人狼/全台詞


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2000.9.9 ver1.0 色々不確かな点を抱えつつもアップ。
2000.9.21 ver1.1 当て字や送り仮名を多少変更。
2002.12.26 ver2.0 佐藤信さんのご指摘を元に数箇所修正。


あの決定的な敗戦から十数年。占領軍統治下の混迷からようやく抜け出し、国際社会への復帰を図るべく高度経済成長の名の下に強行された急速な経済再編成がその実を結びつつある一方で、この国は多くの病根を抱えていた
強引な経済政策が生み出した失業者の群れとその都市流入によるスラム化を温床とした凶悪犯罪の激増、わけても武装闘争を掲げた反政府勢力の急速な台頭はこれに対処すべき自治体警察の能力を越えて深刻な社会不安を醸成(?)していた
自衛隊の治安出動を回避し合わせて国家警察への昇格を目論む自治警内部の動きを牽制すべく政府は第三の道を選択した
首都圏にその活動範囲を限定しつつ独自の権限と強力な戦力を保有する国家公安委員会直属(?)の実動部隊
首都圏治安警察機構、通称首都警の誕生がそれである
迅速な機動力と強大な打撃力によって治安の番人としての栄誉を独占し、第三の武装集団として急速に勢力を拡大した首都警
しかし当面の敵であった反政府勢力が非合法化を含む様々な立法措置によって解体し離合集散の末にセクトと呼ばれる都市ゲリラを生み出すに及んで、状況は大きく転回することになる
首都警の中核をなす特機隊とセクトの武力衝突は熾烈(?)をきわめ、時に市街戦の様相を呈することもしばしばであり、激しい世論の指弾を浴びた
経済的繁栄へ期待を向けて流れ始めた世相の中、特機隊はその宿敵であるセクトと共に急速にその孤立を深めつつあった
強化服と重火器で武装しケルベロスの俗称と共に武闘路線をひた走り続けた特機隊の精鋭達もその歴史的使命を終え、時代は彼等に新たな、そして最終的な役割を与えようとしていた
(?)直ちに解散しなさい
上空警戒中(?)のホイシュレッケ12より移動(?)。赤坂四号交差点を占拠中の群衆約三千。騒擾状況を呈しつつあり、警戒を要す。繰り返す、赤坂四号交差点を占拠中の群衆約三千。騒擾状況
(?)
救護班、急げ
ただのエンビンじゃねえぞ(?)
どうやって持ち込みやがったんだ。会場警備(?)の奴等、昼寝でもしてたのか
特製のモロトフカクテルだ、いくらでもあるぞ。奴等に叩き付けろ
渋谷方面の部隊もこちらに向けて展開中だ
怯むな
お祖母ちゃんへの土産だ
阻止線を後退させて車両を前面に押し出せ(?)
放水車何をしている。集中放水して投擲距離に接近させるな
渋谷方面に展開中の管区第二機動隊より入電。代々木公園へ向かっていた地下反戦系(?)の部隊約二千が、進路を変更して南下中です
合流させるな。ツェー中隊(?)を急派して三号三叉路に阻止線を張れ
見え透いた陽動だ。今後詰めの部隊を失えば、前面阻止線(?)を突破された時に潰走するしかなくなる
しかし、もしこの場に筋金入りの二千が合流すれば
火に油か。見ろ、あの燃え方。マグネシウムやナパームジェリーを混合した特殊火炎瓶だ
あの中にセクトのメンバーが?
とはいえ、全体としては烏合の衆。撃って出れば一度の突撃で蹴散らせる。検挙の網に数人でも引っ掛かれば儲物だが、時機を失えば、突撃の効果も薄れる
出ますか
自治警との共同警備とはいえ、この場の指揮権は彼等にある。お手並み拝見といくさ
お土産よ。頃合を見て使って
投擲爆弾だ
全員検挙。突っ込め
検挙
三ブロック、後退だ。急げ
この先から上がって、三号三叉路に回れ
行くぞ
荷を捨てて上がれ
武器を捨てて投降せよ
止せ
何故だ
何をしている、伏。撃て
(?)
