してる。オーケー、今からいく」
→Neroの合流を待ちつつ狩り続けているとレアクエストモンスターDを発見。殺すと「Aを10匹狩れ」というクエストがもらえて経験値がオイシイ。まだ殺さず、Neroを待つ。
→知らない人Yがやってきた。Y「おまえらそこのD食べるならパーティに入れてくんない?」というのでパーティにinvite。Ito「僕のフレンドのNeroってのが来てから食べます。オーケー?」Y「オーケー」
→Nero来た。パーティにinviteしてDを殺し、クエストスタート。Aはそこらじゅうにいるのでしばらく狩ってクエストコンプリート。その間に僕とXの定番狩りクエストもコンプリート。
→Ito「僕はこのままYさんとNeroの定番狩りクエストを手伝いますが、Xさんはどうしますか?」X「俺は抜けます。楽しかったよ、おつかれ」Ito「おつかれでした。bye」
→狩り続けてYとNeroの定番狩りクエストコンプリート。Nero「オーケー、ありがと。さて、どうしようか?」Ito「僕は今日もう定番おつかいクエストやったけど、YさんとNeroは?」Y「やった」Nero「昨日やって、まだタイマーがリセットしてない」こうなるとさしあたって急ぎの仕事はなくなり、本日のノルマ終了状態になる。
→そのままスキルやクラス談義。パッチの噂話など。
→Ito「さて、どうしようか?」Nero「クラフトの材料集め手伝ってくれない?」Ito「オーケー」Y「俺はもう寝ます。おつかれ」等々。三々五々、特に重要でない瑣末な仕事に散っていく。
→そのうち僕も眠くなるのでIto「そろそろ寝るぽ。また明日来る?」Nero「うん。また明日。おつかれ」

 これが40レベルとかを越えると、定番クエストのリセットタイマーが3日とか7日になってしまい、フレンドと出会ってもタイマーのリセットされてないので普通のモンスター狩りによる経験値稼ぎをするはめになることが多くなる。すると行動指針が、

(1)効率の良いパーティ編成をめざしてフレンドを呼んだりクランチャットで叫んだり、野良inviteしていく*ni
(2)いったん効率の良いパーティができあがったら、その状態を維持しつつできるだけ長く狩り続ける(ランニングハント)。

というものになってしまう。これは辛い。というのは、狩り続けるのはあっというまに飽きるからだ。僕はRPGの戦闘それ自体にはすぐ飽きる性質なので、よし万全のパーティ編成ができた、後は狩れば狩るほど儲かるぜ、レッツランニングハントとか言われるともう眠くなる。人を集める部分、人狩りが面白いのであって、モンスター狩りは眠たい。
 レベル40を越えてたあたりからはクエストの比重が軽くランニングハントの比重が重くなっていく。レベル45を越すともうクエストはゴミで、高レベルモンスターを狩り続けるべし、となる。
 ここで辛いのは、ランニングハント以外のことをするのがきわめてムダな行為になってしまうことだ。
 MMORPGにおけるプレイヤーの行動指針の中で主となる合理性は、プレイ時間をいかに効率よく経験値・通貨に変換していくかに求められる。24時間リセットの定番クエストが機能している20〜30レベルでは、毎日、ノルマとして定番クエストをこなしていけばこの合理性の要求が満たされ、ノルマを終わらせた後はいわば自由時間となって、比較的どうでもいい瑣末なクエストをやってみたり、たいして意味のないクラフトスキルを鍛えてみたり、出会った初心者にクエストの案内をしてやってみたり、防具をトリコロールに染めてみたり、辻PKしにいったり、自キャラ萌え〜とかいいながらカメラを回したりズームしたり、暮れる夕陽を眺めたりしていればよい。
 しかし24時間リセットの定番クエストがなくなってしまい、ランニングハントの重要性が上がると、プレイ時間のすべてが、潜在的に経験値に変換可能なものになってしまう。こういう状態ではプレイヤーは気が休まらない。ノルマを終えてさて何してもいいや、まったりバカなことでもするか、という時間がなくなってしまい、常に「ランニングハントできるパーティメンバーを揃えられるか? 揃ったなら、いつまでそのハンティングを維持継続できるか?」と問われつづける。きつい。辛い。
 より深刻なことに、他プレイヤーの時間も常にそのプレイヤーにとって潜在的経験値になってしまうので、パーティを組んだときに彼らの時間にまで責任をもたなくてはならなくなってしまう。ノルマがある時代では、定番クエスト終わったからもう抜けてもいいよね、雑談してもいいよね、であり、楽器の合奏がはじまったり、突然ぐるぐる回り始めたりなどの間抜けな時間があった。しかしランニングハントの時代では、ランニングハントにつきあってくれればくれるほど良い人、寝るからとかいって抜けてランニングハントを解散に追い込んでしまうやつは無責任な人、である。特にパーティを集め指揮するリーダー格は、粘れるだけ粘るべしという重い責任を背負うことになるので、時間のあるプレイヤーでないとパーティを企画できない。ノルマのあった頃は、1時間くらいあればノルマクエストパーティのリーダーをやれたし、ノルマ後の企画のリーダーにはごく軽い責任しかなかったのだが……
 つまり、24時間のリセットタイマーというのはプレイヤーから行動指針を取り上げてくれる、偉大なフィーチャーだったということだ。行動指針のプレッシャーに対処するのは楽しく、それから解放されるのもまた楽しい。アイスクリームは美味しく、それで冷えた口の凍えを緩和してくれるウェファースもまた美味しいのだ。

