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Part 2, 黒薔薇篇

Episode #14

(opening)

草時:こんな陽の届かない地の底で、よくもそのバラは花をつけるね。
馬宮:僕の黒バラは闇を吸い込んでいるから。ねえ先輩、あの桐生生徒会長が、このところ、ずうっと休んでいるんだってさ。だから、最近の学園は静かなんだね。
草時:いいことだよ。すべからく学園とは、平和な学び舎であってしかるべきだ。

タイトル:黒薔薇の少年たち

アンシー:では、失礼します。

ウテナ:ただいま、チュチュ。今日は土曜だから、クラスで騒いでたんだ。...お前のご主人も来ればよかったのに。全くつきあい悪いよな。

ウテナ:ただいま姫宮!あれ、いないのか....。パーティの残りものだよ。あー疲れた!そういえば姫宮、土曜の夜はあんまり見かけないな。...チュチュ、おまえ何か知らないか?
アンシー:あ、ウテナさま。
ウテナ:お帰り。どこ行ってたの?
アンシー:学校です。
ウテナ:あっそう。そういえば週末の夜は、よくいなくなるけど、何かあるの?
アンシー:ええ....週に一度くらいは、会うことにしようと言われてますので.....。
ウテナ:誰に?
アンシー:お兄さまに。
ウテナ:ふうん....え!君に、お兄さんなんているの?

ウテナ:失礼しまーす!あれ、間違えちゃった。
アンシー:いえ、ここでいいんです。
ウテナ:え?じゃここが理事長室?こりゃ掃除するのも大変だねえ。大きいなあ。これが君のお兄さん?
アンシー:いいえ、プラネタリウムの投影機です。
ウテナ:あれ?
アンシー:ウテナさま?
ウテナ:しーっ。姫宮やばいよ、マジだよ、お楽しみ中だよ。じゃましないうちに帰ろ帰ろ。
暁生:初めまして、鳳暁生です。
ウテナ:すみません天上ウテナです。すみません。
暁生:いえいえようこそいらっしゃいました。妹が友達を紹介してくれたのは初めてだから、嬉しいです。
ウテナ:まさか、姫宮のお兄さんが、鳳学園の?。
暁生:いえ、僕は理事長代行です。本当の理事長は、香苗さんのお父様。
香苗:父は、暁生さんのこと、とても気に入っていて、私が高等部を卒業したら、すぐにも式を挙げるつもりなんです。
ウテナ:それは、おめでとうございます.....。
暁生:いや、まだ早いと何度も言ったんですが....
ウテナ:理事長室がこんな風になってるなんて知りませんでした。
暁生:本当は空を見て過ごしているのが、僕には性に合ってるんですよ。
ウテナ:星がお好きなんですね。
香苗:もう普通じゃないくらい。この設備があるから、うちの養子になったんだなんて、陰口を言われているくらいなんです。昨日もまた、ここに泊まったんですって。
暁生:星はいいですよ。望遠鏡からのぞくと、見慣れた星も、みんなの知らない素顔を見せてくれますからね。
香苗:私のことも、たまには思い出してね。
暁生:彗星を見つけたら、君の名を付けてあげるよ。
香苗:もう、しようのないお兄さんだこと。
暁生:僕はここに来て間もないけれど、ただ一つ分かることがある。この学園の生徒はみんな自由で、向学心があって、何より争いがない。でしょ?
ウテナ:ずっと.....こうだといいんですけどね。
香苗:鳳学園に、悪いことなんて起こらないわよ。
アンシー:では香苗さん、失礼します。
香苗:ねえ、私のことはお姉さんて呼んでいいのよ。もうすぐ私は、あなたの本当のお姉さんになるんだから。ね?
アンシー:はい.....!

教授A:いやありがとう、御影君。君の論文のおかげだ。我々の研究室が、諮問機関に選ばれたよ。
草時:僕の論文じゃなくて、あれは先生の論文でしょ。
教授Bああ君、例のものを早く。
教授A:先日妻が温泉に行ってね。君に食べてもらえと(言って)聞かないんだ。回りくどいことをしてすまない。少ないが、これを納めてほしいんだ。
草時:その手のお気遣いは無用です。それより、いずれ僕の方から、先生方にお願いをすることもあるでしょう。その時こそよろしく。
教授A:もちろん、我々にできることなら、何でも協力させてもらうよ。

教授A:さすがに、御影ゼミナールを主催するカリスマ高校生、すごい貫禄だ。肝が冷えたよ。
教授B:御影ゼミ、通称「黒薔薇会」。某省のキャリアすらメンバーにしてるというのも、あながち噂だけじゃないだろうね。
教授A:彼の恩恵を受けてるんだから、我々大学部の教員だって、ひとごとじゃないさ。
教授B:まったく。天才高校生、御影草時か....。

草時:そうそう、この前の話は考えてくれたかい?
幹:え、ええ...。
草時:待ちこがれたよ。それで?
幹:せっかく誘っていただいて恐縮なんですが、やはり僕は、御影先輩のゼミには、ふさわしくないと思います。
草時:そう....君のような優秀な知性こそ、まさに僕の求めるものなんだが....まあ、そうか。君がそう言うのなら仕方がない。気が変わったら言ってくれ。後悔はさせないから。
幹:ありがとうございます。では....。

アンシー:ウテナさま、ありがとうございます。
ウテナ:え、何が?
アンシー:お兄さまに私の秘密を黙っていてくれて。
ウテナ:ああ、そのことか。
アンシー:私、あの方に迷惑がかかるようなことは、知られたくないんです。バラの花嫁や、決闘の掟のことや...
ウテナ:分かってるよ。お兄さんには、ボクらの秘密は伏せておいた方がいい。香苗さんもいい人そうだし、巻き込むのはかわいそうだ。さ、帰ろう。
幹:あれ、天上先輩、姫宮さん。
ウテナ:ミッキー。
アンシー:どうもどうも。
幹:今日はお休みでしょう?
ウテナ:姫宮のお兄さんのところに、遊びに行ってたんだ。
幹:そうですか、理事長にね。
ウテナ:ミッキーこそ、何してんの?
幹:ええ、ちょっとここの資料室で、調べものを。
ウテナ:へえ。お休みなのに勉強好きだね。僕はこんなところがあるのも知らなかったよ。
幹:知らないんですか、根室記念館。いわく付きの建物ですよ。
ウテナ:いわく付き?
幹:昔、ここで百人の少年が、生き埋めになったそうです。

草時:ねえ馬宮。きみには、バラの花嫁になる資格があるそうだよ。
馬宮:それを言うなら、花婿でしょ。僕は男の子だよ。
草時:君には、花嫁の方が似合ってるよ。....必ず君を、本物のバラの花嫁にする。そしてディオスの力を手に入れ、永遠の秘密を僕らのものにするんだ。
馬宮:先輩が、そう言うなら.....。
草時:大丈夫。僕らのことは、世界の果ても認めているさ。....だが、そのためには天上ウテナを倒し、姫宮アンシーを手に入れ、そして彼女を殺さなければな。
馬宮:うん....強いデュエリストが必要だね。

香苗:すいません、今日、面会の約束をしてるんですが。

(eyecatch)

香苗:高等部三年、Aクラス、鳳香苗です。
草時:では、始めて下さい。
香苗:....来年の春、卒業したら、すぐに結婚する予定です。相手は、理事長である父がすすめてくれました。.....彼は、彼はやさしくて、子供っぽいところもあるけど、私よりずっと大人で、暖かく見守っていてくれているんです。彼のためなら、なんだってしてあげたい。心の底からそう思うんです。ただ、ただ....
草時:深く、もっと深く。
香苗:....ただ、彼には妹がいて、その妹が、私、どうしても好きになれないんです。こんなことがありました。私が大事にしていたスカーフを、使ってみなさいよって貸してあげたら、あの子、ありがとうって言って、それでメガネを拭きだしちゃったんです。私、もうびっくりしちゃって、それはメガネ拭きじゃないのよっていったら、あの子、何も言わずに、こっちを見て、ただ笑ってた。その目を見て、私、ぞっとしたんです。だって、まるで、宇宙人みたいだったから......父が、父が病気になったのも、あの疫病神が出入りするようになってからのような気がして、しょうがないんです。私、これ以上あの子の前で笑っていられる自信がありません。これでも、好きになろうと努力したんです。でも....だめなんです....どうしても、ダメなんです....どうしても....!
草時:わかりました。あなたは世界を革命するしかないでしょう。あなたの進む道は用意してあります。

香苗:ここは....
草時:聖地。百人のデュエリストが眠る、神聖な場所です。この部屋の闇は、世界の果てへと続いています。....学籍番号、Dの13番。見て下さい。
香苗:!!
草時:このバラの刻印、ほら、黒いでしょう?持ち主が死ぬと、この刻印はこんな風に染まってしまうんです。僕は、黒い方が美しいと思うけれど....。
香苗:!!!
馬宮:もう動けないよ。君は、僕の黒バラに選ばれたんだから。これが君の新たな心臓、新たな命だ。世界の果てに咲き誇るバラ、君に!
香苗:ああああああああああああああああああ!
草時:黒い、バラの刻印を。

若葉:なーんか、おもしろいことないかなあ
ウテナ:土曜日にパーティやったじゃん。
若葉:そうじゃなくってさ、もっと刺激的な何かよ。うちの学園って平和よねえもう....なんか、あっと驚くような事件でも起こらないかな。
影絵少女C:号外、号外、号外!ついに、ついに、ついに、ついに恐れていたものが来ちゃったのね。人より早い?お姉ちゃん、ませてるから。はい、アーンして。アーン。どうします、この親不知。アーン。ああ、どうすればいいのか!
ウテナ:抜けば。

ウテナ:これは....誰だ?
香苗:黒バラにかけて誓う。決闘を勝ち抜き、バラの花嫁に死を!
ウテナ:かな...香苗さん! どうして?
アンシー:あれは、いつもの香苗さんじゃありません!
香苗:これが私の本当の姿。私の中で眠っていた、もう一人の私。この黒バラのある限り、私はこれから、ウソの私を演じなくてすむ。
ウテナ:あの黒バラのせいか...。
香苗:さあ、天上ウテナ、剣を抜け!さもなくば、バラの花嫁はいただく。

ウテナ:世界を、革命する力を!

香苗:物足りないな....もっと本気出してくれよ。
ウテナ:香苗さん...さっき言ってたな....黒バラに誓って、決闘を勝ちぬいて?
香苗:バラの花嫁に死を!
ウテナ:そう...よく分かったよ。なら手加減なしだ!
香苗:なに!ああっ!ああああああああああああ、ううううっ....

草時:あれがデュエリスト、天上ウテナか。なるほど、世界の果てが期待するだけのことはある。心を凍結させて作っただけの、間に合わせのデュエリストでは、彼女は破れないな....。

アンシー:じゃ、ウテナさま、....ウテナさま?これから外出しますので。
ウテナ:ああ、今日はお兄さんに会う日だったね。いってらっしゃい。あ、ああ姫宮、その後、香苗さんの具合はどう?
アンシー:ええ、もうすっかり元気で。
ウテナ:よかった...。でも、本当に彼女、何も覚えてないの?
アンシー:はい。決闘前のことは全く。
ウテナ:そう...だったら事情の説明は無理だね。とにかく、君のお姉さんになる人にケガさせちゃって、申し訳なく思ってるよ。
アンシー:あまり気になさらないで。ウテナさまのせいじゃありません。
ウテナ:ありがとう。引き留めて悪かった。じゃあ、お兄さんによろしく。....あれ、チュチュいたんだ?お前は一緒に行かないの?

暁生:おいで、アンシー。....一週間、寂しかったかい?
アンシー:はい、お兄さま。

(ending)
(preview)
ウテナ:ミッキーの妹、薫梢ちゃん。へえーそっくり、本当に双子なんだ。いいなあ兄妹がいるって。ボクは一人っ子だから、羨ましいよ。
アンシー:ええ。お兄さまがいるのって、いいですよ。
ウテナ:でも、黒バラを持つデュエリストのことが気になるよ。
アンシー:誰かが心を操ってるみたいですね。
ウテナ:梢ちゃん!どうしたんだその姿は...!まさか、君も....。次回、少女革命ウテナ、「その梢が指す風景」
アンシー:絶対運命、黙示録。

Episode #15

(opening)

幹:!?
生徒:何だ、どうしたの?
梢:ううん、別に。それで、トシコったら、今日もまたアツシのところに行ったらしいのよ。(笑い)だったら最初から市原に行けばいいのにね。(笑い)....それでね、....
教師:ミッキー、これからピアノのレッスンかい?
幹:はい。
教師:うん。君には期待してるんだ。頑張ってくれ。
幹:はい。あの、お体の方は、もうよろしんですか?
教師:うん?ああ。君にも、迷惑かけたねえ。
幹:いいえ。
教師:実は迷惑ついでに、ちょっと相談があるんだよミッキー。
生徒:?ん、どうした?おい....

タイトル:その梢が指す風景

七実:お兄さま、今日もお休みになったんですか?....せめて、お食事くらいはきちんと.....。お兄さま....大丈夫よお兄さま、生徒会はこの私が。

馬宮:生徒会だ....生徒会メンバー、彼らの心なら、天上ウテナを倒せる、強い剣に結晶するかも知れない。僕の黒バラが、そう言ってる。
草時:だが、彼らはすでに決闘で敗れている。心の弱い者たちだ。
馬宮:自分の心を、自由に使いこなせる者は少ない。特に、年若い彼らには、難しいだろう。むしろ、彼らの心の剣を、誰か別の者にゆだねた方がいいね。その方が強いデュエリストが生まれるかも知れない。
草時:わかった...。君をバラの花嫁にするためだ。考えてみよう。だが心の剣を引き抜くには、彼らの心をつかみとれる手が必要だ。

生徒:梢!ねえ梢、あんたまた彼氏変えたでしょ?
梢:別に変えてないよ。増やしただけ。
生徒達:うそー!言ういいなあ!
梢:はげめよ、君たちも。
生徒:だったらさあ、あんたの兄貴、紹介してよ。
梢:いいけど.....あいつ、最近好きな子いるみたいだよ。

幹:...落ち着け幹。姫宮さん、明日僕と一緒にピアノを弾いてくれませんか....よし。
ウテナ:やあ、ミッキー。
幹:!?あ、いや、僕はたまたま通りかかっただけで、別にあやしい者じゃ....え、えーと、あー何をいってるんだ!....あは、ははは...
ウテナ:姫宮!ミッキーが来たよ。
幹:あ、いや....、だから、別に姫宮さんに用があって来たわけじゃなくて...たまたま、ここを通りかかった...
アンシー:どうもどうも。

幹:あ、あの....
アンシー:はい?
幹:チュウチュウってかわいいですね。
ウテナ:チュウチュウじゃなくってチュチュだよ。チュウチュウじゃまるでネズミじゃないか。
アンシー:あら、でも私、チュウチュウっていうのも好きです。
幹:え、姫宮さん、チュウチュウ好きなんですか?
アンシー:好きです。
幹:僕も好きです。気が合いますね。
...間....
幹:すみません、僕、なんか変なこといってますね。あのー。
アンシー:はい?
ウテナ:がんばれ、もう一声。
幹:姫宮さん、よかったら明日の放課後、僕と一緒にピアノを弾いてくれませんか?
ウテナ:うんうん。
幹:一度....僕の音楽の先生を紹介したいんです。姫宮さんの演奏を聴けば、先生も絶対驚くと思うんです....だから....お願いします!

梢:何か用でしょうか?
樹璃:先週、あの先生が階段から落ちたのは、事故じゃなく、誰かが突き落としたって噂だった。本人も、事故か、誰かに突き落とされたのか、確信がなかったらしいが....でも昨夜、今度は事故じゃすまないって、はっきり電話で脅されたらしい。
梢:さすが有栖川先輩。何でもご存じなんですね。
樹璃:知らないこともあるさ。たとえば君が、彼を憎む理由とかね。
梢:だって、あの男、いつも.....
樹璃:いつも?
梢:幹を汚すやつは、絶対許さない。

幹:ミルクセーキ作ったけど、飲む?
梢:そんな甘いもの、私が飲むわけないじゃん。

ウテナ:?....そっか、君が梢ちゃんなんだ。ミッキーから聞いてるよ。へえ、ホントに双子なんだ。君が男装すれば、ミッキーと区別つかないな。
梢:私と幹は、似てないわ。あのメガネの人、なんて名前だっけ?
ウテナ:姫宮アンシー、だけど?彼女がどうか?....あ!