で、負傷の程度は
目の前で爆発したんだ。運が良くても重傷は免れん所だが、強化装甲服のお陰だな。軽い打撲と脳震盪。そう聞いている
それより、昨夜の件だ。その為にこうして出向いて来たんだ
どうせまた自治警の抗議だろう
共同警備の申し合わせに対する重大な侵犯行為だとな。何故事前に通告しておかなかった
情報が洩れるのを承知でか
自分の縄張の足の下で勝手をされた上にこの有様だ。連中が怒るのも無理はない
なあ安仁屋。共同警備体制の推進なんて無駄は止めたらどうだ。所詮連中とは水と油。合わせてみても、濁って浮き上がるのは俺達だけだ
だとしてもだ。今我々の置かれた情況を考えてみろ。足を引こうとする連中にとって、批判の対象にされがちなお前達特機は格好の標的なんだ
と言われても、戦闘ともなれば不測の事態は避けられんさ。連中の抗議は、筋違いも良い所だ
爆発が不可抗力や偶発事故であるとするならな
どういう事だ、室戸
昨夜の特機の戦闘行動、それ自体が問題なのではない。重要なのは完全な制圧に失敗し、ゲリラの自爆を許した事にある
(?)
半田君。何といったかな
伏一貴巡査。養成課程を修了して、九月に突入小隊に配属されています
新人には酷だったかもしれんな。自爆したゲリラは未成年の、それも女だったそうじゃないか
武器や爆発物の運搬に女や未成年者を使う。奴等の常套手段だ
お前等公安部の言う赤頭巾か
俺達が相手にしているのは気紛な犯罪者でもなければ狂暴さが取柄のごろんぼうでもない。目的の為ならどんな汚い真似でも平然とこなすだけの強靭な意志力を持ち、しかも犯罪者としての負目なんぞこれっぽっちも持たない、そういう連中なんだ
言われる迄もない
どのような事情があれ、制圧を躊躇った隊員の責任は明白だ。ただし事実関係の調査及び隊員の処罰は、隊内に査問委員会を召集してこれにあたる。それでいいな
正規の手続を踏んでな
何だそれは
隊内には我々の知らぬ諜報だか粛正だかの部隊もあると聞く
何を馬鹿な
人狼とかいう奴か
まあ、単なる噂だろうがな
一々気分の悪い奴だ。で安仁屋
良いだろう、お前に任そう。事前通告の件は突っ撥ねるにせよ、処罰することで最低限あちらの顔も立つ
くれぐれも、自重してくれよ
さて
送らせよう。最近は要人を狙ったテロも多発しているからな
いや、止めておこう。特機隊の護衛付では却って目立ちそうだ
違いない
車を裏へ回してくれ
所属官姓名を
警備部特殊機甲大隊第二中隊第三突入小隊所属、前衛隊員伏一貴巡査であります
二日前の二月九日当日はどのような任務に就いていたか
都心部の地下溝内にゲリラが出没するとの有力な情報に基づいて、二二〇〇時に警戒出動命令があり、第六、第七小隊、及び第一中隊の第一、第二突入小隊、第五小隊と共に出動、G十三号ランプから二十三号幹線水路に入りました
出動に際し上官からどのような指示を受けたか
地下溝内を利用した武器爆発物等の集積移動を阻止し、敵の部隊と遭遇した場合はこれを徹底的に叩けと
作戦時の溝内の状況はどうだったか
溝内へ入って二十分程経過した時点で先行した第一中隊が敵の兵站部隊と接触。第六小隊と共に援護の為現場へ急行しました
その途上で誰と遭遇したか
何故だ
何故
何故撃たなかった
判りません
伏一貴巡査。現在の任を解き、別命ある迄隊員養成学校での再訓練を命じる
以上
おい、今晩、またやろうぜ
お前も好きだよな。金の方は大丈夫なのか
まあな
でも櫛田の奴が倒れちまったし、メンバーどうする
そうだ、村山がやるだろ
ようし、負けた奴は明日の休暇の飲み代だ
どうせお前だよ
知ってるよな。捜査資料を外部に提供するには部長の許可が必要で、その室戸部長は反特機勢力の急先鋒だ。ここで俺がお前と会っている事自体も査問の対象になりかねんのだぜ
済まん
まあいいさ。どうせ部内じゃ冷飯喰らいの養成校上がりだ。今更上司の顔色を窺っても始まらんし、それに同期で唯一人の友人の達てのお願いって奴だしな
生き残った男の証言を頼りに洗ったんだが、身元の割り出しには豪く苦労したそうだ。遺体といっても、顔も判らん有様だったらしいな
で、どうする心算なんだ