野良invite[ni]
 実際には、これが困ったことなのだが、40レベル以降野良inviteの比率は下がっていく。これは行動指針がクエストからモンスター狩りへと転換することによる本質的問題である。
 クエストでは、多少役に立たないレベル・クラスのキャラクターがパーティに参加してももらえる経験値は減らないので、見知らぬキャラクターを気軽に野良inviteすることができる。むしろ有限のクエストモンスターを分割消費して効率を低下させることを恐れて、「できるだけ大きいパーティを組んで一緒にたべる」行動様式が一般的となる。狩場に人影が見えたら即invite。そうやって大所帯になったパーティは、大きくなるほどに戦術的に大味な行動をとるようになる。統制がとれないし、とれなくても大雑把な突撃で勝てるからだ。しかし、それでいい。
 EQ的な経験値頭割りのモンスター狩りにはベストなパーティ編成があり、それに外れたキャラクターが加わると経験値獲得効率が下がる。だから狩場での野良パーティは少なくなり、街での編成が主となっていく。戦闘時、パーティ内での機能分担とチームプレイが重要になって大味な突撃は論外となり、各キャラクターが各キャラクターの役割を的確に果たすことが期待される。クラスの機能を発揮できない不真面目なプレイヤーがパーティにまぎれこむと一気に効率が落ちるので、街でのパーティ編成はおろそかにできず、顔見知りが好まれる。したがって面子は固定化していく。
 同じ原理から、役に立つクラスがほんとうに役に立つようになり、役に立たないクラスがほんとうにお荷物になるようになる。この、お荷物判明レベル帯というのは、残酷で不幸な場所である(参照:255 落日EverQuest(最終回))。
 野良inviteとは、その時その場所で出会ったキャラクターたち、つまり時空間的に一致したキャラクターたちに必ず幸福な関係を与えるということである。目の前にいる相手については必ず、その存在を喜べる。それは、出会ったキャラクターのうちから最も役に立つ相手を選択させるシステムではいけない。それはその場にいる複数のキャラクターを比較して、役に立たないキャラクターを切り捨てるシステムであるからだ。MMOゲームのなかで出会ったプレイヤーの間に生じる関係は、出会った以上は、幸福なものであるべきだ。したがって、ある地域にあるクエストの受領条件レベルは等しくなっているべきだし、人口密度は低くあるべきである。

スケジューリングと、その要素としての他プレイヤー

 さて、MMORPGにおいてプレイヤーの基本的行動指針は、プレイ時間を効率よく経験値*ccに変換していくところにある。そのため、スケジューリングというゲーム性(ここではゲーム性を工夫のしがいと定義する)が生まれる。
 Asheron's Call 2ではクエストによってこのゲーム性が深まる*tp。たまに複数のクエストが(フラグアイテムなどを介して)絡まりあった時などはさらに熱いが、もっと熱いものがある。それは、他のプレイヤーである。
 愛しい人、狩場で会いましょう。でも述べたように、Asheron's Call 2ではクエスト経験値の配分法、またプレイヤー密度の低さから、面識の薄い他プレイヤーであっても経験値稼ぎの障害になる(参照:うさだ20030329)とは限らず、むしろ経験値源として扱うことができる場合が多い。
 恩を受けたのか着せたのか、クエストのフラグアイテムは何個持ってるのか、今どこにいるのか、他のクエストをしてたりしないか、あとどれくらいログインしてるのか、先導しなくてもクエストダンジョンまで迷わず来れる知識があるか、俺が今パーティ組んでるメンバーとPKライバルだったりしないか、等々、非常に多くの要素を考慮しつつ、ブッキングを行いパーティを企画編成し、あるいは複数のパーティに順次参加離脱しつつ効率よく自分の稼ぎを稼いでいくのには、なかなかのゲーム性がある*12
 人間はうまくフィルタリングしてシステムに組み込むことができればゲーム性を飛躍的に向上させることのできる素材である。