(eyecatch)

七実:卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。自由の部屋と、自由の籠。空の広さを教えずに、彼らは雛を可愛がる。世界の籠を破壊せよ!
七実:なによ、何か文句ある?
樹璃:....なんにも。
幹:なんにも。
七実:今日から私がお兄さまの代わりよ。資格はあるんだから、なんか文句ある?
樹璃:なんにも。
幹:なんにも。けど....
七実:けど?
樹璃:このところ、世界の果てから手紙が来ないな。

暁生:へえ、アンシーを好きな男の子がいるんですか。
ウテナ:やっぱ気になります?
暁生:そりゃ兄妹ですから。でも学生生活を楽しんでくれているなら、安心です。君のような子も、妹と仲良くしてくれているし。
ウテナ:暁生さんって、ずいぶん妹思いなんですね。
暁生:そう?
ウテナ:ボクには兄妹がいないから、よく分からないけど、妹にとってお兄さんって、どういう存在なんですか?...なんです?お月様?
暁生:普段は気にもしないし、役にも立たない。でも、時々見上げて、心安らかになったりする。
幹:姫宮さん、まだかな....少し早く来すぎたかも知れない。

梢:見たわね。何よ、何か言いたいんでしょう?
アンシー:何かって?
(ストップウォッチ)
幹:あ、姫宮さん、
アンシー:ごめんなさい、温室の方も回ってきたものだから....
幹:そんな。姫宮さんが来てくれただけで、嬉しいです。

梢:今日、面会の約束をしてるんだけど。
男の子:うかがってます。どうぞ。

梢:中等部一年、Bクラス、薫梢です。
草時:では始めて下さい。
梢:....幹は、私の双子の兄なんです。小さい頃から、私のこと、とても大事にしてくれてて.....最近は平気な顔を装ってるけど、私がケガしたり、汚れたりすると、幹は心の中でとっても傷つくの。私のことで、心がいっぱいになるの。だから私、いつも幹が嫌がるような男と、わざとつきあうの。でも.....
草時:深く、もっと深く。
梢:幹の関心が、どんどんあの女の方に行く。私から離れていく.....
草時:わかりました。あなたは世界を革命するしかないでしょう。あなたの進む道は用意してあります。


幹:梢!?梢、いや、何するんだよ! その指輪!?
梢:いいでしょう?幹とお揃いよ。そしてこれが、世界の果てに咲き誇るバラ。
幹:あ、あああ!!
(草時:それが君の新たな力だ。さあ、遠慮なく手にするがいい!)

ウテナ:なに?
若葉:期末テストの時間割。いやだいやだといっても、来るべきものは来るのよね....やだ、英語と数学、同じ日なんだ。
ウテナ:!
影絵少女C:号外!号外!号外!...えーホットコーヒーにサンドイッチ、冷たいビールはいかがですか。....ガタンゴトン、ゴトンゴトン。....えーホットコーヒーにサンドイッチ、冷たいビールはいかがですか。.....この車両には僕しか乗ってないのに。ガタンゴトン、ゴトンゴトン。うるさい、僕は何も飲みたくない、何も食べたくないんだ!
ウテナ:じゃ、無視すれば。
影絵少女C:ああ、すいません、コーヒーとサンドイッチ。

ウテナ:!梢ちゃんか....。
梢:この黒バラにかけて誓う。この決闘に勝ち、バラの花嫁に死を!
ウテナ:やはり、あの黒バラのせいかな?
アンシー:かもしれません。
梢:さあ天上ウテナ、剣を抜け!さもなくば、バラの花嫁はいただく!
ウテナ:あの構え、ミッキーの構えと同じだ。

ウテナ:世界を、革命する力を!

ウテナ:しっかりしろ、君は自分を見失ってるんだ。
梢:アンシーを殺す。....みんな消えてなくなれ。私と幹以外は、すべて醜いんだから!

ウテナ:なんて剣の力だ!
梢:それが幹の輝き、....終わりだ!
アンシー:ウテナさま!
ウテナ:叫ぶ
梢:あっ!
ウテナ:お兄ちゃんか.....

幹:ああ、梢....。
草時:失敗か。だが一人目だ。他にも生徒会メンバーはいる。

幹:あの黒いバラの刻印は、どうしたの?
梢:バラの刻印って、何?
幹:いや、なんでもないよ。
梢:私、ホントに今日、貧血で倒れたの?
幹:ああ。今日はゆっくりお休み。
梢:ねえ、ミルクセーキ作って。

ウテナ:あって当たり前、普段は気にもしない、あまり役にも立たない.....でも、時々見上げて、心安らかになる、か.....。

暁生:おいで、アンシー。....今夜も、心安らかにしてあげよう。
アンシー:チュウチュウ.....

(ending)
(preview)
アンシー:ねえウテナさま、カウベルってご存じですか?
ウテナ:カウベル?よく分かんないけど、普段はあまり使わないものだよね?
アンシー:あら七実さん、カウベルがとってもお似合いですね。
ウテナ:えっ七実!?その格好はどうしたんだ?まるで君は人間じゃなく、その、なんというか....次回、少女革命ウテナ、「幸せのカウベル」
アンシー:絶対運命、黙示録。
ウテナ:で結局、カウベルって何?

Episode #16

(opening)

ナレーション:あれは、昔々のお話です。あるところに、お父様とお母様を亡くし、深い悲しみにくれる、幼いお姫様がいました。そんなお姫様の前に、白馬に乗った、旅の王子様が現れます。りりしい姿、やさしい微笑み。王子様はお姫様を、バラの香りで包み込むと、そっと涙をぬぐってくれたのでした。
ディオス:「たった一人で、深い悲しみに耐える小さな君、その強さ、気高さを、どうか大人になっても失わないで。今日の思い出にこれを」
ウテナ:「私たち、また会えるわよね」
ディオス:「その指輪が、君を僕のところへ導くだろう」
ナレーション:王子様がくれた指輪は、やはり、engage ringだったのでしょうか。...それはいいとして、お姫様は、王子様にあこがれるあまり、自分も王子様になる決意をしてしまったのです。でもいいの?ホントにそれで??

タイトル:幸せのカウベル

TV:はーいみなさん、どうもありがとう。さあスティーブ、次に紹介するのは、超一流ブランド、セバスチャンディオールのペンダントだよ。え?何だってロジャー?ほーら、見てごらん、この輝き....
ウテナ:うーん。姫宮まだ見てるの?
アンシー:はい、もう寝ます。
ウテナ:じゃあ、お休み。
アンシー:お休みなさい。.....かわいい!

生徒:まあキレイですわ七実様!
生徒:素敵なドレス!
七実:おじさまに買っていただいたの。なーに大したことなくってよ。
生徒:まあキレイですわ七実様!
生徒:素敵な指輪!
生徒:素敵な靴!
生徒:素敵な耳飾り!
生徒:さすが七実様!最高の着こなしですう!
七実:なーに大したことなくってよ。おほほほほほほ。(ふん、これくらいで驚いてもらっちゃ困るわ。今夜のパーティは、私のとっておきをお披露目するためにあるんですから!この20カラットのダイヤモンドをいただいたスペシャルペンダント、これを見せればたちどころに....うふふふふふ。)?
生徒達:樹璃さんよ!キレーイ!
幹:樹璃さん、そのネックレスは?
樹璃:ソラリッチのデザイナーが、是非私にと。
幹:へえ。ソラリッチって、超一流ブランドじゃないですか!
樹璃:ちょっとモデルをしただけなんだけど、困っちゃったね。
幹:じゃあもしかして、世界にたった一つのネックレスなんですか、すごいなあ!
樹璃:七実
七実:あーら樹璃先輩、こんばんわ。
樹璃:どうしたんだ、急にパーティなんか開いたりして?
幹:そろそろ宴もたけなわだし、教えてくれてもいいだろう?
七実:そ、それは.....
生徒:七実様〜....先ほど届いたものです。
七実:はあ?何これ?
幹:こ、この紋章は?mmm...これはセバスチャンディオール。
七実:セバスチャンディオールって?
幹:セバスチャンディオール、イギリス王室御用達の最高級ブランドです。僕も初めて見ました。
七実:最高級ブランド....!?これさえあれば一発逆転、樹璃の鼻をあかしてやれるわ!
ふふふふ、そうだったわね。さてみなさん、今日お集まりいただいたのは、たった今届いた私のすばらしいコレクションをお見せするため。さあ、早速ご覧いただきましょう!
全員:おおお!
七実:さあ、ご覧あれ!
幹:.....カウベル!?
樹璃:セバスチャンディオールの、....カウベル。
七実:うっふふふふ、驚いているようね。この輝き、この気品、最高級のものが似合うのは、この私、私だけなのよ。ふふふふ.....(笑い)

生徒達:おはよう、おはよう.....
七実:おはよう。
生徒:お、おはよう。
ウテナ:変だ。
幹:ですよねー。
ウテナ:どうしたの?何かに頭をぶつけたとか?
幹:さあ。
ウテナ:だってさ、大体カウベルってのは.....だろ?
幹:ですよねー。
ウテナ:わかってたら本当のことを教えてあげなよ。
幹:できると思いますか、今更?
七実:おはよう。
ウテナ:傷口拡げてるもんなあ自分で、思いっきり。
幹:もうビロビロです。
教師:七実さん、その首にぶら下げているものは何ですか?
七実:カウベルですわ!
教師:カウベル?
七実:いいお天気ですこと。
教師:カウベルって......よね?
ウテナ:本人が気づくのを待つしかないか.....。

生徒:ねえ見た見た?七実さんのカウベル?
生徒:ええ見た見た。ねーえ。
生徒:ちょっとすごいわよね?
生徒:すごいなんてもんじゃないわよ。
生徒:さすが七実さんよねー。
生徒:あそこまでできるのは彼女しかいないわ。

七実:(うっふふふふふふ。噂になってる。この私のファッションセンスに、みんなが注目しているようよ。)
石蕗:あの七実さん、あの、首重くないですか?....僕、ずっと思ってたんですけど、そのカウベル、やっぱり変....
七実:石蕗!
石蕗:はい?
七実:私のこの、王室御用達セバスチャンディオールのカウベルのどこが変だっていうの?
凡庸な少年たち:うんうん。
七実:石蕗にはまだ、大人のファッションセンスが理解できないのね。
石蕗:大人の....ファッションセンス?
凡庸な少年たち:うんうん。
ウテナ:変だよ、変だよカウベルなんて。ブランドものだかなんだか知らないけど、カウベルってのは元々牛が.....
七実:おーっほほほほ。これだからオトコオンナは困るのよ。おしゃれの何たるかも知らないんだから。
ウテナ:何だって!?誰がオトコオンナだ!
七実:前から言おう言おうと思ってたけど、あんたのその学生服って、とっても変よ。
ウテナ:ボ、ボクのこの服をそんなカウベルと一緒にするな!
七実:私だってやーよ。そんなセンスのかけらもない服と一緒にされるのは。
ウテナ:何だって!もう一回言ってみろ!
七実:何度でも言ってやりますとも!大体あんたはね、足がぶっといのよ!
石蕗:はあ困ったな....

(eyecatch)

七実:はっ、ここは....?お兄さま!?
冬芽:目が覚めたかい?
七実:元気になったのねお兄さま、お部屋から出てきてくれたのね!?
冬芽:もういいんだよ、七実、もういいんだ。....さあ七実、朝ご飯だよ。
七実:え?どうしたのお兄さま、私こんなの食べられない!
冬芽:いいから、たんとお食べ。これが最後の食事なんだから。
七実:は...?最後って.....?
冬芽:さようなら、七実。
七実:お兄さま、どうしたのお兄さま!
冬芽:さようなら、七実!
七実:お兄さま!お兄さま〜〜〜〜!
冬芽:さようなら、七実。
七実:お兄さま〜〜〜〜〜!
冬芽:いただきます。
七実:はっ!?.....夢?

生徒:ねえ見た?七実さんのカウベル。
生徒:え?まだ付けてるの?
生徒:目立つって言うか、なんて言うか。
生徒:ほんと根性あるわよね。
生徒:根性というか、ねばり強いのよ。
生徒:そうそう、今までだったら人の後ろに並ぶなんてしなかったもの。
生徒:そうだよね。
生徒:なんだか身のこなしが落ち着いたというか、ゆったりしてきたような。

石蕗:七実さん、また食べてるんですか?さっき食堂で食べたばっかりでしょう?
七実:もう、うるさいわねえ。私の勝手でしょう、もう。
石蕗:もう授業がはじまりますよ?
七実:わかってるわよ、もう。静かにしてよ、もう。
石蕗:七実さんってば!
七実:はーあ。なんだかもう、食べたらもう、眠くなっちゃった。石蕗、代返よろしく。
石蕗:あ、あの、僕初等部なんですけど。
七実:うるさいわね、もう。
石蕗:食べてすぐ横になると、牛になりますよ!
七実:うるさいのよ、もう。

七実:ねえねえ見て。
生徒:まあ、七実さまその髪飾りは?
七実:どう、似合う?
生徒:え、ええとっても。
七実:やだーもう。やっぱりそう思う?もう、とっても気に入っちゃって。

生徒達:ファイト、ファイト!
七実:ファイト、もう、ファイト、もう、ファイト、もう....
教師:おーい桐生、もっと速く走れ!
七実:わかってるわよもう!
教師:どうしたんだあいつ?やけにスローモーだなあ。

七実:もーう。やあねえもう。うるさいわねもう。なんなのよもう。しらないわよもう。もうもうもうもうもーう!!!モウ....モウ.....モウ....

(ノック音)
アンシー:石蕗君?
石蕗:大変なんです。七実さんが、七実さんが....お腹がすいたから、何か持ってこいって電話で呼ばれたんです。だけど七実さん、僕の持ってったものには手もつけずに、公園に.....!
ウテナ:で、ここで見失ったってわけ?
石蕗:そうです。
ウテナ:でも、誰もいないよ?
石蕗:おっかしいなあ。.....!?
七実:全くモウ、石蕗ったらモウ、私の好きなものもモウ、分からないなんてモウ、失礼しちゃうわモウ、モウ、モウ.....

影絵少女C:号外!号外!号外!...チュウチュウ、簡単です、猫の首に鈴を付ければいいんです。...チュウチュウ、おおネズ太郎、なんて頭がいいんじゃ。チュウチュウ、でも誰がいったい猫の首に鈴を付けるの?....チュウチュウ、それなら大丈夫、もうすでに猫の首に鈴は付いている。実はさっき、僕がこっそり付けてきたんです。チュウすばらしい。ネズ太郎さん、素敵でチュウ。猫のダンナ、ちゃんとウソの情報を流しておきましたぜ。みんなこれで今夜は安心してぐっすり眠ってますから、つかみ取りで食べ放題!だから約束通り、おいらだけは見逃してくださいね。ニャア!って猫さんちょっと、ああああ!パク、マグマグマグ...。
幹:自業自得ですよね。
ウテナ:確かに。

ウテナ:七実!そのカウベルを捨てろ!....捨てろ!
七実:うるさいわねえモウ。
ウテナ:君は、その首の鈴が本来何のためのものであるか、知っているのか?
七実:モーウ、セバスチャンディオールのカウベルでしょうモウ。
ウテナ:カウベルってのは本来牛の首に付ける鈴のことだ!
七実:何言ってるのモウ。
ウテナ:まわりをよく見てみろ!
七実:!.....え!?じゃ、じゃあこの王室御用達のセバスチャンディオールは...?
ウテナ:セバスチャンディオールじゃなくて、子牛ちゃんディオールだ。
七実:こ、子牛ちゃん....!?
ウテナ:君はカウベルの何たるかも知らずに、そのバカでかい鈴を首に付けて、得意になっていたわけさ。今の君は牛そのものだ!
七実:牛....?
ウテナ:すでにしてしまったことは仕方がない。今の君にできることは、身も心も牛になる前に、その鈴を捨てることだ!
七実:な、何言ってるのよモウ!私が牛になるはずないじゃないのモウ、驚かさないでモウ。冗談じゃないわモウ!
アンシー:ウテナさま、やっとできました!
ウテナ:何だこれ?
アンシー:セーターですわ。
ウテナ:ありがと。でも、ちょっと季節はずれだね...。
七実:!モウちょっとで猛烈に注目されるはずだったのに....なんか朦朧としてきたわ。妄想なのかしら?盲腸?それとも猛毒のヘビに咬まれたのかも?だれか、毛布持ってきて....
ウテナ:七実?
七実:モウ、モウ、モウ、.....モウ!
ウテナ:七実その姿は!
アンシー:怖い!
石蕗:な、七実さん!
アンシー:こっちにきます!
ウテナ:あ、分かった!この赤いセーターを見て、興奮してしまったんだ!
アンシー:まあ!
石蕗:天上さん、カウベルを!
ウテナ:分かってる。姫宮、逃げて!
アンシー:はい!
七実:モウ許さない!
ウテナ:そーれ!
石蕗:ウテナさん!
七実:モーウ!....モウダメ....。
アンシー:ウテナさま!