目の前で自爆されたんだ。お前の気持も分からんじゃあないが、あの娘の死に責任を感じてるんだとしたらとんだお笑いだ。俺やお前には理解出来なくとも、奴等には奴等の理屈があるのさ。その理屈に従って人も殺すし、時に自分の命を絶つ事もある。俺やお前がそうである様にな
状況が一つ違えば吹き飛んでいたのはお前だったかもしれないんだ
撃つ心算だった

俺は撃つ心算だった
だったら何故撃たなかった
忘れちまえよ。情に流されちゃこんな商売出来やしない。生きる術のない手負いの獣になんざ、なる事はないんだ
組織名クルツハールこと、阿川七生。都下の高校在学時に学内の民主化闘争に参加。停学処分二回、後、除籍。半年後に反戦系の地区細胞を経て入党。直ちに組織の兵站部門、通称ヤコブソン機関で非合法活動に従事。二月九日夜、反レーベンスラウム闘争の統一デモに戦術介入したセクトの戦闘集団と共に第二十三幹線水路内で特機第二中隊の包囲を受け、所持していた投擲爆弾に点火して爆死。逮捕歴なし
組織の方でしたらどうぞお引取り下さい。この子はもう、貴方達の仲間ではないんですから
いえ、自分は
済みませんね
いえ、良いんですよ
何故俺を責めない
お互いにそういう立場だったのだから、貴方の責任じゃないわ
それに、貴方は撃たなかったって話だし
悲しくない訳じゃないのよ。何だか未だ実感が湧かないの。二人姉妹だし、仲も良かった。でも昔から少し違ってたのね、私達。あの子はとっても純粋で真直ぐな所があって、その癖強情で言う事聞かない所もあって。でもね、お母さんきっとあの子の事、可愛がってた気がするの
お姉ちゃんなんて何だか損だって、いつも思ってたのかも
お墓に上げる心算で持って来たんだけど、貴方に上げるわ
どうして
どうしてって、良いじゃない、持っててよ
でも

気持良さそう
この川も海へ繋がってるよね。何処か知らない遠い海に
暗視調整、良し。吸気弁、作動良し
妙な気分だな
ああ。体は軽いのに視界が重い
潜水夫になった気分だな
無駄口を叩くな。状況開始
昔一人の女の子がいて、母親に七年も会っていませんでした
女の子は鉄の服を着せられて、絶えずこう言い聞かされていました
服が擦り切れたら、きっと母さんへ会いに行けるよ
女の子は必死に服を壁へ擦り付けて、破こうとしました
とうとう服が破け、ミルクとパン、それにチーズとバターを少し貰って、母親の元へ帰る事になった女の子は、森の中で狼に出会い、何を持っているのかと聞かれました
ミルクとパン、それにチーズとバターを少しと答えると、狼は分けてくれないかと言い、母さんへのお土産が要るからと女の子は断りました
狼はピンの道と針の道の内どちらから行くのかと聞き、女の子がピンの道を行くと答えると、自分は針の道を急ぎ、女の子の母親を食べてしまいました
やがて女の子は家に着きました
母さん、開けて
戸を押してご覧。鍵は掛かっていないよ。狼がそう応えました
状況終了
この馬鹿が
暗視装置の弱点については事前に警告した筈だったな
自分が今何処に居るか、室内の状況は
ドアの向うに何が予想されるか
建物内の空間の把握が好い加減だから、事態の急変に対処出来んのだ
ようしお前、強化服についての訓示を言ってみろ
じゃあお前だ
強化服は着装時の死角を体で憶え互いに援護し合って初めてその能力を最大限に発揮する物である
判っているなら何故やらん
たった一人の過ちが全員を死に至らしめるんだぞ
装備を過信するな
頭を使え
で、どう思います
何の話だ
何故撃たなかったのか。伏の話ですよ
此処にはペイント弾なんて結構な物はない。いかなる状況であれ撃たれるよりは撃つべきだと、そう体に覚え込ませる為にこれを使っているんじゃなかったんですか
ギアを着けていても骨まで堪える。初めてこれを喰らった時は、痛さで朝迄眠れなかった
それが嫌で公安部へ行ったんじゃなかったのか
所詮は彼奴も人間って事ですかね
さあな。だがどんなに痛め付けられても、獣として生きる事に安らぎを感じる者もいる
彼奴がそうだと
まあ、判るまで繰り返すさ
お前も妙な男だな。同期の期待を裏切って公安部へ進んだ癖に、特機で落ち零れた奴を気遣って古巣へやって来る
そんな男の相手をしてくれる教官も十分に変わってると思いますがねえ