[cc]経験値
 または通貨。システムによって異なる。リネージュの序中盤などでは通貨が主で経験値が従。

[tp]クエストによってゲーム性が深まる
 またAsheron's Call 2では、馬、ゲイトウェイ、リングウェイといった差別化された移動手段も、スケジューリングのゲーム性を深めている。移動計画を立てるのは燃える。ここでクエストモンスターを狩って、馬に乗ってあそこまでリングウェイをたどって、フレンドと落ち合って、川を渡って、木立を抜けて。

[12]企画編成の楽しさ
 「リセットタイマーと行動指針」で、ランニングハント時代を生きるのは辛い、と述べたのはつまり、楽しいスケジューリングという(1)のあとに、眠たい(2)が待っている、という意味なのである。

パーティ戦闘のヤバさ

 思えばTRPG時代から、RPGにおけるパーティ戦闘システムにはヤバさが漂っていた。GURPSやハイパーT&Tといった、緻密な戦闘システムを備えたTRPGにおける、「1人のベテランプレイヤーが5人の部下の行動を全部仕切ってしまうモード」「2人のベテランプレイヤーが4人の部下がいかに行動すべきか喧々諤々議論しはじめるモード」の問題である。5人あるいは4人の初心者プレイヤーたちは、微妙にしょんぼりしながら先輩の指示に従ったものだった。
 これは戦闘システムにおいて各クラスの分業が進んでいればいるほど、チームワークが重要であればあるほど、互いのスキル連携に精密なコンビネーションを要求されればされるほど、生じる。
 つまり、各クラスのスキルがMagic: the Gatheringのスペルコンボのように、
1)エンチャンターAがアタッカーの武器を攻撃力アップ
2)エンチャンターBがアタッカーのパラメータアップ
3)シーフが対象モンスターの防御力を下げる
4)アタッカーが複数回攻撃を発動
といった連携によって高効率を叩き出せば叩き出すほど、各プレイヤーのやることが決まってしまい、その線をちゃんと踏めない初心者や困ったちゃんプレイヤーは怒られる。
 つまり、あるクラスの行動がパーティにとってクリティカルな重要性をもつほどに、そのクラスを受け持った初心者プレイヤーの<傍点>プレイヤーとしての</傍点>存在意義は否定されてしまう。
 そしてこれはベテランプレイヤーと初心者プレイヤーとの間だけの問題ではない。
 連携の強力なゲームでは、そのパーティで最も頭の良いプレイヤーが、パーティ構成員それぞれの取るべき行動を決定し、他の5人にはその指示を理解するだけの能力があれば良い。すなわち、各クラスが精度の高い歯車として緊密巧緻に噛み合って戦闘単位としてのパーティを構成すればするほど、パーティのとる戦術行動は一意に決定されるようになり*nm、意志決定者としての複数プレイヤーが必要でなくなる*bu。つまりこれは、複数の意志決定者が半個人的・半社会的にとる行動の因果交錯分散統合するさまを楽しむ、というTRPGの性質(ロールプレイングと矛盾 矛盾重視のTRPG)に背反する現象である。

 スタンドアローンなCRPGでなら、各キャラクターのスキルやパラメータが相互依存して複雑なトレードオフ関係を結び、その行動順や位置関係をいろいろ工夫して楽しむというゲームシステムは非常に楽しい。
キャラクターCがキャラクターDにクィックムーブをかけるまでは、Cを死なすわけにはいかないから、まずBが回復魔法をかけよう。いや、Cはクィックムーブかけた後は死んでもいいから、全体防御up魔法にしよう。それならCの死後にも意味がある……
”ハイパーロボット”とパズルゲームの楽しみ) このように一人のプレイヤーが複数のキャラクターをゲームトークンとして扱い、それらそれぞれが持つ資源の絡み合い引っ張り合うトレードオフ関係をパズル*paとして楽しむ。それはSRPG的な楽しみである。
 しかしTRPGやMMORPGでは、1プレイヤー1キャラクター持ちである。だからプレイヤーの持つ資源は一段階層を下がって、そのキャラクターのHP・MPといったパラメータや、スキルだけになる。TRPGやMMORPGでのパズルは、そうしたキャラクターの内の、パラメータやスキルの間に設けられるべきであって、キャラクター間ではあまり発生しないほうが良い。