樹璃:哀れなものだな。ブランド品に魅入られた者の末路。
幹:樹璃さん、全然説得力ないです。だけど、誰があのカウベルを七実さんに送ったんだろう?
ウテナ:そっか、そのカウベルは姫宮のペットのものだったんだ。
アンシー:この子は、ナナミっていうんですよ。
ウテナ:ナナミ?ああ、それで郵便屋さんが間違えたのか。
アンシー:もうすぐ、この子に新しい鼻輪が届くんです。
ウテナ:鼻輪?

七実:みなさーん、おはようございます。
樹璃&幹:!?
七実:どう?似合うかしら?
樹璃&幹:うわあああああ!

(ending)
(preview)
ウテナ:有栖川先輩の幼なじみが転校してきたんだ。
アンシー:高槻枝織さんですね。
ウテナ:でもあの二人、仲がいいんだか悪いんだか。何があったか知らないけど、有栖川先輩、昔のことなんて許してあげればいいのに。
アンシー:ウテナさまって、本当に無邪気なんですね。
ウテナ:え?だって枝織さんは、先輩と仲良くしたいだけなんだろ?次回、少女革命ウテナ、「死の棘」
アンシー:絶対運命、黙示録。

Episode #17

(opening)

(枝織:奇跡を信じて、想いは届くと....。)

樹璃:君は残酷だ。奇跡なんてありはしない。

(枝織:こんな私を、あなたはきっと憎んでいますよね。)

樹璃:?...そう、憎んでいる....。

タイトル:死の棘

樹璃:次!
生徒達:すごいさすがキャプテン。トゥーシの時の動き、さすがだわ。
樹璃:次!
ウテナ:今の動き、剣が一段と冴えてる。先輩、また腕を上げたな。
樹璃:次!....隙だらけだぞ!君らしくないな。
幹:すいません。
樹璃:....?後は各自メニュー通り練習しておくように。
ウテナ:へえ有栖川先輩のお友達だったんですか。
枝織:ええ。高槻枝織っていうの。中等部まではこの学園にいたんだけれど、事情があってちょっと別のところに、ね。こっちには転入したばかりで、寮生活も今日からなの。出戻りですけど、どうかよろしくね。
ウテナ:いや、こちらこそ。
アンシー:この子もよろしく。
枝織:(笑い)よろしくね。
ウテナ:有栖川先輩とは、古いつきあいなんですか?
枝織:そうねえ。幼なじみと言うより、樹璃さんとはほとんど一緒に育ったようなものね。
ウテナ:へえ。
枝織:樹璃さんは、昔から素敵だった....。強くて、かっこよくて。
ウテナ:目に浮かぶようだなあ。
枝織:いつも私を守ってくれた。樹璃さんだけが私の友達。私が、心から信頼できるのは樹璃さんだけ。でも、私にはもう、そんな資格はない....。
ウテナ:枝織さん....?
枝織:あ、恥ずかしい....こんな話する気はなかったんだけど...。あたし、ルームメイトもいないから、また来てくれると嬉しいな。

馬宮:あ...
草時:気をつけろと言ったろう?ひときわ美しく咲くバラは、やはりひときわ危険な棘を持つ。
馬宮:あ....先輩。
草時:わざとやったな。
馬宮:(笑い)僕たちには、このバラの刺が必要なんでしょ?
草時:そうだな。
馬宮:誰よりも美しく、誰よりも危険なバラの刺なら、天上ウテナを倒せる。
草時:だが、どうやって棘を抜く?うかつに触れると、この通り...
馬宮:簡単だよ、バラには天敵の害虫がいる。
草時:虫の毒か....。効くかな?このバラに。
馬宮:仕掛けはできているよ。

七実:ふうん。すると君の妹が、君の中から剣を抜いたのですね?
幹:そうです。その時、妹は指に黒いバラの刻印をしていました。
七実:なるほど。君は報告書の中で、生徒会以外にバラの花嫁を狙う勢力があると示唆しているが....。
幹:はい、そうです。
七実:信じられない。
幹:これは現実です。しかも容易ならざる大敵です!
七実:それにしても、生徒会のメンバーともあろう者が、油断したものだねえ。
幹:それは....予想もしてなかったし....。
七実:ねえ、あんたがいつもやってるこれ、どういう意味?
幹:審問はもう終わりなのかい?
七実:ねえねえところでさあ、どんな気分だった?
幹:何がだよ?
七実:決まってるでしょう。やっぱり痛いの?
幹:(赤くなる)そ、そんなことより、問題は今後の対策だよ!樹璃さんはどう思います?樹璃さん?
樹璃:そ、そうだな....悪いが、今日は先に失礼させてもらうよ。

枝織:彼は、あのころから樹璃さんのことを一番想っていたようです。でも、あなたから彼を奪ってしまったこと、後悔していません。そんな私を、あなたはきっと憎んでいますよね。

枝織:樹璃さん...
樹璃:?
枝織:お話したいことがあるんですけど...待って!お願い樹璃さん!お願いです!

枝織:彼とは、結局別れました....。でも、私があなたから、強引に彼を奪ったという事実は消えません。許されることではありませんよね?だけど、あのころに戻れたらって、今でも思っています。....私ね、戻ってきたとき感じたんですよ。学園の中は、どこも思い出でいっぱいだなって。あのころは楽しかった。あたしと樹璃さんと彼と三人で...。
樹璃:話というのはそれだけか。ならば私はこれで。
枝織:....!え?
樹璃:一つだけ、言っておこう。私は彼のことなど、何とも思ってはいない。今もあの頃も。
枝織:そんな....
樹璃:そう、私は彼を愛してはいなかった。だから、君が気に病むことは何もない。
枝織:だったら、ペンダントには誰の写真が入ってるの?今だって、その服の下に隠してるんでしょう?
樹璃:君か....
ウテナ:向こうで話してたの、枝織さんでしょ?
樹璃:それがどうかしたかい?
ウテナ:事情は知らないけど、許してあげたらどうです?枝織さん、いい人じゃないですか。昔は仲良かったんでしょう?あの人、ホントに先輩のこと、信頼してるみたいだし。
樹璃:君も枝織と同じだな。
ウテナ:?
樹璃:残酷な無邪気さ。
それって?
いいか、君には関係ないことだ。
....なんだい。

有栖川先輩ってさ、以外と心の狭い人だったんだな。あんな言い方しなくたっていいのに。
君はまるで水瓶座の少年、ガニメデですね。無邪気で純粋、だがその無邪気さが人を傷つける。気をつけないとね。
先輩もそんなこと言ってました。
他人には触れられたくないことは、誰にでもある。
そんなもんでしょうか....

(枝織:奇跡を信じて....信じて....)

草時:虫の毒は、気高きバラに回り始めた。
馬宮:もうすぐバラは、その棘を僕らに差し出す。

(eyecatch)

樹璃:君の写真が捨てられなかったのは、私の弱さだ。だが、私は奇跡を信じない。

生徒達:えーホントなのー信じられなーい!えー(笑い)すごーい!

枝織:変ね。誰か来たのかしら。....!?これは、樹璃さんの!

枝織:私は子供の頃から樹璃さんが憎かった....才能があって、キレイで、みんなから慕われる。そんな樹璃さんが妬ましかった。....そうなんです。彼と愛し合ったのも、樹璃さんの大切なものを奪いたかった。ただそれだけ....だから.....だから....
草時:深く、もっと深く。
枝織:そうじゃないんです!樹璃さんは、とても優しくしてくれました。でもそれは、私のことをバカにして、地味でとりえのない私に同情して優しくしてくれるんだって、そう思ってました。そんなの惨めです。だから、樹璃さんとの関係を変えたかったんです。だけど彼とのことは、私を前より惨めにしました。自分から望んでしたはずなのに...でも今は、今は私もあの人と対等、いや私が勝った!樹璃さんの心の中には、いつもあたしがいた。勝ったのは私だ!(笑い)....ああどうしましょう。お友達の秘密を知って、こんなに嬉しくてたまらないなんて。あの人こっそり私の写真を見て、一人で悩んでたんです。あの樹璃さんが、あの樹璃さんが....ダメ!やっぱりだめよ!あなたがそんな目で私を見ていたなんて。どうして?どうしてそんなことになってしまったの?
草時:分かりました。あなたは世界を革命するしかないでしょう。あなたの進む道は用意してあります。
枝織:ここは....

樹璃:枝織?今度は何だい?
枝織:これ.....あなたのでしょ?
樹璃:!!どうしてそれを?見たのか、中を?
枝織:言ってくれれば、もっといい写真をあげたのに。......キレイ。私、傷ついたときのあなたの目が好きだった。
樹璃:枝織、からかわないで。
枝織:誰よりも強いはずのあなたが、今はこんなに....
樹璃:うっ!.......うううううう、うあああああああ!

影絵少女C:号外!号外!号外!...あたしもうダメ、秘密にしてたのに、みんなに知られてしまった...。気にすることはありません。あたし死んじゃう!誰も恥ずかしいことだなんて思いませんよ。そうかしら?そうですよ、誰でもはいてます、毛糸のパンツくらい。だけど3枚も重ねてはくかね?....ああ、やっぱりダメだわ、おしゃれなナイスドレッサーで知られるこの私が、毛糸のパンツをはいてるなんて。...それも3枚ね。ああ!このままではお嫁に行けない!どうすればいいの?
ウテナ:脱げば?

枝織:決闘に勝ち、バラの花嫁に死を!この黒バラにかけて誓う!
ウテナ:どうしてあなたが....?
枝織:これが私、本当の私。光り輝く樹璃の陰で惨めに生きてきた負け犬じゃない。光をしのぐ本当の私、そう、樹璃を支配するのはこの私。

ウテナ:世界を革命する力を!

ウテナ:なぜだ?あれほど先輩を慕っていたのに?
枝織:分かったからよ!
ウテナ:何が?
枝織:樹璃は、みんなの思っているような樹璃じゃないってこと。そして、私の方が強かったってこと。
ウテナ:どういうことだ?

ウテナ:あの動き、まるで先輩の剣だ。
枝織:ふふふ。どうやら分かってもらえたようね。でもあなたは、これでおしまいよ!

枝織:あああ!あああああああ!!

草時:また失敗か。だが、虫の毒は健在だ。また使えるときも、来るだろう。

樹璃:あ、ああ....。

生徒達:(笑い)もう枝織ったら!だけど、前の彼とはどうして別れちゃったの?
枝織:聞きたい?
生徒達:聞きたい聞きたい!
枝織:どうしよっかな....

ウテナ:なんだか人が変わったみたいだな、枝織さん。
アンシー:そうですか?
ウテナ:え、だって...
アンシー:あの人は変わっていませんよ。全然。
生徒達:それじゃだめよね。...経験者は語る。
枝織:!こんにちは、樹璃さん。
樹璃:やあ。
生徒達:ねえそれで、どうしたのよ?
枝織:だから、私言ってやったの。何やってんのよって。
生徒達:マジ?
枝織:(笑い)私って人でなし?
生徒達:いや、よくぞ言った!...そうだ、よくぞ言った!

樹璃:結局、また私のところに帰ってきた...一度は捨てることができたのに。....なぜ私は強くなることができないんだろう。

(ending)
(preview)
ウテナ:大人の時間、大人の話、大人の店、大人の世界...
アンシー:どうしたんですかウテナさま?
ウテナ:大人になると、子供の頃のことを懐かしく思うっていうけど、子供は、早く大人になりたいとあせるよね。...なんて思うのも、ボクがまだ子供だからかな?
アンシー:あーらウテナさま、私はもう大人ですよ。
ウテナ:え?その大人って、どういう意味? 次回、少女革命ウテナ、「みつるもどかしさ」
アンシー:絶対運命、黙示録。

Episode #18

(opening)

幹:僕たちの知らないところで、新たなデュエリストが動き出している。
樹璃:見捨てられたかな、私たちは。
幹:世界の果てには、別の考えがあるのか。
七実:何言ってるのよ!この学園を仕切るのは、私たち生徒会よ!新参者はぎゅうぎゅう締め上げてやればいいのよ!
幹:ことはそう簡単じゃない。
樹璃:そうだな。
七実:何よ、二人して深刻ぶって....まさか、樹璃先輩までされちゃったんじゃないでしょうね?
樹璃:ああ。
七実:...やだ、ホントに?で、どうだった?やっぱり痛い?
石蕗:七実さん!今日の体育は雨なんで、体育館になりました。バスケットらしいんで、バスケットシューズ持ってきたんですけど....。あの?
幹:ここは関係者以外、立入禁止。
七実:あら、今の生徒会長は、私よ?
樹璃:とにかく、君も気をつけた方がいい。
幹:相手が見えない分、僕たちは不利だから。
七実:何よ二人とも!
石蕗:七実さん、何の話だったんですか?
七実:石蕗には関係ないわ。
石蕗:え?
七実:大人の話よ。

タイトル:みつるもどかしさ

ウテナ:まーったくよく降るよなあ。バラもお日さまを見たがってるんじゃない?
アンシー:そうですね。バラは季節の移り変わりに、敏感ですから。
ウテナ:ん?七実と石蕗君か。石蕗君もよく続くなあ。ボクだったらあんな生活、三日も持たないや。
アンシー:きっと好きだからできるんですよ。
ウテナ:そんなもんかなあ。ま、彼の思いが報われるといいけど。

茉莉:報われるわけないじゃない!
石蕗:え?
茉莉:間違ってるよ君。
石蕗:何だ茉莉か。
茉莉:荷物持ってあげたり、スケジュール組んだり、使いっ走りしたり。マネージャーじゃあるまいし。やさしくしてたら女の子の気が引けるとでも思ってるの?
石蕗:引けるわけないだろ。
茉莉:じゃどうして?
石蕗:僕は七実さんの側にいられるだけで幸せなの。
茉莉:ふん、屈折してる。もっとまともな恋愛した方がいいよ、君は。
石蕗:偉そうなこと言うなよ!一つしか違わないくせに。
茉莉:一つでも上は上よ。
石蕗:お前は違わないよ。
茉莉:何ですって!
石蕗:体だって子供じゃないか?
(slap)
茉莉:バカ!
石蕗:いってー。何だよあいつ....