女でも出来たかな

伏だよ。近頃外出が多いらしい
何か聞いているか
いえ
どちらにせよ人と係りを持った獣の物語には必ず不幸な結末が訪れる
獣には獣の物語があるのさ
十分後に進入経路を変えて再開だ
全員が生き残るまで何度でもやるぞ
ねえ、あの角
彼処って前何があったんだっけ。憶えてる
そういうもんよね。皆すぐに忘れちゃうのよ。ううん、始めから記憶なんてしてないのかもしれない
一日経って更地になっちゃえば、始めから無いのと同じ。人間だって死んじゃえばそうかもしれないわ。何だか淋しいって思わない
子供の頃よく
此処に連れて来て貰ったの。でも、もっとずっと広いと思ってたのに
あ、そうだ
来て
ね。結構遠く迄見えるでしょう
ああ
此処にこうして居ると、あたしも何時かきっと、この街を抜け出せるんじゃないかって思うの
そして何処か遠くの知らない街で、別の人間になっちゃうのよ
別の人間
そう。今迄の事は全部忘れちゃって、違う人になるのよ
貴方は何故特機隊に入ったの
上手く言えないけど、俺にとってやっと見付けた居場所だったのかもしれない
大切な場所
多分ね
そっか。貴方は見付けたのね
わーい、わーい
痛て

僕、大丈夫
あ。ああ
ああ。行っちゃったね
怪我はない
貴方は来られないわ
待ってくれ。聞きたい事があるんだ
貴方は来られないわ
来てはいけないの
止めろ
止めろ
止めろ
もしもし
はい
はい
で、ピンの道を通って家へ帰った女の子は、どうなったんだい
戸を押してご覧。鍵は掛かっていないよ。狼がそう応えました
それでも戸が開かないので、女の子は穴を潜って家の中へ入りました
お母さん、お腹がぺこぺこよ
戸棚に肉があるからお上がり
それは、狼が殺した母親の肉でした
棚の上に大きな猫が来て、こう言いました
お前が食べているのは母さんの肉だよ
母さん。棚の上に猫が居て、私が母さんの肉を食べている、そう言ってるわ
嘘に決まってるさ。そんな猫には、木靴を投げてやるがいい
肉を食べた女の子は、喉が渇いてきました
母さん、私、喉が渇いたわ
鍋の中の葡萄酒をお飲み
すると、小鳥が飛んで来て、煙突にとまって言いました
お前が飲んでいるのは母さんの血だよ。母さんの血を飲んでるんだよ
母さん。煙突に小鳥がとまって、私が母さんの血を飲んでいる、そう言ってるわ
そんな鳥には、頭巾を投げてやるがいい
肉を食べ、葡萄酒を飲み終えた女の子は、母親に向かって言いました
母さん、何だかとっても眠くなったわ
こっちへ来て、少しお休み
どうだろう。考えて貰えたかな
我々自身も大きなリスクを冒しているんだ。この情勢下に警備部の人間が首都警の幹部と密かに会合を重ねるという事がどういう意味を持つか
重ねて言うが、我々は首都警その物を葬ろうとする本庁の連中とはその考え方に於いて一線を画して行動している心算だ。創設時の経緯はともかく、ここ数年首都警がこの国の治安の維持に果して来た役割については十分理解しているし、それも君が組織した公安部の活動に負う所が大きいと考えている
我々は君と君の公安部を高く評価しているのだ
首都の治安が沈静化の方向を辿り始めたとはいえ、反政府勢力の力はまだまだ侮れん物がある。地下に潜行したことで寧ろその組織力が強化されつつあることは、頻発の傾向にある彼等の破壊活動の例からも明らかだ
我々を取り巻く情況は、大きく変わりつつあるのだ
武力による正面対決を避け、公安活動を中心とする治安体制を速やかに確立せねばならんその為には組織の統合、指揮系統の一本化こそが緊急の課題なのだが
首都警潰しに狂奔する総監部の連中には、その事が判らんのだ
本庁内部に於いて多数とは言えぬながらも、今の治安を預かり国家の将来を真に憂う者達の中に我々の勢力は着実に浸透しつつある
これに君の公安部、そして安仁屋部長の政治力が合流すれば
首都警との組織的併合を以て内部機構の大幅な刷新に充てる。非公式ながら公安委員数人の内諾も取り付けた
ある条件付でな
特機隊か
どう思う
口先だけの下らん連中です。監察部辺りに一睨みされれば尻尾を巻いて小屋に逃げ込む手合いだ
公安委員も本庁に対する牽制の心算で言質を与えたんでしょう