[nm]一意に決定されるようになり
 これは、「結果にあまりに意味がありすぎる選択肢は楽しめない(サクラ大戦の安全弁)」現象の一例でもあるだろう。
 選択肢A,Bが提示されて、Bのほうに意味がありすぎると、Bを選ぶしかないので、プレイヤーはその選択肢で意志決定を行う楽しみを持つことができない(コスティキアンのゲーム論の「小英帝国」参照)。AにもBにも意味がありすぎる場合、セーブ&ロードして両方見るので、これもまた楽しめない(選択の結果は両方楽しむが、選択すること自体は楽しめない)。
 しなくてもいいのだが、するとある程度の意味がある、そういうことを、われわれはしたいのだ。
 一言でいってしまうとゲームは逃避的なメディアである、で済んでしまうのだが、二言でいうと、ゲームシステムはユーザーにやわらかなストレスを感じさせるべきである。しなければならないことは、プレッシャーが強すぎて楽しめない。やるとちょっとだけ意味があることを提供すべきである。
 そう考えると、現実世界で役に立つスキルを学べるゲーム、という概念がかなり難しいものに思えてくる。ゲームを通じてユーザーに現実世界で役に立つスキルを学ばせるためには、それが現実で役に立つスキルであることを巧妙に隠し、感じさせないようにする必要があるだろう。

[bu]各クラスが歯車として緊密に噛み合って戦闘単位としてのパーティを構成するほど、複数プレイヤーが必要でなくなる
 これは軍事もののTRPGが孕む問題でもある。軍隊は集団性の強いグループであり、個人が集団の目的達成のために殉ずることをしばしば要求するので、複数プレイヤーの存在意義が薄れやすい。
 MMORPGにおいては、とるべき戦術行動が一意に決定されてしまっても、各プレイヤーに各キャラクターを操作するというけっこう手のかかる仕事が残されているので、問題は緩和される(TRPGでの行動は口頭による宣言ひとつなので、ベテランプレイヤーがべらべら指示して、初心者が「じゃ、そうします」で済んでしまう)。また各プレイヤーには対象や周囲を観察する目としての役割があり、これがけっこう重要なので、TRPGよりマシである。

[pa]パズル
 ゲームにおいて、制作者が出題し、プレイヤーが悩む問題には二種類ある。解のある問題であるパズルと、解のない問題であるゲーム(パズルとゲームとヒカ碁の神様)。
 基本的に、解のある問題は、プレイヤーを数秒〜数時間考えさせ、そして合理的な正解が一つ出る。一定時間、プレイヤーの思考回路を通電させるための、解かせるための問題である。CRPGの戦闘で、あるターンにどんな行動をするか、ウォーゲームで、あるターンにどんな戦線を敷くか。ある意味で時間稼ぎのための問題である。
 それに対して解のない問題は、結果を見るための問題といえる。ADVの一周目でどんな選択肢を選ぶか、GPMでどんな人生を送るか、TRPGで話をどの方向に持っていくか。ここでは情報の不足(フラグ管理がどうなっているか不明だったり、システムが複雑すぎてバタフライ効果を起こしたり)により、どちらの選択肢が正解なのかわからない。それぞれの選択肢の先で何が起きるのかもわからない。むしろここでプレイヤーがする選択には、選択肢の先で何を見ることができるのか見に行くという意味合いが強い。プレイヤーが選んでいるのは正しい選択肢ではなく、どちらの選択肢の先を見たいかである。
 実際には、CPUユニットの行動アルゴリズムまで解析するようなプレイをすることは稀で、CRPGの戦闘といえどある程度情報は不足するし、ADVといえどトゥルーエンド狙いの正解(トゥルーエンドに価値を置く場合)があるので、解のあるなしに明確な区別は引けないけれども。
 複数人プレイのボードゲームや麻雀などでは、まず、ある程度(数分位)自分ひとりで考えられる問題があり、その次に、情報が不足していて「さてどうなるでしょうか? やってみましょー!」な処理が交互に行われる。つまり、自分の手番が来るまでの待ち時間を一人遊び的な「解のある問題」を考えることで潰し、情報不足(他人の持ち札や心の動き)でわからない「解のない問題」の選択肢は、自分の手番に「わからん! ええもう、これでどうだ!?」と選ぶ。こうして回っていくのがボードゲームである。

