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ソロプレイゲームとしての傑作RTS、コマンド&コンカー

 Command & ConquerはソロプレイゲームとしてのRTSであり、CPU側は戦力拡張をほとんど行わず、生産によって一定戦力がプールされたらその分の戦力でプレイヤー陣地に攻撃してくる。この逐次投入なアルゴリズムによってC&Cは
序盤の小戦力による陣地防御  適切な防御陣地造成の楽しみ  "TowerDefense"  ロシア軍  敵の流れを読みそれに沿ってキルゾーンを構築する
中盤のやや拮抗した陣地拡張  野戦軍の編成の楽しみ(閲兵)  視界を広げていく楽しみ(マッピング)  運動戦  ドイツ軍  接敵箇所の選定と野戦
終盤の大戦力による攻城戦  破壊の喜び  インフレした戦力で敵陣を押し潰す  アメリカ軍  ベトナムを空爆で真平らにして原始時代に戻してやる
という数段階の楽しみを実現している。これは対戦ゲームとしてのRTSとはかなり質を異にする構造であり、外見が似ているからこそ、注意を要する。C&Cは生産力拡張・戦力拡張スピードを競ったり、戦力ピークを選んで会敵したりするゲームではないのだ。
 シリーズ最新作であるCommand & Conquer Genaralsはこの点でソロプレイゲームとして失敗している。ソロキャンペーンのCPUが、対人対戦におけるプレイヤーの初期条件&アルゴリズムで動くパターンが多く、生産力・戦力拡張スピードを競わなくてはならない(資源地帯確保スピードを競ったりさせられる)。あるいは陣地防御・陣地拡張が省かれていて攻城戦だけさせられたりする。これはAge of Empires系のソロキャンペーンが辛いことの理由と同じで、ソロプレイゲームが提供すべき「敵」はいわば、「まず防御戦をすれば勝てて、つぎに野戦をすれば勝てて、最後に攻城戦をすれば勝てる」相手なのであり、時系列に沿ったトータルな戦略で読み合いや後の先をやりあって戦わなければならない拮抗した相手ではないのだ。
 ソロキャンペーンは毎回新たな未知のマップで戦われるのだから、敵は、固定的な戦略をマップにあわせてある程度アレンジすることで倒せるものであるほうがよい。敵のわずかなオーダーの違いに敏感に反応し戦略を根本転換して勝ちに行く対人的ゲーム性は、ソロキャンペーンに適合しない。

ウォークラフト3とスタークラフトのゲーム性のメモ

・ユニットの生残性の重要さ
 これ重要。
 War3ではユニットが死ぬと相手ヒーローのexpになるので、「敵陣にユニットを流して」すり潰して勝つというゲームにできない。建物とユニットを交換すると後者不利であり、潰すならユニットを潰して頭数差をつけつつexpももらっとくべき。よって野戦戦力が多いほうが相手の野戦戦力の捕捉を狙うかたちになる。敵野戦軍に決戦を挑み、これを撃破せよ。クラウゼヴィッツが聞いたら喜ぶだろう……か?

・序中盤の収入が一定
 SCではワーカーをいくつ作るかによって幅があった。家建てる必要があるので効率漸減して一定範囲内に収まるが、仕掛けや進化のタイミング・戦力ピークがずれて、そこに読み合いがあった。War3ではワーカー5人確定なので序中盤の戦略が固定的。

・兵士小屋の値段
 War3の小屋のほうが高い。SCでは、接敵→片方半壊して逃げ帰る→本陣に攻め寄せられるまでの間にアンチ作る→拮抗・カウンター な展開が起きやすい。のだが、War3だと一種類の小屋とか、一軒ずつの小屋しか建ててないことが多い。アンチユニットによる後の先がしにくく、本陣まで追っかけられたときに、策源地からの距離と防御施設頼みになる。なお、後の先のしにくさは、野戦で負けたときに相手にexp渡すのでヒーローレベルによる差がつくことにもよる。

・スキル開発がtier依存
 SCでは呪文使いのスキル開発が、範囲攻撃呪文、合体呪文、最大MPアップ、とたとえば3つあって、どこからでも開発できたのだが、War3ではtier(「町の中心」のレベル)2から押せるボタン(2個目のスキルgetとHP+40とMP+100)とtier3から押せるボタン(3個目のスキルgetとHP+40とMP+100)のふたつしかなく、その順番で押していくしかない。このため、相手の編成を見てピーキーに取るか、せっかく作るんだから全部押すか、という選択ができなくなっている。

・アーマー値の処理
 細かい話。
 WarCraft3ではアーマー値の処理にけったいな計算式を使い、つまるところ、アーマー値+1がHPの6%に相当するということになっている。アーマー値20ならHPが+120%されて、本来のHPが100の場合、220相当になるということ。StarCraftでは、ダメージ=攻撃力-アーマー値であったので、8弾頭同時攻撃で初期ユニットをどろどろ溶かしていた制空戦闘機のミサイルが、装甲フルアップの宇宙戦艦にはまるきり通用せず1ドットも削れないという現象がみられ、自然で理解しやすい攻撃/防御の技術競争関係が生成されていたのだが、後発のWarCraftIIIでこれを捨てたことになる。謎。

・視界の押し合い
 RTSでは視界は重要である。SCでは、安価なユニットでの視界の取り合い押し合いがある。マリーンを3人送ってオーバーロードを追い返したり、ズィーロットを1匹ずつ撒いておいたりする。あまり撒いて各個撃破されるのは癪だが、視界確保は重要であり、どこの偵察にどれだけのユニットを派遣するかは地形と情報と人格的な、深い駆け引きとなる。だがWar3では高価格、food圧迫、exp献上の三要素により最下級戦闘ユニットですら前線派遣しづらい。殴られて除去されるようなユニットを偵察/妨害に使わない、つまり、food0・exp0・攻撃力0・インビジブルなユニット(というか召喚物)が単体で視界を確保することが多い。よって、互いに偵察ユニットを押したり潰したりというやりとりが発生しない。双方が偵察に送った農民がその途中で出会っても、一方が殴りに行きもう一方が追い払われるということはなく、すれ違うだけ。なぜなら農民で農民を殴りに行っても殺すまで2分とかかかり意味がない。よっていったん視界が確保されたら、主力部隊がそこを通りかかるまでほぼ除去されないという感じ。

・ユニットの数と価値
 前項で書いたような問題はユニットの数の少なさに起因する。SCはユニット数100とかまで達するがWar3では50体ほどをfood上限としている。これはポリゴングラフィックで魅せようという方針にも因るだろうが、一般ユニットにスキルを持たせているためでもあろう。だから、スキルを使えるユニットは、グループでMPを共有して消費できるってことにして、夫々の持つMP自体は減らせばいいんじゃないだろうか?

 micro操作が上手くできた瞬間の気持ちよさはWar3が圧倒的。

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