そんな所だろうが、連中の情勢認識だけは正確だ
一つの小屋に二匹の犬は入らん。だが、二匹の犬のその血が必要なのだとしたら、番にすれば事は済む。何方の血筋が残るかは賭だがな
いくら力を誇ろうともその優れた血を残せなかった獣は、何れ滅びる。ある種の獣は群の長になった時、支配下の雌の子供を全て咬み殺すそうだが、時には組織も同じ事をやる
特機の友人を裏切るのは心が痛むか
どんな女だ
死んだ娘と同じ赤頭巾の一人で、ラングハール、本名、雨宮圭。前科はありませんが、逮捕歴数回の筋金入りのテロリストです。一課の網に掛かって落ちた所を引き取りました
その女を選んだ理由は
素性の良さと、顔立ちが、死んだ娘に良く似ていましたので
折を見て仕掛けろ。それから、人狼という組織の名を聞いた事があるか
確か、特機隊副長の半田が直々に組織した対諜報部隊で、特機内部へは勿論、本部や公安部に迄構成員を潜り込ませているとか
本当に存在するんですか、そんな組織が
まさかとは思うが、半田は占領統治時代、G2の要請で対敵諜報部を組織した経歴もある。何を考えているか分からん男だ。一応頭に入れておけ
現役の特機隊員と女テロリストの許されぬ関係、か。部長の奴泥臭い手を使いやがる。確かにこの手のスキャンダルは効果が大きいがな
何を考えている
お伽話の悪役は昔から狼と決まってるんだ。お前の裏切るのは、人間じゃない
そろそろ動き出しそうだな
奴は本当に使えるのか
獣として生きるしかない男でしょうから
女の子が着物を脱いで寝台へ近付くと、お母さんは頭巾を顔の方まで被って、奇妙な格好をして寝ていました
母さん、なんて大きな耳をしているの
だからお前の言う事が聞こえるのさ
母さん、なんて大きな目をしているの
これでなけりゃお前が良く見えやしないからさ
母さん、なんて大きな爪なの
これでなけりゃお前を上手く、掴めやしないからさ
母さん、なんて大きな歯をしているの
流石だな
だが、実戦で引き金を引けなきゃ、意味もないがな
どうかな
査問の対象になるんじゃなかったのか
とっくに諦めたさ
どうした
なに、この間は話が出来ずじまいだったしな。少し気になる事もあったんで寄ってみたんだが、止めとくわ
俺に関係があるのか
未だ詳しい事は分かっていないんだが、どうもお前を付け回している連中がいるらしい
俺を
まあ、こっちでも調べて見るが、何か気付いたら報せてくれ
ああ。そうするよ

気を付けろ
もしもし
あたし。昨日から変な男の人に付け回されて、今追われてるの。お願い、迎えに来て。場所は
01より03、04(?)。獲物が網に入った。殺すな。生捕りにするぞ(?)
一階のロビーだ
正面玄関を押さえろ
逃がすな
それは
本物を持たせる程あたしを信用しちゃいないわ
でも爆弾の受け渡し場所に夜の博物館を指定するなんて、公安も洒落た設定をすると思わない
増してその場で逮捕された犯人の片割が現役の特機隊員と来れば、マスコミが一斉に飛び付くわ
演じて見せるのは自治警だが、筋書を書いたのは首都警公安部、演出は、辺見か
其処迄知ってて、どうして
抜けるぞ
居たぞ
表の連中に連絡しろ
良いから乗れ
奴等だ
撃て
逃げられたそうです
女を拉致され、ご丁寧に車迄奪われて、現在所在不明。警備部を動員して非常線を張ってるそうですが、網に掛かるかどうか
やっぱり連中には荷が重かった様ですね
そんなに優秀な男だったのか
情緒面に難あり。ただし射撃、格闘技、ストーキング等、あらゆる戦闘技術に抜群の技量を有す。話しませんでしたっけ
作戦課から使える者を選んで連れて行け
保険を掛けといて正解でしたよ
辺見
もしあの男が人狼だったら
撃ちますよ。喉笛に喰らい付かれる前にね。俺は奴とは違う
現場より逃走した犯人は男女共に銃器で武装。発見次第射殺せよ。繰り返す、現場より
逃げないのか
手配中の車輌、未だ発見できません
免許証拝見します
これから何処へ行くの
暗い森へ
暗い森を抜けて、何処へ行くの
誰かの待つ家へ
誰が待ってるの
お母さん
お婆さん
それとも
もう一度、あの場所へ行ってみたいな
おう、ああ、何だよ、今日は豪く警察が、(?)警察が多いじゃないかよ(?)