ラーのMMORPG

 ドイツゲーのなかでも、競りゲーはMMORPGの狩りシステムに組み込みやすいと考えられる。現在たとえばファイナルファンタジー11では、狩りにおける獲物の奪い合いのゲームシステムは、順番待ちという形での時間投資、あるいはpop直後の最初の一撃を誰が叩き込むかの反応力/位置取り勝負になっている。この部分に、ラー(RA;ライナー・クニツィアReiner Knizia作)のシステムを導入すると、
※最初に攻撃を叩き込んだキャラクター/パーティのみが、当該モンスターからexpおよびlootを得られる(FF11同様)
※基本的にモンスターはすべてpassiveであり、攻撃を受けるまでおとなしく群れている

競り用の数字マーカー   =   mpを大量消費して広い範囲のモンスターを全体攻撃する。1匹だけ狙い撃ちなどはできず、貯まっているモンスターをまとめて相手にせざるをえない。まずこれを当ててからでないとキツい、というぐらいの威力がある*bm
ナイルとか文化とかのチット   =   pop(スポーン)するモンスターが落とすloot。各モンスターから何をlootできるかは、レーダー画面など閲覧性の高いインターフェイスで常時確認可。#印のものは街に持ち帰れるが、@印のものは使い捨てでかつその狩りが終わったら除去され、持ち越せない

ナイルチット   =   砂金#。重く、アイテム欄を圧迫する
洪水チット   =   魔法のふいご@。砂金を製錬して軽くし、持ち運びやすくする
文化チット   =   ゲート@。街に帰還する際の時間節約用。同一効果ながら5つ種類があり、5種類か同種3つを集めるとボーナスアイテム#がもらえる
建築物チット   =   宝石#。8種類あり、同種を多数個集めるか、種類を多種類揃えるとボーナス#
ファラオチット   =   勲章@。モンスターから得るexpの量にボーナス/ペナルティがつく。その狩場に入ってからの時間あたり勲章獲得個数が、(a)その狩場でトップなら+10% (b)ボトムなら-5%
神チット   =   魔法の矢@。モンスターを(範囲攻撃でなしに)一匹だけ釣れる
金貨チット   =   弱くてexpの高いモンスター#
災害チット   =   強くてlootのないモンスター
ラーチット   =   モンスターが活性化する。エフェクト発生後10秒で、狩場にいたキャラクター/パーティに襲いかかってくる(この場合範囲攻撃魔法を当てていないので戦闘バランスは非常にきつくなる)

※狩場にモンスターが一定限度まで貯まったら、それ以上popしなくなる。それでも誰も範囲攻撃魔法を撃たない場合、活性化して襲いかかってくる
※狩場にいる他のキャラクター/パーティに、今どれだけmpがあり、今現在どのlootをどれだけ稼いでいるのか、閲覧性の高いインターフェイスで常に確認可
[bm] 競り用の数字マーカー/範囲攻撃魔法
 これがこの競り狩りシステムの要である。この範囲攻撃魔法は数回しか使えず、使うタイミングを自分の懐事情、および狩場にいる他のキャラクター/パーティの懐事情と相談しながら決めていくところに、このシステムの楽しさがある。
 バランス調整に利用すべき要素は、範囲攻撃魔法のダメージ量、消費mp量、モンスターのpop速度、expおよびlootの量、モンスターの群れ方。