七実:石蕗?今の誰?
石蕗:誰でもないです。誰でも。
七実:ふーん。

七実:石蕗ってさ、友達とかいないの?
石蕗:友達?
七実:いつも中等部の校舎に来てるでしょう?
石蕗:ご迷惑ですか?
七実:そんなこと言ってないでしょう?かわいくないわねえ。子供のくせに。
石蕗:ぼ、僕は、七実さんの側にいた方が、楽しいですから。

七実:ふふ。さっきの子、かわいかったわねえ。
石蕗:ど、どこがですかあんなやつ?
七実:彼女?
石蕗:幼なじみです!ただの。

茉莉:何これ、パーティでもするの?
石蕗:触るなよ。これは明日の七実さんのお弁当なんだから。
茉莉:これ全部?
石蕗:おかしいか?
茉莉:わかってないわねえ。
石蕗:おい!人が買ってきたものを勝手に食べるなよ!
茉莉:いくら尽くしたって、おいしいとこだけ食べられて逃げられちゃうんだから。
石蕗:何だよそれ?
茉莉:女の勘。あいつはそういう毒グモみたいに、いやらしーく、まわりからじわじわ取り込んでいくのよね。
石蕗:お前には七実さんのよさは分からないよ。
茉莉:分かるもん。女の勘よ。あいつはそういう毒グモみたいな女よ。
石蕗:食べてもらえるんだったら、僕は本望だけど。
茉莉:イヤらしい!
石蕗:どうしてイヤらしいのさ!
茉莉:大人になれば分かるわよ!
茉莉:ふん。
石蕗:おいこれ!
茉莉:いいよ食べて。
石蕗:大人がチョコ食うかよ。....間接、....キスじゃん。

生徒達:お昼どこで食べる?...雨だしねえ。

石蕗:七実さん!今日は七実さんの好きな竜田揚げと、アスパラのベーコン....!
七実:何?石蕗?
石蕗:あ、お食事を....
七実:今日はいいわ。この人、御影ゼミの方。
草時:こんにちは。
七実:本当に嬉しいわ。ゼミに誘って下さって。
草時:こちらこそ、アタックした甲斐があったよ。
七実:私なんかで、お役に立てるようでしたら...。
草時:じゃ、軽く食事でもしながら、詳しい話でもしましょうか?
七実:はい...。
草時:よかったら、君も今度ゼミに遊びに来るといい。
七実:いいんですよ。石蕗はまだ子供なんですから。行きましょ。

石蕗:mmm....。
ウテナ:あれ?石蕗君どうしたの?何か難しい本並べて。
ウテナさん、大人になるってどういうことですか?
ウテナ:え?どうって...そりゃあまあ、いろいろあると思うけど....いろいろ経験することが、大人になるってことじゃないかな。
いろいろ?いろいろ経験すれば、大人になれるんですか?
え、たぶん.....
ウテナさんは、いろいろしたんですか?
え?それは.....。
私たちくらいになれば、いろいろ大人ですよねえ。ウテナさま。
ウテナ:そ、そうなの?

ウテナ:王子様を夢見ているのって、やっぱり変ですか?
暁生:え?
ウテナ:いや、その.....後輩に聞かれちゃったもので。大人か子供かって。ボクはいったいどっちかなって。
暁生:自分ではどう思う?
ウテナ:わかりません。それ以前に、ボクは大人と子供がどう違うのか、分かってないのかも...。
暁生:..ふうん。星は歳を取ると輝きを増し、人間もまたしかり、というところかな。
ウテナ:理事長は今が一番輝いているんじゃないですか?きれいなお嫁さんをもらって。
暁生:そうかな?

(eyecatch)

草時:馬宮、たまには外に出たらどうだ?
馬宮:雨は憂鬱になるから。ここの方が落ち着くんだ。
草時:暗闇なら、そんなイヤな光景を見ずにすむか。
馬宮:それより、次のデュエリストは決まったの?
草時:嫉妬深き女王と、その家来といったところかな。
馬宮:子供じゃないか。
草時:昨日までの固いつぼみでも、きっかけさえあれば、かんたんにほころぶものさ。
馬宮:悪い人だね。
草時:美しいだけじゃ、バラの花嫁は手に入らない。
馬宮:分かっている。

石蕗:いろいろすると、大人になる....。
茉莉:何やってるの?
石蕗:またお前か。
茉莉:何やってるの?
石蕗:いろいろ見てるんだよ、大人になるために。
茉莉:いろいろ見ると、大人になれるの?
石蕗:そうだよ。
茉莉:(笑い)
石蕗:お前最近うっとうしいぞ。何で僕につきまとうんだよ。
茉莉:どうして形から入るかな君は。キスシーン100万回見たやつより、本物のキス一回したやつの方が、大人に決まってんじゃない。
石蕗:本物を一回....!?
茉莉:あーあ。もうやんなっちゃうわねー。あんた頭は悪くないのに、やっぱ使い方が変だわ。実践ってやつよねー。そんなことも分からないなんてねー。....!?
(slap)
茉莉:バッカじゃないの!デリカシーないんだから!やっぱり子供ね!

七実:あ、あの子ったら....!?

七実:いいんですよ石蕗はまだ子供なんですから。
ウテナ:いろいろ経験するってことが、大人になるってことなんじゃないかな。
アンシー:私たちくらいになれば、いろいろ大人ですよねえ。ウテナさま。

(ノック音)
石蕗:....はい。七実さん!
七実:視聴覚室で何してたの?
石蕗:え、どうして?
七実:見たのよ?女の子と一緒にいたところ。
石蕗:あれは茉莉が勝手に....
七実:やっぱり。あの幼なじみって子と、何してたの?石蕗、やっぱりあの子のことが好きなんでしょ?
石蕗:いいじゃないですか、そんなこと。
七実:え?
石蕗:僕は背だって低いし、苦いのだって苦手だし、難しいゼミの話だって....最近茉莉にだってバカにされるんだ。子供には分からないって。....どうして僕は七実さんと同じ歳に生まれてこなかったんだろう。早く大人になりたい。大人になって、楽しいこといろいろしたいのに....。
七実:バカねえ。大人になんてならなくたっていいのよ。石蕗は今のままで十分。

石蕗:初等部4年Aクラス、石蕗美蔓です。
草時:では、始めて下さい。
石蕗:実は、七実さんのことなんです。彼女は、すごくきれいで頼りになって、ずっとあこがれだったんです。僕も多少こき使われようと、一緒にいられるだけで幸せでした。だけど....だけど.....
草時:深く、もっと深く。
石蕗:ただ、....何か物足りないんです。七実さんの側にいるだけじゃ....。茉莉だってそうだ。幼なじみだからって最近やたらとちょっかい出してくるし。みんな僕のことをバカにしてるんだ!子供の僕を笑ってるんだ!大人になりたい!大人になって、世界をめちゃくちゃにしてやりたい!めちゃくちゃに!めちゃくちゃに!めちゃくちゃにしてやりたい!
草時:わかりました。あなたの進むべき道は、用意してあります。

石蕗?何なのこんなところに呼び出して?何黙ってるのよ石蕗。何とか言いなさい!
まあ座って下さい。
何なのよもう。ち、ちょっと、なれなれしいわよ石蕗!?石蕗?きゃああああああああ!
これで僕は、大人になる。

若葉:雨って、あたしが傘持ってきてるとやむのよね。
ウテナ:天気予報くらい、見た方がいいよ。....?
影絵少女C:号外!号外!号外!....あたしね、今日ね、今日ね、初めてだったの!....何!お前は父ちゃんに黙って!どこでだい?....車の中だそうです。何だとべらぼうめ!....まあまああなた。....ドキドキしちゃったけど、後悔はしてないわ。....ま!初めてなのに、よく決心されましたね。....そりゃまあ、勇気は要ったけど、大人になった証と思えばつらくないし、帰りにジュースとかもらえちゃうし...。....え?何の話だ?....献血に決まってるじゃん。
ウテナ:献血は16歳から。
影絵少女C:大人の、証。

石蕗:この黒バラにかけて誓う、この決闘に勝ち、バラの花嫁に死を!
ウテナ:石蕗君?まさかボクを呼び出したのは....?
石蕗:ここが決闘場だということを忘れているんじゃないでしょうか。すでに闘いは始まっているんですよ。
アンシー:彼....やっぱり同じです。今までの方たちと。
ウテナ:じゃ、石蕗君も....
アンシー:いつもの彼じゃありません。

ウテナ:うっ....姫宮!

アンシー:気高き城のバラよ...私に眠るディオスの力よ。主に答えて、今こそ示せ!
ウテナ:世界を革命する力を!

ウテナ:石蕗君、目を覚ませ!ボクと君が闘う理由なんてないはずだ!
石蕗:僕は大人になるんだ!
ウテナ:何?
石蕗:経験を積むだけでは、大人になれない。経験を積んだ大人を倒してこそ、子供は大人になる!
ウテナ:誰にそんなことを?

(叫ぶ)

石蕗:おはようございます、七実先輩!
七実:あ....おはよう。
石蕗:どうかしました?
七実:あ....ううん。
茉莉:石蕗!ぐずぐずしてると、遅刻するぞ!
石蕗:それじゃ。
七実:暑く(熱く)なるわね....。

(ending)
(preview)
ウテナ:え?ボクに男の子からラブレター?
アンシー:ウテナさま、彼は、若葉さんの幼なじみなんですよ。
ウテナ:じゃ、若葉がタマネギ王国のお姫様なら、彼は、さしずめタマネギ王子様?
アンシー:タマネギ二つで、今夜もおいしいカレーができますね。
ウテナ:ええ!?またカレー?次回、少女革命ウテナ、「今は亡き王国の歌」
アンシー:絶対運命、黙示録。

Episode #19

(opening)

若葉:あなたとの出会いを、私はずうっと長い間待っていました。あなたと出会うために、私は生まれてきたの。ね、王子様!

若葉:うふふふ。
ウテナ:楽しそうだね、何かいいことでもあった?
若葉:あったよ。いいこと。じゃ〜ん!!愛しい愛しいウテナさまに、こんなprettyなお弁当を作れて、若葉はとっても幸せです!
ウテナ:(笑い)やっぱり若葉って、普通の女の子なんだね。きっといいお嫁さんになるよ。
若葉:うふ、でしょでしょ?
ウテナ:このタコさんウインナーなんて絶品だもんね。
若葉:はい、あーん。
ウテナ:あーん。
達也:あの、.....あのー。初めまして。僕2年D組の、風見達也といいます。
はあ。
達也:天上さん、これ、読んで下さい!
若葉:ふーん、2年D組の風見達也ねえ。
ウテナ:若葉。....ごめん、気を悪くしないでね。
達也:いいえ。
若葉:風見....達也?
ウテナ:でもボクは、こういうのは.....
若葉:ああっ!!!風見達也!思い出したわ。あんた、タマネギ王子じゃない!
ウテナ:た、タマネギ王子?
若葉:ほら、私よ!小学校の時一緒だった、篠原若葉!
達也:あの.....若葉?
若葉:久しぶりねえ。まさかあんたもこの学園にいたなんて!どっかで見たことある名前だなって、思ったのよね。ひょっとしたらデジャヴュ?なんて思ったら、見たことあるわけよねえ。

タイトル:今は亡き王国の歌

若葉:うっふふんふん♪
ウテナ:で、タマネギ王子って何?
若葉:は?どうしたの、ブスッとした顔して?
ウテナ:返しそびれちゃったじゃないか、その手紙!
若葉:この手紙は、私から返しておいてあげるから。
ウテナ:そういうわけにはいかないよ。一応礼儀だからね。ボクが返すよ。
若葉:ううんいいのよ。あんなやつ、ウテナの気にするほどの男じゃないよ。でも気をつけなさいよ、あいつ口だけはうまいから!
ウテナ:ずいぶんな言われようだねえ。
若葉:昔っからそうなのよ。女の子の尻ばっかり追いかけて、デレデレしちゃってさ。
ウテナ:.....おいおい。
若葉:ああいうやつが世の中の男の株を下げてるのよね。
ウテナ:何もそこまで言わなくても....。
若葉:ひどいやつなのよ。
ウテナ:ん?.....若葉?
若葉:あいつ、ひどいやつなのよ。だって....私に黙って、転校しちゃうんだもん。
ウテナ:若葉....。
若葉:かつて、私の王子様だったんだ。あいつ。

子ども:やーいやーいタマネギ頭!
若葉:うるさいわね!私には、タマネギ王子様がいるんだから!
達也:え?
若葉:私には、タマネギ王子様がいるんだから!
達也:え?
若葉:私には、タマネギ王子様がいるんだから!
達也:え?
若葉:私には、タマネギ王子様がいるんだから!
達也:え?
若葉:私には、タマネギ王子様がいるんだから!....
達也:え?....

若葉:(笑い)ま、昔の話だけどね。
ウテナ:王子様ねえ。
若葉:な、何よ?
ウテナ:ホントはさあ、運命とか、感じちゃってるんじゃないの?
若葉:そんなんじゃないよ。

生徒:若葉!
若葉:これ、返しといてくれって。大体ウテナと達也じゃ、釣り合わないよ。
達也:(ため息)若葉が変なこと言ったからだろ?
若葉:何よ?
達也:天上さんの前で、カボチャ王子とか変な話するから。
若葉:タマネギ王子だよ....
達也:どっちだっていいよ、そんなの。
若葉:よくないよ!よくないよ....私にとっては、大切なことだもん。達也にとっては、どうでもいいことなの?私にとっては、大切な思い出だから....。
達也:と、とにかく、もう一度紹介してくれよ、彼女のこと。
若葉:...分かった。そこまで言うなら、紹介してあげてもいいけど.....紹介するだけよ。

七実:ミッキー?明日のパーティで、またピアノをお願いね。
幹:いいですよ。
樹璃:そういえば、ミッキーは、いつも同じ人のことを想い続けてピアノを弾いているんだな。
幹:な!?....樹璃さん、からかうのは止めて下さいよ....。
七実:フン!ったく、いつまでもあんな女のことを想って弾いてんじゃないわよ!
(ストップウォッチ)
幹:いいですよね七実さんは。小学生相手で、自分の欲求が満たせるんですから。
七実:うるさいわね!あんなの遊びよ、遊び!ホントに好きだって想う気持ちは、たった一つなのよ!だから愛って形は永遠なの....。お兄さまああ!
(ストップウォッチ)
幹:実の兄以外はダボハゼ同然ってやつか。
樹璃:(笑い)「本当に好きだって想いは一つ」か。想い続ける人というのを、簡単に替えることができたら、君たちももっと楽になれるのにな。
幹&七実:!?
樹璃:....私もか。

(eyecatch)

ウテナ:若葉が気になるって言っていた王子様って、やっぱり彼のことなんじゃないかな....。
暁生:何の話ですか?
ウテナ:あ、いや、友達が幼なじみとバッタリ再会したんです。お互い素直になれないところもあったんですけど、彼女が待っていた王子様って、彼のことなんじゃないかって....。
暁生:素敵なお話ですね。
ウテナ:ああ、すいませんボクの話ばかりで。
暁生:かまいませんよ。....でもね天上さん。
ウテナ:?
暁生:人の心の中というのは、薄いシルクのベールに包まれたようなものです。
ウテナ:はあ。
暁生:覗けそうで、なかなか覗けない。人が心の中に持っている王子様というのは、きっと他の人には分からないものですよ。
ウテナ:はあ....。
暁生:でも、恋する若者たちって言うのは羨ましいなあ。お前も早く、自分の王子様が見つかるといいね、アンシー。
アンシー:はい、お兄さま!