おい何してる
何するんだよ、税金払ってるんだぞおいら(?)
(?)

何も聞かないのね
全部嘘だった。あの子も妹なんかじゃないし、貴方に会ったのも偶然じゃない
赤頭巾のメンバーだったのよ、私も。逮捕された後、首都警の公安部に連れてかれたわ
もう、どうでも良くなってたのね、私
どうなろうと構わないと思って、言われるままに引き受けたわ
考える事に疲れちゃってて、何も考えないようにしようって、自分に言聞かせて
なのに、貴方と会っていると、何故だか自分で自分を傷付けてしまう
貴方も淋しいんだって思うと、つい夢を見てしまう
何でだろう
このまま
いや、何でもないよ
このまま二人で、何処か遠くへ行っちゃおうか。誰も知らない所迄、逃げちゃうのよ
ね、そうしよ

それは無理だよ
未だやらなければいけない事がある
でも、このままじゃ二人共
済まない
寒いね
我々は当初から、伏が査問を受けた頃から、彼を監視下に置いていた
君が彼と接触した時点で、君の身辺も洗わせて貰ったよ
それじゃ
始めから承知の上で泳がせていたのさ
諜報戦とはこういった物さ。常に先を読み、先手を打った方が優位に立つ
彼等は特機隊の失墜を計るべく彼を犠牲の羊に選んだ心算だったのだろうが、罠に掛かったのは彼等自身だったのさ
スキャンダルを怖れなければならなくなったのは彼等であって、我々ではない。君というカードが我々の手にある限り、公安部も暫くの間は特機隊に迂闊な手出しは出来ないという訳さ
俺が奴等の立場でも保険は掛けるさ。尤も、この手を辺見に教えたのは、俺なんだがな
もう判ったろう。此処に居る男は特機隊の隊員であると共に常に我々の組織のメンバーだった。そう、養成校で私の指導を受けていた生徒だった頃から
じゃあ、貴方も始めから
そうなの
あれが本当の彼の姿だ
我々は犬の皮を被った人間じゃない。人の皮を被った、狼なのさ
人狼
良し、行け
猟師が狼を退治して終わるのは、人間が書いた物語の中だけなんだ
仕方ないじゃない。どう仕様もなかったのよ
一緒に行きたかったけど、貴方は行く事の出来ない人だったんだもの
だったらせめて
せめて一緒に死んでしまえば、そうすれば
そうすれば、お互いの心に、貴方の心に
私が留まって居られる
そう思ったのよ
誰かに
誰かに憶えていて貰いたかった
待ち伏せだ。引け
仲間が居るぞ
此方だ
矢張り、そうだったか、伏
俺が諭す迄もなく、お前は正しく
喰らえ
何故だ
何故あの時、お前は撃たなかった
何が違うと言うのだ。俺と、何が
お前だって人間じゃねえか

彼女は公安部を抑える為の持ちカードじゃなかったんですか
重要なのは、彼女が我々の手中にあると連中が信じている事であって、現実の彼女の生死は問題じゃない
それなら何故
奪還されるリスクを冒さず、しかもその死亡を敵に確認させない為にも、取るべき方法は一つしかない
いいか。彼女はその生存の可能性を留保し続ける為に、今此処で死ぬしかないのだ。そんな事は修羅場を踏んできた彼女自身先刻承知の事だ
群を離れて人の元へ行きたくなったか
だがな。人の皮を被って人と隣り合わせに生きていても、狼が人になれる訳じゃない
自分の手で運んだ爆弾で多くの命を奪ったあの女の罪が決して消えない様にな
俺は一体
どうしたら良いか教えて欲しいか
人と係りを持った獣の物語に結末を着けろ。お前が獣でいられる間に
女の子が着物を脱いで寝台へ近付くと、お母さんは頭巾を顔の方まで被って、奇妙な格好をして寝ていました
母さん、なんて大きな耳をしているの
母さん、なんて大きな目をしているの
母さん、なんて大きな爪なの
母さん、なんて大きな歯をしているの
そして狼は、赤頭巾を食べた