MMORPGと犯罪と労働と魂

 Britannia詐欺案内所
 ひどい話もあったもんだ。
 面白い話だ、と思う人もいるかもしれない。現実世界では禁じられている詐欺やそれに類する行為、それらを物理法則としては制限せず、各自の判断に任せてロールプレイさせる、それでこそ洋ゲーだ、UOだ、と。
 しかしそうではないのだ。
 人間が時間をたくさんつっこんでしまったものは、もはや仮想のものとしては扱えなくなる。数百マンアワーの結晶物としての貨幣・アイテム・不動産を盤上のゲーム内資源として弄ぶゲームデザインは、誤っている。詐欺を試みる側にとっては、それは大きな知的興奮をそそられ挑み甲斐のある優れたゲームシステムであろうが、詐欺を試みられる側にとっては、それは一々他人を疑い細かく認証手段を怠らないという面倒で不快な作業であって、ゲームになっていない。つまり一般のギャンブルのような対称性はなく、参加者全員の快楽量合計が負となる。実際、詐欺師だけを無人島に招待して詐欺師社会の詐欺大会を開催します、と言ったら彼らは来ないだろう。互い同士で遊んでも楽しくないのだ。
 ゲームというのは、互いにゲームトークンを駆使して互いのゲーム内の資源を「いかにもそれらが大きな価値を持つかのように」奪い合って結果を出すものである(ある視点からすれば、ゲームシステムとは、ゲーム内資源に架空の価値を持たせるように組み上げられた構造である)。ゲーム終了時の結果には、現実の価値を賭けてもよい。しかしゲーム内の資源の価値はあくまで仮想であって、現実の人間の時間を結晶させた入魂のしろものではいけない*ante*soul。ここの認識が甘いから「ゲーム内の金銭で目くじら立てて大人気ない」とか「ロールプレイに対する姿勢の違いだってことをわかってほしい」とかぬるいことを言い出すのだ。リネージュで稼いだ金はモノポリーで稼いだ金とはぜんぜん違うのだ。

 より根本的な部分に議論を移せば、現在のMMORPGの大きな魅力となっているのは、疎外されない労働(マルクス用語)としてのmob狩りシステムである。われわれが食うために日々行っている労働は、資本家のおっさんが売りさばくためのものを作っているのであり、生産物と自分とのあいだに個人的関係というものがなくて寂しくなる。これぞわが生産物と胸をはれるものを作りたい、だから若者は映画監督なり漫画家なりといったクリエイターを志望し、需要と供給の関係により才能のある人材が安く手に入ってしまうので労働条件がやくざになってしまう(ゲーム業界残酷物語 ソリッドウェブ)のだが、それは余談として、MMORPGの労働はその点でまさにいにしえの狩りであって、個人〜家族程度のごく小規模な(分業化も集約化もされていない)形態で行われる。
 日の出とともにひとり武器を持って出かけ、夕暮れに一日の獲物を数える。自分で計画を立て、自己の資本を投資し、自分が実行し、稼ぎは自分のものである。これは楽しい。人々はMMORPGの世界において、現実世界で失われていくこうした労働を楽しんでいるのである。
 多くのMMORPGにおいては、労働の手段も労働の成果もともに、キャラクターのレベル・能力値・スキルである。生産の手段および成果の大部がキャラクターに属していて他者に譲渡・貸与・委任できない*cap。ここにこそ、労働の疎外を阻むMMORPGの強みがある*lab。そしてこれらはアカウントに付属しており、かなり高いセキュリティに守られているので、トラブルを起こしにくい。
 ところがリネージュやUOでは、ZEL付きの強化武具や不動産など、キャラクター外の財貨に労働の成果が結晶してしまう。これがシステムをその根幹で脆弱にしているのである。

 プレイヤーに関して言えば、詐欺師は道義に外れたことをしており、僕は非難する。彼らは自分の一定量の快楽のために他人の莫大な快楽量を犠牲にしている。
 ゲーム制作者・運営者に関して言えば、まずキャラクターの能力値を主軸に選び、財貨の価値の低いシステムを作ったほうが無難である*gen。あえてなおZELや不動産といった財貨をシステムに組み込むリスクを冒すなら、それらを守るセキュリティが必要だ。彼らには現実世界の国家の政府と同質の責務がある。
 そしてこの両者は、互いに「システムがそれを許すのだから」「プレイヤーの行為は彼自身の選択で」と責任を転嫁しあわず、自分が何をやってるのか認識すべきだ。


[ante] ゲーム内資源は現実の価値を持ってはいけない
 たとえば、Magic: the Gatheringにおいてアンティ(デッキの中の1枚をランダムにその対戦の賭札とすること)が行われない理由はここにある。それを入手するのに費やした金銭・労力・時間(=アンティに負けて奪われた際のコスト)を計算に入れてデッキを構成する、というゲーム性は、現実に片足をつっこんでしまうのでゲームにならず、楽しめないのである。
 ただし、競馬の当外や麻雀の点棒のような資源は、現実の金銭に変換することができる。これらの資源はゲームシステムの最外郭に位置しており、各参加者の間で対称に、いわば「入り口で揃う」からだ。
 参考:クロフォードのゲームデザイン論の安全性