若葉:分かったウテナ?適当に、お茶を濁しとけばいいからね?
ウテナ:適当に....?
若葉:そうよ。
ウテナ:お茶を濁しておくんだね?
若葉:そう!
ウテナ:分かったよ。誰かさんのためにもね。
若葉:何よそれ.....。
達也:どうも、遅れてすいません。
若葉:遅いわよ!いつまで待たせる気?
達也:ごめんごめん、あ、あのー、そちらの方は?
ウテナ:ああ紹介するよ、姫宮アンシー、ボクのルームメイトなんだ。
達也:どうも、初めまして。風見達也です。
アンシー:どうも。姫宮です。それと、チュチュです。
達也:どうも、風見達也です。よろしくね、チュチュ。
chu!
達也:???
若葉:サルに色目使ってどうすんのよ?
達也:どういう意味だよ?
若葉:あんたのそういうところ、昔と全然変わってないわ。
達也:みんなの前でそういう言い方、やめてよ。
若葉:だってそうじゃない?いつも女の子の前だとデレデレしちゃってさ。
達也:そんなことないよ。若葉こそ、どうしてそんな言いがかりつけるのさ?おかしいよ。
若葉:私は.....別に、何でもないわよ。
達也:何だよ?
若葉:....何でもないわよ!
達也:言いたいことがあったら、はっきり言いなよ!
若葉:だから何でもないって!....ほら、ウテナに話があるんでしょ?
達也:あ、ああ....。あの、天上さんって、今おつきあいしている人、いるんですか?
ウテナ:つきあっている人はいないんだけど、昔、この指輪をボクにくれた王子様のことを、今もずっと想い続けているんだ。
達也:....王子様ですか....。そういうのってなんだか、夢があっていいですね。
ウテナ:それでね、今、君の側にいるお姫様にも、気になる王子様がいるみたいだよ?
達也:え?
ウテナ:ね、若葉?タマネギ王子なんて、夢があっていいじゃないか?
若葉:ち、違うのよ!私の王子様は、.....私の王子様は、王子様は......
達也:?
ウテナ:もう少し素直になったら、若葉?
若葉:そんなんじゃないってば!んもう、ウテナの意地悪!
達也:わ、若葉!

達也:あの、天上さん?
ウテナ:何?
達也:さっき言ってた、若葉の王子様って、どういう....ことですか?
ウテナ:強がっちゃいるけど、ほら、彼女だって、女の子だからさ?昔であった王子様のことが、今も忘れられないかもね。
(若葉:私には、タマネギ王子様がついてるんだからね!....私にとって、大切な思い出だから....)
達也:天上さん。
ウテナ:何?
達也:僕本当は、転校してこの学園に来たときから、若葉がこの学園にいること、知ってたんです。彼女、僕が知ってる頃と全然変わってなくて...。楽しそうに過ごしているあいつの横には、天上さん、いつもあなたがいました。あなたと一緒にいられたら....
若葉の側にもいられる?それで、僕にラブレター出したんだね。
すいません。あいつって、照れ屋さんなんですよね。タマネギ王子なんて、バカにされてるとばかり思ってた。でも、違ってたんですね。
ウテナ:さあ、そこから先は、ボクにも分からないな。人が心の中に持っている王子様は、他の人には分からないから。告白してみる価値はあると思うけど....。
達也:ありがとうございました!
ウテナ:あれで、本当によかったのかな....?
アンシー:何がですか?
ウテナ:達也君と、若葉のことさ。
アンシー:大丈夫ですよ。恋愛なんて、なるようにしかなりませんから。
ウテナ:それはそうだけどさ.....。!あちゃー.....。
影絵少女C:号外!号外!号外!いらっしゃいいらっしゃい!とれたての新鮮なタイ屋さんだよ。今日はタイ屋さんの大安売りだ!....下さいな!でもおじさん、タイ屋さんって何?....奥さん、よくぞ聞いてくれました。魚屋さんは?魚を売る。パン屋さんは?パンを売る。で、うちはタイ屋だから、タイヤを売ってるんでさあ。...ワーオ。....いいタイヤを見分けるには、けっこうキャリアがいるんだ。見ただけでは味のよしあしまでは、なかなかわからねえからな。よっ.....じゃあそのタイヤ、一つ下さい。....毎度あり!ダンナに精の付くものでも食べさしてやんな!....いやだあもう!タイ屋さんったら!今日の夕食、このタイヤで何を作ろうかしら?
ウテナ:それ、食べられるの?
(落とす)

達也:若葉....。ちょっと、いい?
若葉:何よ?改まっちゃって。どうしたの?
達也:若葉って、今好きな人がいるんだろ?
若葉:な、何よ?
達也:君は今、君の王子様に恋してるんだろ?....あのさ、大事なときには素直になった方がいいよ。
若葉:あたしは、いつも素直だよ。
達也:王子様、か.....。
若葉:何よ?
達也:いや、王子様の気持ちも、知りたいんじゃないかなって、思ってさ....。
若葉:王子様の気持ちって?
達也:でも君は、ようやく自分の気持ちに気づいたように、王子様の気持ちにも、もう、気づいているのかな....。
若葉:幼なじみって、そんなことまで分かっちゃうの?
達也:もちろん。
若葉:そうよ。....ようやく気づいたの。やっぱり私は、あの王子様が好きなんだって。そして、神様のおかげで、王子様がやっと私のことを振り向いてくれるようになったのかなって。....私も、私も、やっと幸せになれるのかなって.....
達也:何だ。分かってるじゃないか。君は幸せになれるさ....。
若葉:達也....。
達也:若葉....。
若葉:でもこのこと、みんなには内緒にしてくれる?
達也:ああ、君が恥ずかしいって言うのなら、みんなには秘密にしておこう。
若葉:まだ信じられないけど、私もやっと、幸せをつかんだのね。
達也:ああ。
若葉:あなたも早く、誰かと幸せになってね!
達也:ああ。僕も早く誰かと....え?
若葉:じゃ、そういうことだから、私もう行くね。あんまり待たせちゃいけないから。
達也:誰を?
若葉:だから、私の王子様を!じゃあね!
達也:あたしの王子様って.....え?

達也:あのーすいません、誰かいませんか?すいませーん。どなたかいらっしゃいませんか?あのー、予約取ってないんですけど、よろしいでしょうか?

達也:飛び入りですいません。中等部二年Dクラス、風見達也です。
草時:では、はじめて下さい。
達也:あの、噂で聞いたんです。ここに来たら、困ったときとか相談に乗ってくれるって...。ずうっと見ていた女の子がいたんです。僕だけのお姫様です。でも、彼女は僕の下を去った....。他の男と会うために。きっと彼女は、だまされているんだ....。ああ!汚れを知らない女の子だったのに!きっとあんなことや、こんなことや、もしかしたらそんなことまでされてしまうかもしれないのに!....でもいいんだ。どんなに汚れても、彼女は僕のもとへ帰って来るさ。だって僕は彼女を愛しているもの!そうさ、最後に必ず愛は勝つんだ!僕なら君を幸せにできる。僕なら君のために何でも投げ出せる。僕なら、僕なら.....何で僕じゃダメなんだああああああ.....!!!!
草時:君は、本当にいい人だねえ。だから、君の進むべき道はここにはない。帰りたまえ。ここは君のような人間の来るところではない。

若葉:ただいま....。
西園寺:お帰り。

(ending)
(preview)
ウテナ:わからないな。どうして若葉のやつ、最近あんなに生き生きしてるんだろう?
アンシー:きっと何か特別なことがあったんですよ。
ウテナ:わからないな....どうして若葉のやつ、最近授業が終わるとすぐ帰っちゃうんだろう?
アンシー:きっとお家で楽しいことが待ってるんですよ。
ウテナ:うーーんボクにはわからないことがいっぱいだ。でもこれだけは分かってる。若葉はボクの大事な友達なんだ。次回、少女革命ウテナ、「若葉繁れる」
アンシー:絶対運命、黙示録。


Episode #20

(opening)

生徒達:ねえ知ってる?あの噂?....あの噂って何よ?....西園寺先輩の噂でしょ?...そうそうそうそうそうそう。ああ、あれって本当の話?あんた今頃何言ってるのよ?やっぱり....道理で今月に入ってからお見かけしないと思った。....でも、何で退学になっちゃったの?....さあ。...あーあ、あたしちょっとあこがれてたんだけどなあ。...ええ?どこがいいのよあんなの?何言ってんのよ、あんた西園寺先輩の生写真買ってたじゃない?....そういうあんただって先輩の縦笛舐めてたでしょ?....えあなたも!西園寺先輩って素敵だったもんねえ。....どこでどうしていらっしゃるのかしら?...本当。

西園寺:お帰り。
若葉:ただいま。

タイトル:若葉繁れる

若葉:誰も、来ませんでした?
西園寺:いや。....帰り、遅かったねえ。
若葉:ごめんなさい。ちょっと買い物してたんです。
西園寺:すまない。すぐに出ていく約束だったのに、ズルズル居座ってしまって....。
若葉:コーヒーでいいですか?
西園寺:退学になったものの、行き場もなく、友もなく、カネもなく、結局学園に舞い戻ってしまった惨めな僕を、君はジャンヌダルクのような勇敢さでかくまってくれた。....だが、いつまでも君の好意に甘えているわけにはいかない。
若葉:え?
西園寺:君に迷惑がかかる前に、僕は出ていくよ。
若葉:!....待って西園寺さん!そんなこと気にしないで。私はあなたのお力になれるだけで嬉しいんです。一緒に頑張りましょう?そのうちきっと学園に戻れますわ。
西園寺:若葉君.....!
若葉:さ、これを飲んで落ち着いて。
西園寺:ありがとう、若葉君!!!!!!
若葉:あ、いや、その、ごめんなさい!
西園寺:あ、すまない、つい破廉恥なまねを....。
若葉:あの、コーヒ−....冷めちゃいます。
西園寺:あ、ああ....熱!
若葉:あの、....先輩さえよろしければ、その.....あの....!
(ノック音)
生徒:若葉ー!私よ!入るね。
若葉:あ、ち、ちょっと待って!
生徒:どうしたの若葉?立て込んでるの?
若葉:ん?べ、別に...。
生徒:汗すごいわよ。
若葉:ち、ちょっと気分悪くって....
生徒:あれ、気のせいかな、話し声してたみたいだけど。
若葉:え?
生徒:ありがとうとかごめんなさいとか、何あれ?
若葉:あ、あれ、お祈りしてたのよ、神様に。
生徒:お祈り?
若葉:ほら...私どっちかっていうと、霊感強い方だから....
生徒:え?強いんだー....。
若葉:え、あ、自分でもやばいって思ってるんだけどね....あはははは!....。入る?
生徒:ん?ううん、今日は遠慮しとく。

若葉:(ため息)ん?西園寺さん?
together:笑い
若葉:これが私の秘密。私と、あの人....二人だけの秘密....。西園寺さん...。ずっと、ずうっとあこがれてた。でもあの人は、私なんか手の届かない、遠い存在だった。思いを寄せることすら許されない....。
(生徒:そして私は、夢の中で西園寺さんと踊っていました...あなたは優しく微笑んでいました....私ってバカですよね、だってさ、わははははは!)
若葉:でも....今は、でも....今は.....。

ウテナ:おーい若葉、これから試合あるんだけど、見に来てよ!
若葉:ごめーん、私ちょっと用あるから。試合頑張ってね!

生徒:若葉ー、一緒にバレーやんない?
若葉:ごめーんパス!
生徒:えーまた?

少年たち:ああ若葉さん!心霊現象の実験に....
若葉:パース!

若葉:今の私は、特別!....この秘密がある限り、そう....特別なの!
西園寺:お帰り、遅かったね。
若葉:ただいま!

教師:というわけで、このあたりは、次の試験にも出そうなところですね。じゃあ次の問題、誰にやってもらおうかな?
若葉:はい!
生徒達:はい!はい!はい!
教師:それじゃあ、天上さん。
ウテナ:はい?

若葉:どうかした?
ウテナ:あのさ....最近、何かいいことあったのかい?
若葉:別に。どうして?
ウテナ:いやー最近、なんだか生き生きしてるからさ。それに....
若葉:それに?
ウテナ:その....とてもキレイになった。
若葉:んもーやめてよウテナったら!(笑い)
ウテナ:いや、本当だよ。本当なんだってば。
若葉:んもー。またまたウソばっかり!(笑い)
ウテナ:本当だってば.....!
若葉:じゃあね、ウテナ!(笑い)

暁生:ほう若葉さんがね。
ウテナ:そうなんだ。すっかり見違えちゃって。
暁生:天空の星に名を残す女神のように、というわけですか....。
ウテナ:でも、どうして急にキレイになったんだろう?
暁生:あなたには分からないでしょうね。選ばれた運命を生きるあなたには。
ウテナ:え?
暁生:世の中には特別な人々がいます。常に注目されている、そう、例えばあなたのように。
ウテナ:ボクが....?
暁生:ほら、あなたにはそんな自覚はないでしょう。それは、あなたが生まれつき、特別だからですよ。
ウテナ:え....?
暁生:ほとんどの人は、みな大勢の中の一人でしかありません。でも、きっかけさえあれば、今までにないほどの光を放つことがあります。

若葉:ね、何を作ってるんですか?
西園寺:内緒。

ウテナ:ボクはただ、若葉が、ずっと幸せでいてくれれば、それでいいんだ。

若葉:お砂糖、いくつにします?
西園寺:ほら....。
若葉:?....!

暁生:ただ言えることは、多くの人にとって特別な時間は、そう長くは続かない。

西園寺:まだ作りかけだけど、今の僕にできることは、こんなことぐらいさ。君の真心へのお礼だよ。
若葉:そんな.......。これだけで、私....十分です.....!

(eyecatch)

若葉:桐生生徒会長は、未だに学園には来てません。そのお兄さんに代わって、七実さんがはりきって生徒会を仕切っています。幹君も、一生懸命七実さんを補佐してるみたい。有栖川先輩は、相変わらず。生徒会の様子は、だいたいそんな感じですね。
西園寺:ふーん。そう。ところで、
若葉:はい?
西園寺:えーっと。
若葉:何でも聞いて下さい。
西園寺:えーっと、あの、アンシー、どうしてるかな.....。
若葉:姫宮さん、ですか?
西園寺:いや.....ちょっと聞いてみただけさ。

若葉:西園寺さんは、学園に戻りたがっている。....私との暮らしが終われば、あの人はもう、私のことを思い出しもしないだろう....。
店員:2060円です。

西園寺:う、もう夕方か.....。
草時:いいご身分じゃないですか、西園寺莢一君。
西園寺:!お前は、御影!
草時:お久しぶりですね。
西園寺:いつの間に?いや、どうしてここに?
草時:どんなに小さい秘め事であろうとも、学園内のことは、我々黒バラ会にはお見通しです。それよりも西園寺君、かつては生徒会の副会長までつとめた君が、今では女生徒の居候に甘んじているとはね....。ふふ。
西園寺:うっ....僕だっていつまでも無為にすごすつもりはない!そのうち学
園、いや、生徒会にも必ず復帰して....
草時:ほう、どうやって?
西園寺:!それは....
草時:こんな場末で時間をつぶしている君が、何をどうやって?
西園寺:そ、それは.....
草時:どうでしょう、一つ我々の力でなんとかしようじゃありませんか?
西園寺:何?
草時:我々は学園の将来を、真に憂えているんです。君の才能は、....あまりに惜しい。
西園寺:なるほど分かった。僕は代わりになにをすればいい?
草時:そうですね。君の持っているものの中で一つ、ほしいものがあるんです。何、大したものじゃありませんよ。

若葉:!!!!

若葉:彼にどれだけ尽くしても、どんなに彼のことを想っても、結局、彼の心は初めからその女のものだったんです。その女は、自分だけ特別という顔をして、何もかも私から奪いとっていくんです!その女を、私は、どうしても許すことができません!....恋でも勉強でも、私は結局その他大勢の一人でしかないんです。特別な人たちとは、まるで世界が違うんです。....だけど、だけど....、彼さえいれば、彼と一緒にいさえすれば、私も特別になれました。もう少しで生まれ変わるところだったんです!なのに....なのにあの女は、あの女は!!!!!
草時:わかりました。あなたは世界を革命するしかないでしょう。あなたの進む道は用意してあります。....さあ。

西園寺:あんなもの一つで、僕の願いを聞いてくれるなんて、思わなかったなあ....やっぱり僕は、いつまでもこんなところに、いちゃいけない人間だよね。よし!準備完了。西園寺莢一、新たなる栄光の時代へ、発進!!
若葉:どこかへお出かけ?
西園寺:うわっ!?誰かと思えば君か。....今まで迷惑かけてすまなかった。僕はもとの世界へ戻るよ。
若葉:あの髪飾りはどこ?
西園寺:ああ、あれは事情があって君には渡せなくなった。だが安心してくれ。君には、それなりに高価な品を見つくろうつもりだから。できれば郵送にしたいのだが、届け先はここでいいのかな?
若葉:もういいの。私、もっといいものを手に入れた。
西園寺:!それは!?うわあああああああああああ!!