[soul] 魂入りのものを粗脆な器に入れてはいけない
 悲劇の例:まいにちあゆみ17歳内迷える子羊たちなど

[cap] 生産手段を他者に譲渡・貸与・委任できない
 現実世界では、工場の機械設備や大規模店舗など、生産手段が、そこに働く労働者から切り離されて存在しており、しかも巨大になるほど効率がよくなる傾向がある。したがって大きな資本を持つ人間(資本家。大金持ちのおっさん。べつに、萌え萌えの旧華族推理マニア令嬢でもよろしい)がそうした生産手段を用意し(投資)、労働者を雇って生産活動を委任し(雇用)、できたものを売り、ある程度のピンハネをして給料を払い(搾取)、そのピンハネぶんを貯めていって次の、より大きな投資をする、という現象が安定する。ちなみにピンハネぶんを貯めて投資の拡大を行っていかないと、その資本家の資本は他の資本家のそれにくらべて相対的に小さくなっていき、やがて舞台から消えてしまう(資本家の競争)ので、舞台に残っている資本家はピンハネする資本家であり、人類の生産力は増加していく。舞台に立っているおっさんたちは地球が持つ資源の利用の効率とか、環境の悪化による将来の災禍とか、そういったものを気にしてらんない(共有地の悲劇)ので、明日は温室となれ砂漠となれ・わが亡き後に温暖化きたれてなもんで、人類の未来は太く短くなる一方である(が、そういうことに眼をつぶって忘れられる人材でないと舞台に残れない)。京都議定書とかの規制(世界規模でいっせいに適用するところがコツ。共有地の悲劇を避けやすい)でビシバシ縛っていけば、細く長く効率よく、うまくすると小惑星帯や、へたすると他星系へ進出するまで、人類が存続できるかもしれんが……
 何の話だったっけ。

[lab] 他者に妨害されない労働
 スタンドアローンなコンピューターRPGの主システムは、自分以外に知的存在のいない環境での戦闘の反復による拡大再生産過程であると考えることができる。一般にCRPGは、他人に邪魔されない労働、他者に妨害されない労働を、その大きな魅力にしている。
 参考:リアルな経済活動が生まれつつあるオンラインゲームの世界 Jason Whiting

[gen] 制作者の創世力
 UOをその極とするリアルライフシミュレーション志向は、現実世界の楽しくない現象を再現する危険を持つ。思うに、せっかく神にも近い創世の権力を持っているのに、現実を延長して電脳網のなかに持ち込んで何になる。現実をモニタの向こう側に拡大するのではなく、モニタの向こう側の異質なシステムを現実世界に付け加えるのが、芸というものではないか。
 現実世界のわれわれはなぜ、法律だの警察だの裁判所だの道徳の時間だのを作り、それらをいちいち人力で運営しているのか? それは、運営する面倒くささを上回るだけの面倒くさいトラブルが、放置したときに発生するからだ。楽しくてやっているわけではない。


余談1 労働を介しての現実の侵食

 別の視点からこの話を考えてみる。労働を介して仮想世界内のなにかにプレイヤーの「魂が入ってしまい」、ゲームなんだから・遊びなんだからと二束三文無頓着に扱えなくなってしまう。あるいは、現実がモニタの向こう側に拡大され、痴話喧嘩やストーキングや詐欺といった愉快でない現象が発生して、それらを笑って済ませられなくなる。この「人間の時間の結晶化現象」は、ゲームにとってかなり厄介なものだ。とすると、労働を排除したMMORPGがつくれるか、という疑問が生まれてくる。
 ……無理かな。


余談2 面白い話だ派の反論とそれへの反論

1)家詐欺ごとき日本円数万円で済む程度の怪我だ。take it easy!
 easyじゃねえー! そりゃあ、RMTで家一軒壱万円だ二万円だとか言ってますよ。でもそれは楽しみながら積み立てた財貨だから楽しみぶん安く売買されてるわけで、ちまちまユニット切断したボードSLGをパクられて「チット未切断品のほうが市場価格高いだろ? ほらよ表示価格の9800円」とか言われて済むわけないのです。