ウテナ:あれ、狐の嫁入りだ。

影絵少女C:号外!号外!号外!....ついに、ついに、ついに降ってきた!晴れた日に雨が降ったら、急いでお嫁にいかなくっちゃ!それが私たち狐少女の、しきたり!...いいわねえあんたたち、私なんか、晴れた日に雪が降るまでお嫁に行けないのよ。それが私たちウサギ少女の、掟!....。
ウテナ:行かなきゃいいじゃん。
影絵少女C:(crying)

若葉:この黒バラにかけて誓う!
アンシー:ウテナさま....
若葉:この決闘に勝ち....
アンシー:私から剣を抜いて下さい!
若葉:バラの花嫁に死を!
アンシー:早く剣を!
ウテナ:アンシー....だめだよ、闘えないよ....友達に剣を向けるなんて!....若葉!
アンシー:早く剣を!

若葉:そうだ、私はその女を殺す!西園寺さまの心を奪った、その女を!!
ウテナ:西園寺?
ウテナ:ど.....どうしてなんだ....あの輝いていた若葉が....どうして?
若葉:お前には分からない!分かる資格などない!
アンシー:早く、早く剣を!

(若葉:あ、西園寺さま!ウテナ:西園寺?若葉:そう、生徒会副会長で、生徒会副会長の、西園寺莢一様!)
アンシー:うっ....
ウテナ:やめろ若葉!やめるんだ若葉!
(ウテナ:西園寺って、あの姫宮って子と、つきあってんの?若葉:まさか!硬派の西園寺様が、あんな子に関心持つはずないわ!同じ生徒会だから、一緒にいるだけよ....だけよ....だけよ.....だけよ.....。)
ウテナ:うっ.....うおお....
アンシー:ウテナさま!
若葉:お前もその女も生徒会の連中も、みんな私を見下しているんだ!何の苦労もなく、持って生まれた力を誇ってな!!だからお前たちは、みんな平然と....
アンシー:ウテナさまあっ!!!!
若葉::人を踏みつけにできるんだあああああああっ!!!!!!
ウテナ:若葉.....確かに、ボクには、分からないことがいっぱいある.....だけど、これだけは、はっきり分かっている。....君は、ボクの、大事な友達だってことさ.....待ってて、今、助けてあげるから....
若葉:うあっっっっっっっっっ!

草時:役立たずには去ってもらってもいいが、西園寺....道化ならば、居たほうがおもしろいかもな....。

樹璃:得意満面といったところかな。西園寺のやつ。
七実:出戻りにしちゃ、大いばりよね。
樹璃:このまま、生徒会にも返り咲くつもりか?あいつ。
七実:まったくどういう神経してんのよ?
幹:だけど、退学になった彼が、どうして復学できたんでしょうね?
七実:なんでも、黒薔薇会のお声掛かりらしいわよ。
幹:へえ。

若葉:ただいま.....

(ending)
(preview)
ウテナ:冗談じゃないよ〜。
アンシー:どうされたのですか、ウテナさ
ま?
ウテナ:最近、七実のやつ、ボクの顔を見るたびに、冬芽にたかる悪い虫ってののしるんだ。
アンシー:ひどいですね。
ウテナ:あの性格の彼女といつも一緒にいて仲良くしてる連中は、ホントに人間ができてるよ〜。
アンシー:ウテナさま、本当にそう思いますか?
ウテナ:次回、少女革命ウテナ、「悪い虫」
アンシー:絶対運命、黙示録。

Episode #22

(opening)

愛子:今日もおきれいですわ、七実様。
茎子:七実様にかなう者なんて、この学園には一人もいやしませんわ。
優子:私たち、七実様のおそばにいられて、本当に幸せです。

タイトル:悪い虫

愛子:ねえ、あなたも確か同じクラスよね?
茎子:よかったら、私たちのグループに入らない?
優子:お友達になりましょうよ。

冬芽:すばらしい入学式だったよ。
七実:お兄さまあ〜〜。
愛子:桐生冬芽様だわ。
茎子:そうだわ、生徒会長の冬芽様よ。
優子:するとこの子は....
愛子:桐生、
茎子:冬芽様の、
優子:妹?

七実:うふふふふ。
生徒達:すてきー。....はあ。すばらしい出会いだったわ。
愛子:七実様に出会って、人生代わったって感じ。
茎子:七実様に最初にお声をおかけしちゃったなんて、ラッキーだったよね。
優子:感謝しなくっちゃ。数多い生徒の中から、七実様は私たちを選んで下さったのよ!
愛子:そうよ、私たちは七実様にお仕えする者として選ばれたのよ!
茎子:その通りだわ愛子!
愛子:茎子、優子!
愛子:私たち、これからも、力を合わせて頑張りましょう!
茎子:ええ。
優子:私たちは、選ばれた同志ですもの。
together:頑張りましょう!

七実:そうだわ、パーティよ!何でもっと早く思いつかなかったのかしら?お兄さまを励ます会を盛大に催すの。それはもう盛大に。この際こだわりはなし。学園中の有名人はもうドーンと気前よく招待して!
生徒:あ、桐生さん、日直ですよね。黒板消して下さいね。
そうすればお兄さまの気も晴れようというものよ!

茎子:すばらしい思いつきですわ、七実様!
優子:冬芽様はこのところ、ずうっと引きこもっていらっしゃったから。
愛子:七実様のお兄さま思いには、本当に心を打たれますわ!
生徒:き、桐生さん黒板を....あああ。
七実:みなさん、力を貸してちょうだいね。
together:ええ!
茎子:喜んで。

樹璃:パーティ?
茎子:どうかご出席なさって下さい。
樹璃:生徒会が大変なこの時期に....全く。
茎子:お願いします。.....お願いします.....お願いします....七実様は本当に、冬芽様のことを、心配なさってるんです。お願いしまーす!....お願いしまーす!!!

茎子:久しぶりに冬芽様にお目にかかれる....。どうせ私なんか、見ては下さらないだろうけど、冬芽様、それでも私は....。

茎子:愛子!優子!冬芽様と七実様のために、私たち、力を合わせて、がんばって準備しましょう?
優子:ええ。今日はやけに気合い入ってるわねえ、茎子。
茎子:え、そうかな?
愛子:それ、新しいドレスでしょう?似合ってるわ。
茎子:本当?
愛子:ホントホント、似合ってるわよね、愛子?
優子:うん、とっても素敵。
茎子:ありがとう、優子、愛子。
七実:どう?準備はできて?
together:はい。
茎子:何とか終わりました。
七実:そうだ茎子さん、ちょっとお願いがあるんだけど。
茎子:何でしょう?
七実:私ったら、すっかり忘れてたんだけど、急いでまとめないといけない生徒会の書類があったの。悪いけど茎子さん、私の代わりにやっといて下さらない?
茎子:!え....でもパーティが...。
七実:準備はもう終わったんでしょ?
茎子:え、はい。
七実:じゃあ問題ないわね。書類は学校においてあるわ。さあ、すぐに行ってちょうだい。
茎子:あの....七実様?
七実:どうかしたの?
茎子:いえ...。
七実:じゃ、お願いね。
茎子:.....はい。

茎子:私は、ずっと....ずっと....冬芽様を、見つめていた。ずっと....。王子様に近づけるのは、おとぎの世界の王女様だけ。

茎子:冬芽様....私なんかとは世界が違う....そうよ、私なんか...。

ウテナ:割と元気そうだったじゃないか、冬芽のやつ。
(ストップウォッチ)
幹:でも相変わらず学園には姿を見せませんけどね....。
ウテナ:会長がその調子じゃ、大変だねえ生徒会も。
七実:あーら、お兄さまのことがそんなに気になるの?こそこそとお兄さまのことに探りを入れたりして、イヤらしい。
ウテナ:バカ言え。誰がそんな....!
茎子:あーらしらばっくれる気?
優子:今話してたばっかりだってのに、図々しい。
愛子:うみょみょみょ〜ん。みょん。
ウテナ:ボクは招待されたからパーティに行ってやったんだぞ?
七実:まあ。枯れ木も山のにぎわいと思って招待してやれば、つけあがって。世の中には図々しい人っているのね。
ウテナ:あのな....。
茎子:少しは身の程ってものを考えたらどうかしら?
優子&愛子:まったくだわ。
七実:あなたみたいな人がお兄さまの周囲をうろついているなんて考えただけでも耐えられないわ。そうよ!
(ストップウオッチ)
七実:お兄さまにたかる虫は、一匹たりとも許さない!参りましょ、みなさん。
幹:すみません、天上先輩。
ウテナ:あやまんないでよミッキー。いつものことだよ。
アンシー:あっ!すみません私、寝てました?寝てました?
ウテナ:昨日はずっとチュチュが夜泣きしてたもんね。

ウテナ:散開星団のプレアデスはね、日本では昴という名で知られてて、清少納言の枕草子にも出てるんだ。
アンシー:(笑い)詳しいんですのね、ウテナさま。
ウテナ:いやあ、みんな暁生さんの受け売りさ。最近すっかり教育されちゃってねえ。
アンシー:そう。
暁生:いいねえ。冬の星座か。
アンシー:お兄さま。
暁生:仲良きことは美しきかな。双子座のカステルとポルックスは、仲がいいことで知られているが、そうして一緒に星を眺めている姿は、双子座以上に美しい。
ウテナ:...いやそんな。

ウテナ:じゃ、ボクは先に行ってるから。
アンシー:はい、ウテナさま。
暁生:..いいかいアンシー。これからもウテナさんと仲良くやるんだよ。双子座のカステルと、ポルックスのように。
アンシー:はい、お兄さま。

(eyecatch)

茎子:!?どうしよう.....冬芽様ったら、あんなに濡れて....。私の傘に!....でも私なんかが冬芽様に.....こんなチャンス、二度とない!....あの、冬芽様!よろしかったら、入りませんか?雨はお体にさわりますわ。
七実:.....!
茎子:七実様?私です七実様?どこにいらっしゃるんですか、七実様?
七実:ここよ茎子さん。
茎子:?七実様、私にご用とは?
七実:園田茎子さん、あなたの所属しているクラブ、寮の自治委員会、文化サークル、その他すべての団体から、あなたを即時除名します。
茎子:!!どうしてですか、七実様?
七実:どうして?とぼけないで!....うかつだったわ。本当の悪い虫は自分の足下にいた。そのことに今日まで気が付かなかったなんて。
茎子:....七実様?
七実:言ったはずよ!私はお兄さまに近づく悪い虫は、一匹たりとも許さないって!!あなたのようにたちの悪い虫は、徹底的に駆除してあげる。覚悟しておいてちょうだいね、茎子さん。
茎子:そんな.....。
優子:(笑い)七実様がお帰りになってしまいます。
愛子:私たちも帰りましょ。

茎子:優子、愛子!
together:ん?
茎子:お願い、あなた達から七実様にとりなしてちょうだい!あなた達だけが頼りなの!お願い!!
優子:何か聞こえた?
愛子:何も。

茎子:私は心の底から七実様にあこがれてました。自分でもそう思ってお仕えしてきたんです。でも本当は違ってた。少しでも冬芽様のそばに近づきたかったから、七実様のそばにいただけ。そうじゃなかったら、誰があんな....
草時:深く、もっと深く....。
茎子:あんな、わがままな....。私だって一人の女の子よ。誰かのことを好きになっていいはずだわ。なのにどうして、あんな女に遠慮しなくちゃならないの?....冬芽様の妹だというだけで、あの女は冬芽様に甘え放題!それも私の目の前で!私が、そのたびにどんな思いをしていたことか、あの女は分かってないのよ!分かろうともしないんだわ!
草時:わかりました。あなたは世界を革命するしかないでしょう。あなたの進む道は用意してあります。

茎子:ここは....?

茎子:冬芽様....私を見て?冬芽様?
冬芽:はあああああああ!
茎子:冬芽様、これからは、私だけを見て下さい。

影絵少女C:号外!号外!号外!....悪い虫はいないか、悪い虫はいないか?....あっ!なまはげよ!....ちがうわよわたしはカマキリ。カマカマカマ....早くみんな、逃げて!....カマカマカマ....逃げて逃げて!....カマカマカマカマ....逃げ逃げ逃げ逃げ.....カマカママカマカカカカマカマカ.....逃げ逃げ逃げに、逃げ逃げげ.....えーい、いつまでにげていてもしょうがない。それ、殺虫剤!.....苦しいカマ.....あたしたちも死んじゃうじゃないよ〜....あー、ばたり。
ウテナ:お部屋の臭い消しですよ、それ。

ウテナ:君は....?
茎子:この黒バラにかけて誓う!この決闘に勝ち、バラの花嫁に死を!
ウテナ:君は...
茎子:この冬芽様の剣で、私はお前を倒す!
ウテナ:冬芽の剣?
茎子:私と冬芽様の未来のため、私は闘う。さあ、剣を抜け!!

ウテナ:世界を、革命する力を!

茎子:いやあああ!
ウテナ:どうして君が?
茎子:七実がどんな女か、おまえもよく知っているはずだ!あいつは私のことなんか、人間とは思ってない。そうと分かっていながら、わたしはあいつに仕えてきたんだ!
ウテナ:でも分からない。どうして冬芽の剣を?
茎子:お前に分かる必要はない!....この剣に勝てるか天上ウテナ!この剣に!この世で最も尊い剣に!....この剣で私は大いなる力を手に入れる。そしてあの女を殺す!私と冬芽様の間に立ちふさがるあの七実を!…そうだ、本当に悪い虫は、七実だ....!なんだあの女、悪い虫だったんだ!

ウテナ:ボクは、この子の名前も知らない。七実の友達だと思っていたのに....怖いね。憎しみの根は、見えない地中で大きく広がっているんだな。

草時:また失敗か....だがおもしろい。主を虫と呼ぶとはな。

茎子:私は七実様のおそばにいられるだけで幸せなんです。私なんかが、冬芽様をお慕いするなんてこと、できるはずないじゃないですか。
七実:そうね。あなたの身の程を考えたら当然よね。これからもずっと私の側にいてね、茎子さん。
茎子:ええ、もちろんです。
優子:茎子、私たちもずっと友達だよ。
愛子:そうだよ、どんなことがあってもね。

ウテナ:....分からないな。
アンシー:髪しばって、前髪クルルンが茎子さん、肩まで伸びて、外側にクルルンが愛子さん、内巻きで、ほっぺでクルルンが優子さんです。
ウテナ:そうじゃなくて。あの子、どうしてまた七実とつきあえるんだろう?本当は、いろんな思いを抱いているっていうのに。
アンシー:簡単ですよ。
ウテナ:え?
アンシー:好きな人のためなら、それ以外の人への感情なんて問題じゃない。自分なんていくらでもごまかせますから。

(ending)
(preview)
ウテナ:ねえ姫宮、昔、百人の少年が行方不明になったっていう校舎の噂を知ってる?
アンシー:ええ。
ウテナ:あの噂って、どうやら本当らしいんだ。この鳳学園に、根室教授という人がいて、その人の生徒たちがみんな火事と一緒に消えちゃったんだって。
アンシー:でもそれは、もう、ずうっとずうっと昔のことですよ。
ウテナ:次回、少女革命ウテナ、「根室記念館」
アンシー:絶対運命、黙示録。

Episode #22

(opening)

黒バラも、いよいよ最後の一輪か....しかし彼は、自分で闘うのかな?