2)裏切りの生じうる環境で信頼関係が築かれればその価値は大きい
 武田鉄也もそんなことを言ってたけど、それ以外の選択肢を選べるときに、なぜわざわざ人を試さにゃならんのだ。悪の海の中に善を求めるっちゃ格好いいのだが、あんまり幸せに通じる人生姿勢じゃないと思う。
 もっとも、UOのゲームデザイン自体に、そのような「試す神」みたいな傲慢な、志の高い、いかにも先進気鋭の洋ゲー根性がうかがえる。

3)好き嫌いの問題であって、選択肢の幅の一つとしてあってよい
 問題は、詐欺ゲームを遊びたいプレイヤー(詐欺師)と遊びたくないプレイヤー(堅気)との混浴にある。詐欺ゲームは、集団に堅気が含まれていないとできない。労働は詐欺師抜きででき、詐欺師抜きのほうができる。これは寄生関係であり、堅気はそんな選択肢のほうに行かないから、理論上詐欺ゲームは発生しない。発生するのは、堅気がシステムを(あるいは自分の志向を)理解するまでにある程度の期間があるからだ。そのような選択肢は一種の陥穽である。


余談3 詐欺ゲーム

 UOは変装や偽名などのフィーチャーを実装し、詐欺ゲームを、というか一般に犯罪ゲームを実現しようと試みたわけだが、これは堅気プレイヤーの労働行為を保護どころか窃盗教唆するデザインであり、失敗した(フェルッカからトラメルへの移行が起きた)。
 いや、移行までの一定期間、(一方的な)成功を収めた、と考えるべきか……
 オフラインのソロプレイゲームではPOSTALやGTAなどで犯罪ゲームが成功しているが、ソロプレイ詐欺ゲームの構築にはまがりなりとも知性の再現が必要であり、難しそうだ。


余談4 「こんなのに引っかかるやつが阿呆なのだ」

 一般になにか状況を用意した側と、その状況で失敗した側との二者のいずれに責任を帰するかという問題は、綱引きで考えられる。一方が悪くないならもう一方が悪い。一方が悪いぶんだけもう一方が悪くない。あるスイッチに「誤操作危険!!専門家のみ!!」と書いておいたとして、それを素人が押して怪我をしたとき、設計者側にはほとんど責任がない。たとえその素人が日本語表記を読めない外国人だったとしても、!マークからして誰か日本人に読んでもらうまでは触らないという簡単な知恵ぐらい働くと、設計者側は期待していいからだ。
 しかし詐欺師と素人についてこれはあてはまらない。
 詐欺師が設計し用意する状況は、これぐらい簡単なのだから素人は誤らないだろう、と期待してつくる状況ではない。詐欺師は、これぐらい簡単でももしかしたら誤るかもしれないと期待して、その状況をつくるのだ。だからその結果について詐欺師は免責されない。誤った素人にも責任があるし、詐欺師にもある。つまり綱引きではない(綱引きモデル)。
 責任というのは、改善すべき点のことだ。その行動パターンを繰り返さず、改めよという指示だ。いつまでも簡単な誤りを繰り返されては(その人の身内が主に)困るから、簡単なことを間違える素人は責められる。同じく、たとえ簡単な状況であっても、いつまでも人の前に落とし穴を掘って回り続けられては困るから、詐欺師は責められる。問責や罪罰というものは二者間のゼロサムゲームではない。行動パターンの矯正手法だ。

理屈じみたゲーム話の目次へ

20020522 作成。
20020607 タイトル変更。「カルメンな世界/MMORPGにおける死」を追加。
20020619 「和を尊んでみる」を追加。
20020627 「腕輪と首飾り/社会学でGO」を追加。
20021208 「パーティハントと矛盾と恥と」を追加。
20021208 「カタンのMMORPG」を追加。
20030423 「RPGに共有はない」を追加。
20030511 「リセットタイマーと行動指針」を追加。
20030511 「スケジューリングと、その要素としての他プレイヤー」を追加。
20030728 「パーティ戦闘のヤバさ」を追加。
20030822 「パーティ戦闘のヤバさ」大幅加筆。
20031105 「ラーのMMORPG」を追加。
20031113 「MMORPGと犯罪と労働と魂」を追加。
20041125 「MMORPGと犯罪と労働と魂」余談4「こんなのに引っかかる奴が阿呆なのだ」を追加。