タイトル:根室記念館

幹:はやく、やつらの正体をつきとめなきゃ....。やつらは、バラの花嫁を手に入れるんじゃなく、亡き者にしようとしている。言うまでもなく、学内の治安を守るのは、自治会代表でもある僕たち生徒会執行部の役目ですから。
七実:ホント、いったい何者なのよ!一般生徒を操って、次々に天上ウテナと決闘させてるのは!
樹璃:苛立ってるね。友達や冬芽までもが狙われたから?
七実:さすがに何でもよく知ってるわね。でも、それだけの情報網があるなら、はやくやつらの正体もつきとめてほしいわ。
樹璃:手がかりはある。バラの刻印は、世界の果てに選ばれた者だけが所有している。
幹:じゃ、陰で動いているのは、世界の果てそのものなんでしょうか?
樹璃:さあね。
七実:でも、状況から考えて、その誰かが、世界の果ての支持を受けているのは確かね。
幹:いずれにしても、その誰かは、必ずこの学園のどこかにいるはずです!
樹璃:すまない、よく聞こえなかった。

ウテナ:チュチュ!チュチュ!....ったく、どこ行っちゃったんだろ?
草時:この生き物は、あなたのですか?
ウテナ:あ、チュチュ!
草時:君は...!
ウテナ:すいません、こいつ、何か迷惑かけました?
草時:....いや、台所に仕掛けてあったネズミ取りに引っかかって、泣いてたんです。
ウテナ:ねずみ取り...?たまにはおとなしくしろよな.....。
草時:天上ウテナさん。
ウテナ:え?.....どうして、ボクの名前を?
草時:初めまして、あなたには以前から興味を持っていたんですよ。僕は、高等部の御影草時です。
ウテナ:御影って.....じゃ、あの御影ゼミを主催している天才高校生の?
草時:どうです、天上ウテナさん、僕のゼミに入る気はありませんか?
ウテナ:えっボク?ボクは、この前のテストも追試だったんですけど...?
草時:学力は関係ありません。我がゼミナールが求めているのは、常に個性的なパーソナリティです。.....遊びに来てくれるだけでも、大歓迎ですよ。
ウテナ:御影さんのゼミって、この建物を使ってるんですよね?
草時:そうです。根室記念館。....あなたも、この建物にまつわる噂を耳にされてるようですね。....ここで百人の少年が死んだという話なら、事実ですよ。昔、根室教授という人がいてね。ここで火事があって、その人の生徒たちが、閉じこめられて焼け死んだそうです。この根室記念館は、そのあと改装されたそうです。でも、昔のことですよ。

ウテナ:おじゃましまーす。暁生さん.....?いないのか、めずらしいな。

草時:!あんたか.....。あんたとは、取引をしただけだ。命令をきく筋合いはない。
暁生:そう、これは契約さ。....あの時以来のね。

男の子:しばらくは消えないでしょうね、根室教授。
根室:え、なんだい?
男の子:雪のことですよ、教授。
根室:教授はやめてくれ。歳は変わらないんだ。
男の子:けじめは大事ですから。あなたという天才がいるから、これは立ちあがったんでしょ?
根室:まさか.....それは買いかぶりだよ。
男の子:それにしても、ここまで秘密主義だとは思いませんでした。まるで僕たちは部品扱いですね。
根室:それは承知で、学園と契約したんだろ。
男の子:だけど、隣のセクションの研究内容もわからないなんて.....噂では、世界を革命する力であるとか、永遠を手に入れるための研究であるとかいわれてますね。何かヒントだけでも教えてもらえませんか?
根室:僕だって、噂以外のことは知らない。それ以上に興味もない。.....ところで、前から疑問に思っていたんだけど.....
男の子:なんです?
根室:君たちがみんな左の薬指にしている、その指輪はなんだい?
男の子:特に意味はありません。最近、流行ってるんですよ。

男の子A:天才、根室教授か.....本当に彼は、今回の内容を知らないんだ。
男の子B:そのようだ。だが、彼の頭脳は(必要だと)、あの方がおっしゃっていた。
男の子A:論文はおもしろいけど、本人は乾いているな。物事に執着しない様子を気取ってるのは、青いよ。
男の子C:気取らせとけばいいさ。電子計算機みたいな男だ。せいぜい利用すればいい。

根室:当時、確かに僕は、電子計算機のような男だった。計算機は優れた機械だが、機械には目的がない。乾いた僕の乾いた毎日。そしてあの頃、研究内容に興味がなかったのも本当だ。...成り行きで携わった仕事が進まないのも、僕にはどうでもいいことだった。
時子:研究主任の、根室教授ですね?...私は理事会より派遣されました。今回の監査官をつとめます。千唾(ちだ)時子です。よろしく。

時子:このへんは道が悪いから、ぬかるんで大変だったでしょう?
根室:ええ、まあ。
根室:わざわざ家にまで呼んで、なんの話ですか?
濃すぎるわ....少し濃すぎたみたい。蒸らし時間はいつもと同じにしたのに。砂時計も、おくれることがあるのかしら?
根室:与えられた仕事は予定通りに進んでますよ。完成するかどうかは保証できませんが。
時子:あなたが、他の人に命令されて動くような方ではないのは存じています。天才は神のもの。その心を地上につないでおくことはできません。
根室:僕は天才じゃありませんよ。
時子:なぜ、この仕事に携わったのですか?
根室:純粋にビジネスです。ま、すでに、契約以上の仕事はこなしてると思いますがね。百人の優秀な少年たちが鳳学園に集められて、これに従事している。彼らは、この研究目的が、世界を革命する力だとか、永遠を手に入れるためのものだと噂している。永遠を手に入れようなんて、永久機関のからくりを作りだそうとするようなものだ。人はもっと謙虚に、神様の与えてくれるものに感謝してればいいんです。
時子:でも、あなたなら、きっと....。あ?....少し、失礼します。

時子:馬宮、何をしてるの!...今日は、ずうっと寝てるようにって言われたでしょ。
馬宮:うん.....でも、ちょっとバラが気になって...。
時子:すぐにベッドに戻りなさい。
馬宮:うん、あと、ちょっと。
時子:自分のことを大事にしない人が、私は一番嫌いなの!

時子:...すいません.....変なとこお見せしちゃって。早くベッドに戻るのよ。
馬宮:根室教授ですね?
根室:君は?
馬宮:千唾時子の弟、馬宮です。あなたとはぜひお会いしたいと思ってました。
根室:面白おかしく噂されてますからね。電子計算機のような男だとか。
馬宮:あなたの論文を読んだんです。僕は、姉さん以上に尊敬した人は、あなたが初めてです。姉さんは、あなたに会うために、鳳学園に来たんです。

(eyecatch)

時子:おとなしく、寝てないからでしょう?
馬宮:姉さんの注射が好きなんだ。
時子:バカ言わないで、イヤな子ねえ。

時子:あの子のためなんです。この仕事に参加したのは。....もうあきらめるしかないって、お医者様にも言われているんです。でも、あれが成功すれば....。
根室:あれは、医学とは関係ありませんよ。成功しても、弟さんの病が治るわけじゃない。
時子:でも、永遠を手に入れてやれるかも。....ごめんなさい、泣いたりして。
根室:いえ....人の涙を見たのは初めてのような気がして...。
時子:あなたには誰か大切な人がいますか?それとも、天才と呼ばれるような人は、他人を好きになったりすることはないのかしら....。
根室:そうですね、....確かに、今日までは、そうでした。

男の子A:最近、根室教授は仕事熱心だね。
男の子B:理事会から監察官が派遣されたろ。
男の子C:まさに彼女は適任だったわけだ。
男の子B:まったく、あの方のやることにはムダがないね。
男の子A:じゃ、教授は結局こいつの内容は知らないのか....。

根室:寝てなくていいのかい?
馬宮:ええ.....今日は少し、気分がいいんです。
根室:そう。....ここの庭の雪は、なかなか消えないねえ。
馬宮:姉さんは理事会に呼び出されたから、たぶん夕方まで、戻ってこないでしょう。
根室:いや、いいんだ。今日は、君の顔を見に来ただけだから。
馬宮:これ、いかがですか?バラの砂糖漬けです。姉さんが作るんです。このドライフラワーもそうなんです。あの人は、花が散るのを見たくないんですよ。こうすれば、短い命の花も、少しは長持ちさせることができる。でも、こうまでして永らえても、花自身は嬉しいんでしょうか?...永遠なんて、この世にはありませんよね。ただ、永遠にあこがれる心が、美しく思えたりするだけだ。
根室:君は、僕やお姉さんのやっていることが、成功しないと思ってるの?
馬宮:二人のことは尊敬してますし、ありがたいと思ってます。
根室:....邪魔したね。また来るよ。
馬宮:根室教授。
根室:ん?
馬宮:あなたが僕を気にかけて下さっていること、ちゃんと姉さんに言っておきますから。

暁生:どうしても方程式が解けませんか?
根室:ここは、部外者は立入禁止だ!
暁生:ここに部外者はいないよ。君以外はね。.....それが、世界を革命するための第一歩だ。それで、すべてが動き始める。
根室:バカな!....こんなことを実行できるものか!......それは、みんながはめてる指輪じゃないか?
暁生:それは、バラの刻印。僕との契約の証だ。
根室:契約?
暁生:そう。ここで働く百人の少年たちは、みな僕と契約している。
根室:どうかしてる。契約ってなんだ?その契約してる彼らを、なぜこんな目にあわせようとする?.こんなことまでして永遠を手に入れても、彼女は喜ばない。
暁生:彼女ね.....そのバラの刻印は預けておく。永遠がほしくなったら、君の指に飾りたまえ。君は、世界を革命するしかないだろう。君の進む道は用意してある。

根室:あっ!

時子:ホントなの?あなたがやったの?これは、あなたの仕業なの....?
馬宮:うん。
時子:なぜ、こんなことを.....
根室:彼らは契約していた。古代の生物が死んで、石油や石炭のような地下燃料が残った....。そういう犠牲がなければ、今のエネルギー文明はなかった。そういう犠牲は、常に要求される。
時子:何を言ってるの?
根室:これが、君の進めている仕事の第一歩だ。やがて、この学園から永遠への道を開くための。
時子:根室さん?
根室:....馬宮君のやったことは正しい。僕も、永遠をこの手にしてみたくなった。

時子:.....?

影絵少女C:号外!号外!号外!...ウィーン、ピーピー、ガーガー。....できた、科学の粋を集めて作った、万能ロボットが!....ピーピー、ガーガー、ロボットは歳取らない。ロボットは疲れない。おサル、つかまえる。....お前は人間より優れている。...ロボットは優れている。おサル、いっぱいつかまえる。....お前は悩んだりもしない。.....ロボットは悩まない、おサル見たら、すぐとる。ロボットは寂しくない。とったおサル、いるから。ロボットは、ずうっと働き続ける。おサル、いっぱいとれる。
時子:でも、あなたを見ている方は、寂しくなるわ。
おサル、いる、おサル、いる.....

暁生:君か....久しぶりだな。
時子:この学園もずいぶん変わったわね。....今そこで、根室教授の姿を見たわ。

ウテナ:いいか、正体不明のやつらのいいなりになることはないんだ。
アンシー:でも.....仕方ありません。私はバラの花嫁ですから。
ウテナ:バカ!自分のことを大事にしないやつが、ボクは一番嫌いなんだ!

草時:時子.....。

時子:彼もあなたと同じで、あれから少しも歳を取らないのね。
暁生:学園という庭にいる限り、人は大人にならないのさ。
時子:何か、間違ってるわ、そんなの。
暁生:君は、普通の人生を送ってる?
時子:そうね....夫はやさしい人よ。よくしてくれるわ。
暁生:今日は何しに?
時子:弟の....馬宮の墓参りに来たの。
時子:ねえ?あなただって知ってるでしょう?実を結ぶために、花は散るのよ?
暁生:そうだね。

(ending)
(preview)
ウテナ:香苗さん、梢ちゃん、若葉、みんなを操ってむりやり決闘させている黒幕はいったい誰なんだ!
アンシー:さあ、私にも分かりません。
ウテナ:ところで、根室記念館の天才高校生が、何かボクの力になってくれるっていうんだ。御影草時、思い切って相談してみようかな。
アンシー:ええ、ウテナさまのいいように。
ウテナ:次回、少女革命ウテナ、「デュエリストの条件」
アンシー:絶対運命、黙示録。


Episode #23

(opening)

馬宮:ねえ見て、黒バラ、最後の一本になっちゃった。
草時:ああ。(時子、君の弟は罪深い子だよ。だけど、百人のデュエリストの少年たちの犠牲の上に、本当の永遠はあるんだ。)
時子:ホントなの?あなたがやったの?これは、あなたの仕業なの....?
馬宮:うん。
時子:なぜ?...どうしてこんなことを....。

馬宮:強いね、天上ウテナ。彼女には未知数の強さを感じる。
草時:ああ。
馬宮:ねえ見て、黒バラ、最後の一本になっちゃった。
草時:どうしてもできない。必ず勝てるというシナリオが。....やはり、仲間にするしかないかな....。

樹璃:天上ウテナを仲間にする?
七実:そう。得体の知れない連中が動いてるんだもの。ここは、現在エンゲージしてる彼女にも協力してもらうべきよ。
幹:でも、七実君は彼女が嫌いなんじゃないの?
七実:好きじゃないけど、今は生徒会の危機だもの。状況を考えれば、仲間にするべきだと思うわ。....私ってえらい。お兄さま、この生徒会は、必ず七実が守ります...
幹:でも、仲間仲間っていうけど....
樹璃:私たちだって、別に仲間じゃないだろ。
七実:じゃ、私たちって、なによ?
幹:僕たちは....
樹璃:デュエリストさ。

タイトル:デュエリストの条件

ウテナ:ここにも、ここにも、ここにもいないのか....。姫宮どこいったんだろう?ここにもいないとなると、他に探すところなしだなあ。やっぱりこの間怒ったのがまずかったのかなあ。まったくバラの花嫁なんてやってる友達持つと、気苦労が絶えないよな。
草時:いい香りですね。
ウテナ:あれ、御影先輩。
草時:たった一輪のささやかな香りも悪くないが、たくさんのバラが放つかぐわしさも捨てがたい。互いに競い合う緊張感がある。
ウテナ:姫宮、どっかで見かけませんでした?
草時:さあ、誰ですか?
クラスメートなんですが、朝から行方不明なんですよ。
君はとても友達思いなんですね。
そんなことないですけど。この前の話、考えておいてくれました?
ウテナ:この前の話って?
草時:御影ゼミに入るって話ですよ。
ウテナ:いやあ....でも、何でボクなんか?
草時:あなたには、不思議な魅力がある。正直、僕はあなたにひかれています。できればそばにいてほしい。
ウテナ:なんだ、そうだったんですか?(大胆な発言だな....)
草時:遊びに来てくれるだけでも、大歓迎です。それに、もし僕たちの仲間になれば、何か困ったとき、力になりますよ。
ウテナ:遊びに行くのはかまわないけれど、うーんと、別にボクは困っていることなんて何もないし、力になってもらわなくても。大体、遊びに行くとしても、チュチュなんて連れていった日には、あちこちにクッキーのくずをまき散らかすから、後片付けが大変で大変で。....あれ?
草時:あなた自身でなくてもいいんです、身近に誰か、困ってる友達はいませんか?
ウテナ:困ってる友達.....?困ってる友達ねえ。

(ウテナ:お願い、開けないで.....この棺は、私の分なの。生きてるなんて、なんか気持ち悪いよね。どうせ死んじゃうのに、どうしてみんな生きてるんだろう?なんで今日までそのことに気づかなかったんだろう?永遠なんて、あるわけないのに。)

ウテナ:姫宮、帰ってたのか....ねえ姫宮....君は、どうしてもバラの花嫁を止めることはできないの?....誰か困ってる友達か...。

ウテナ:すみませーん、すみませーん、誰かいませんかー。もしもーし?

アンシー:うーん、何で最近こんなに眠いのかしら。

秘書:来客よ、エントランスホール。
草時:ありがとう、すぐ行く。
秘書:じゃ私、車待たせてあるから、もう行くわ。
草時:そう、今までごくろうさま。
秘書:突然出ていけだなんて、あなたらしいわ。最初出会ったときもそうだったわね。僕の秘書になってくれって、突然....。でももういいの。あなたの束縛なしで、自由に羽根をのばせるし。あなたから見れば、私はどんな風に見えていたのかしら?
草時:君は君だろ。
秘書:あなたは確かになにか特別な人よ。選ばれた人かも知れない。でも、わたしが好きになったのは、あなたみたいな、年下の坊やじゃないの。
草時:僕は僕だよ。
秘書:じゃ、さよなら。

ウテナ:あれ?香苗さん......これは、あの時の!.....梢ちゃんも!.....なんなんだ....?

男の子A:決闘広場への道は開いた....
男の子B:いよいよあれが始まる。
男の子C:これで、根室教授の役目は終わった。
男の子C:これからは、彼抜きで進めた方が、
男の子B:あの方の意志に添っているだろう。
男の子A:きっと彼は誰かに敗れる。放っておいても差し支えない。さあ、シャンパンを開けよう。

馬宮:みんな勝手だよね。....あの城が出現し、広場への道が開いたのは、あなたのおかげなんでしょう?....きっとみんな、あなたの力を恐れているんだ。
根室:僕は、決闘はしない。
馬宮:なぜ?あなたは世界を革命する力を、その手にしたいとは思わないの?あの城には、永遠があるんだ。永遠って、いつまでも続くってことでしょう?何年も、何十年も、何百年も、何千年も、何万年も、何億年も、何億年の何億倍も...僕の命はほんの一瞬かも知れないけど、永遠は、この一瞬が何千年の何億倍も続いて、それでも終わりがないんだ。僕は、僕は、僕は.....永遠がほしい....。

時子:何を言っているの?
根室:これが君が進めているものの、第一歩だ。やがて、この学園から永遠への道を開くための。
時子:根室さん!
根室:馬宮君のやったことは正しい。僕も、永遠が手に入れたくなった....。

ウテナ:あ?
草時:やっと、帰ってきましたね。いずれは、僕のところへ戻ってくると思ってましたよ。....時子さん、僕を捨てたことを、後悔しなくていいんです。
ウテナ:御影先輩、あんた.....

(eyecatch)

ウテナ:御影先輩、あんたがみんなを操ってたのか.....?
草時:操る?まさか。この人たちは皆、御影ゼミの仲間だった人たちですよ。彼女たちは皆、忘れられない思い出を持っていました。大事な大事な思い出です。彼女らは、それを守るための闘いに赴いたのです。言うなれば、思い出によって、人生を変えようとした人々....。
ウテナ:思い出....?
草時:君はどうですか?
ウテナ:え?

ウテナ(少女):また会えるよね、王子様?また会えるよね?その時まで、私泣かないから。どんなことがあっても、我慢するから。

草時:君ならば、きっと僕みたいに思い出を永遠のものにできる。世界は、それを必要としています。君の進む道は、用意して...(殴る)
ウテナ:このやろう!世界って誰だよ?みんなを操ってたあんたなんかと、ボクを一緒にするな!
草時:そう興奮するなよ。自分の大切な思い出に触れるなって、叫んでるみたいだぜ。
ウテナ:なんだと?分かったようなこと言うな!ボクの思い出は....
草時:そうか....君を今まで支えてきたのは、その思い出か。....恥じることはない。君はそれに値する思い出を、持っているのだから。
ウテナ:あっ....!?
草時:美しい思い出を持つものだけが、願うことを許されるんだ。あの頃が永遠に続いたならば....、今もあの頃のままでいられたならばと。僕には分かる。君は僕と同じだ。思い出を永遠のものにしたいと願ってやまない、そんな人の目と同じだ。
ウテナ:ボクと決闘しろ!今日の夕方、決闘広場に来い!お前を叩きのめして、ボクがお前と違うことを証明してみせる!

馬宮:先輩、どうして彼女を呼んだの?なぜ、黙ってるの?
草時:(笑い)
馬宮:何がおかしいの?
草時:ほら、見ろよ、涙だ。
馬宮:涙?
草時:体の痛みに、思わず涙が出たらしい。もし彼女が僕のバラの刻印を見つけなかったら、僕はあの場で殺されていたんじゃないか?ふふふ。
馬宮:なんだか楽しそうだね?
草時:全く。彼女はいつも僕を傷つけ、驚かせる人だよ。やはり時子は帰ってきた。僕との決着をつけるためにね。
馬宮:決闘を、受けるつもりなの?
草時:結局、僕たちはあれから少しも進んでいない。だけど彼女は、僕たちよりも、ディオスの力に近づいている。彼女に勝たなければ、僕たちは前に進めない。世界の果てに咲き誇るバラ、僕に!

草時:君の目は、思い出を永遠のものにしたいと願ってやまない、そんな人の目と同じだ。

ウテナ:うわ!ああああああああ
若葉:ウーテーナー!うううううううん!
若葉:こら!最近大親友の若葉様のことを、忘れておらんかね?
ウテナ:おらんよ。
若葉:何があっても私は、ウテナの味方だからね!
ウテナ:え?

影絵少女C:号外!号外!号外!....父ちゃんはな、お前くらいの歳の頃、学級委員だったんだ。...へーえすごいや父ちゃん!....君ーこの書類はなんだねダメじゃないか!....くそー、オレは昔学級委員だったのに!....あなた、こんなところに靴下を脱ぎっぱなしにして、ダメじゃないの!....くそー、オレは昔学級委員だったのに!....じゃ父ちゃん、学校言ってきまーす!....待て、そのランドセルを貸せ。父ちゃんが学校へ行く!
若葉:行ってらっしゃーい!

ウテナ:世界を、革命する力を!

草時:行くよ!.....よく受けた。だが!.........まだ本調子じゃないな。君に締め上げられた肩が痛むからな。でも、君に負ける気はしないよ。
ウテナ:ふざけるな!陰で操っていたやつなんかに、負けるものか!
草時:それは違う。...僕の黒バラを受けた者たちは、皆、自分の意志で僕の下へ来た。そして自分の意志でこの場所に立ったんだ。ここに立つものは僕と同じだ。永遠にひかれてやってくるんだ!
ウテナ:黙れ!おまえが勝手にやったことを、他人のせいにするな!
草時:君を最初に見たときから僕には分かっていたよ。君も昔、大切な人に出会ったんだ。それで、その人に自分の人生を変えられてしまったんだ。君はそのイリュージョンによってここに立っているのさ。だから決闘場に入れたんだ!違うか!結局は君も僕と同じなんだ!....そして君はここで、僕にここで負ける。敗北するんだ!時子!
ウテナ:何分からないことを。お前なんかに負けるか!
草時:強情な子だ、時子。胸のバラを散らさねばわからぬらしい。
ウテナ:はっ!
草時:やはり跳ねた!
ウテナ:しまった....!
草時:叫ぶ
アンシー:ウテナさま!....ウテナさま!
ウテナ:姫宮!姫宮ー!
アンシー:ウテナさまーーー!!!
草時:うおおおおお!
馬宮:先輩、あなたはこれから負けるよ。
草時:馬宮?
馬宮:彼女にバラを散らされるんだ。
草時:何だと?どこだ馬宮、馬宮、馬宮?....あっ!これは、誰だ?
馬宮:あなたは彼女に勝てない。思い出の中にいては、あなたは永遠に勝てないんだ。
草時:時子!永遠はもう目の前なんだ!お前を倒す!世界を変える力を、この手に!...なぜ僕を理解しない?僕はすべてを受け入れている!君の弟の罪さえも....!
馬宮:先輩、さあ、よく見て、あの時、あの場所には、本当は誰がいて、誰がいなかったのか。あの館に火を放ったのは、本当は誰か...!
草時:馬宮....ひさしぶりだね、君を見たのは。何十年ぶりだろう.....。

暁生:ああ根室君か、そろそろかけてくることだと思っていたよ....そう、君が時子への未練から側に置いていた馬宮という少年は、ずっと昔に死んでいる。.....君が自分の時間を止めてまで大切にしていた思い出のイリュージョンを、オレは利用したんだ。....君が可能性を秘めたまま、大人になりきれずにいた時間は、役に立ったよ。でも、それも終わりだ。これから先、君の進む道は用意していない。君は、卒業してくれ。

ウテナ:まいったなあ。姫宮を探していたらおかしなところにきちゃったね。
幹:ここはずいぶん昔に、大きな火事があったんですよ。
ウテナ:へえ。そんなに大変なことがあったんだ。
幹:死傷者は無かったらしいんですが、なにしろ生徒会発足以前のことなので、資料が残っていないんですよ。
ウテナ:ふーん。
幹:えーと、何て言う建物だったかなあ。釧路記念館?何か違うなあ。....うわあ!思い出さないと気持ち悪い!
ウテナ:姫宮ー!どこに行ったんだよ?

暁生:どうした、彼に同情しているのか?いや、最初からいなかったんだ。君と同じようにね。

(ending)
(preview)
ウテナ:石蕗君が、暴れ馬にはね飛ばされた!
アンシー:まあ、大変!
ウテナ:あれ?この手帳は何だ?いやダメだ、人の手帳を勝手に見るのはいけないことだ。
アンシー:すごーい!こんなにいけないことが書いてある!
ウテナ:だから見ちゃいけないって!
アンシー:まあー、こんなことまで!
ウテナ:え、どこどこ?....次回、少女革命ウテナ、「七実様秘密日記」
アンシー:絶対運命、黙示録。

Episode #24

(opening)

石蕗:えー今日の午前中は、平常通りの授業です。三時間目の音楽は、音楽鑑賞の予定になっていまして、題材は、オルフの「カルミナブーラ」。提出用のレポートは、既に完成しています。音楽室に行く前にロッカーをのぞいて下さい。6時間目の英語は単語テストがありますので、虎の巻を。
七実:そ。
石蕗:放課後の予定は、昼休みにお知らせします。あとは....
七実:石蕗?
石蕗:はい?
七実:ありがとう。
石蕗:あ、はい!

某:暴れ馬だ!暴れ馬が出たぞ!
七実:ああああああっ!
石蕗:危ないっ!!!

石蕗:僕の名は石蕗美蔓。七実さんにすべてを捧げた小学生。そして僕には、決して誰にも知られてはいけない秘密がある。

タイトル:七実様秘密日記

ウテナ:石蕗君がケガしたって?
七実:ええ。私をかばって。
アンシー:死んじゃったんですか?
七実:まさか!ケガの方は打ち身と深爪程度なんだけど、意識が戻らないの。今、病院を手配してもらっているところよ。
アンシー:あら、これは?
ウテナ:スケジュール帳?
七実:ああ、それは石蕗のよ。
ウテナ:連絡先とか書いてない?
アンシー:日記のようなものが書いてあります。
七実:何?読んじゃって。
アンシー:僕の名は石蕗美蔓。七実さんにすべてを捧げた小学生。
石蕗:うわわわ......

石蕗:僕はずっと、七実さんを見つめてきた。....七実さんだけを。
(slap)
茎子:あんたのせいよ。あんたがたらしこんだから私たちの西園寺さんはダメになったんだ!
愛子:西園寺先輩、剣道部もずっと休んじゃってるのよ。
優子:怖い子。
茎子:私たちの西園寺さんを、返して!
愛子:何とか言いなさいよ!
七実:何をしてるの?
生徒達:あ...!七実様!
七実:いったいこれは何の騒ぎかしら? 場合によっては生徒会に報告しなければいけませんね。
生徒達:いいえあの、違うんです...失礼します!
七実:大丈夫?
アンシー:え...どうもありがとう。あなた、七実さん...でしたっけ。
七実:姫宮先輩は男子生徒に人気があるから、つい妬まれちゃうのね。

生徒達:あ...!七実様!
七実:いったいこれは何の騒ぎかしら? 場合によっては生徒会に報告しなければいけませんね。
生徒達:いいえあの、違うんです...失礼します!
七実:大丈夫?
アンシー:え...どうもありがとう。あなた、七実さん...でしたっけ。
七実:姫宮先輩は男子生徒に人気があるから、つい妬まれちゃうのね。
石蕗:七実さんは素敵だ。清く正しく美しく。弱きを助け、悪を憎むその姿は、まさに学園の正義。だけど僕は知ってるんだ。七実さんの、本当の素顔を....。
ウテナ:七実の素顔?
七実:何よ、その目?
ウテナ:彼は君のことをよく知っているらしいね、表も裏も。
七実:お、おほほほほ!裏って何のことかしら?

生徒達:七実様、ちゃんと贈ったドレスを着てきましたね。よく似合ってますこと。
七実:ふふふ。
アンシー:きゃああああ!
ウェイター:ああっ、こ、これは...失礼いたしました。
七実:ふふふふ。
石蕗:自分の手は決して汚さず、あえて遠くから苦しむ様を眺めるだけのストイックなそこ態度!これこそまさに、学園を陰で牛耳る者の正しい姿。
ウテナ:あったね、こんなこと。
アンシー:あれは七実さんの仕業だったんですね。
七実:そ、それは石蕗の妄想よ。私そんな突飛なこと想像さえできない。ホント石蕗って変な子ねえ。

石蕗:七実さんの意地悪は、その程度では終わりません。そう、あの時も....。
生徒:七実様、2年A組、時間割通り調理実習に入っております。
七実:そのようね。で、例のものはどうなってるの?
茎子:はい、きっちりとすり替えておきました。火を噴く辛さ、インド特産激辛100倍カレー!
七実:結構。みてらっしゃい、天上ウテナに姫宮アンシー! もうすぐ私がヒイヒイ言わせてあげる!
凡庸な男子たち:カレー、カレー、カレー。
アンシー:できました。
凡庸な男子たち:パク、パク、パク
生徒:七実様?
七実:今いいところなの。静かにして!
生徒:申し訳ありません。その...、
七実:何?
生徒達:すり替えたのは100倍カレーではなく、辛さ爆発、木っ端みじん、幻の象がパオーン、超辛9000億倍カレー、だったそうです。
七実:幻の...木っ端みじん?
together:あ.......うそ?
石蕗:天上さんと姫宮さん、そう、二人の人格は、七実さんのカレーで入れ替わってしまったのです。
アンシー:ウテナさまーすごいです!!
ウテナ:自分の体にほめられるのも複雑だなあ。
アンシー:私、運動は苦手ですから、自分の体が華麗に活躍している姿を見るのは嬉しいです。
ウテナ:しかし元に戻る方法を考えなきゃな。
アンシー:心配ありませんわ。きっと今頃、七実さんが....
石蕗:そう、七実さんはがんばっていた。
together:ああああああああ!
石蕗:自らの罪を償うため、笑顔を絶やさず。
茎子:七実様!
七実:象?
together:あああああああ!
愛子:七実様!
七実::またか!?
together:ああああああ!
優子:七実様!
together:ああああああああ!
石蕗:おみやげだよ!....そして七実さんは、たくましくなって帰ってきた。
冬芽:七実!
(象)
七実:あーあーあーあーあーあーっ!!!
冬芽:七実!予備は?
七実:今のが最後の一個です...。9000億倍まで精製するまで、あと200年かかるって言ってました....。
together:に、200年!
石蕗:まさに因果応報を見る思いでした。
アンシー:そういえば、そんなこともありましたねえ。
ウテナ:七実って、ずいぶんワルだね。
七実:何言ってんのよ!人格が入れ違っちゃったのは、私が仕込ませたカレーのせいじゃなくて、純粋にあんたの料理の腕のせいだったでしょう?
アンシー:そうでした?
七実:あんたね!
ウテナ:あとは、どんな悪事が書いてあるのかな?
七実:ちょっともう!そんなことより、石蕗のことは書いてないの?
アンシー:書いてあるのは、七実さんのことばかり。
石蕗:七実さんは、ことあるごとに姫宮さんにつらく当たっていたようです。そう、あの時も....
幹:へえ。この寮ってお化け屋敷って言われてるけど、中はきれいなんですね。
七実:いい部屋ですよねー。
ウテナ:ああ。姫宮が毎日まめに掃除してくれるからね。
幹:姫宮先輩って、キレイ好きなんですね。
七実:すごいわー私感心しちゃう!...(フン!見てなさい。姫宮アンシーをかわいい子だなんて思うのも今のうちよ!)
幹:いいなあ天上先輩は。こんな女性らしい人と住めて。
ウテナ:嫌みかあ?
(七実:姫宮先輩〜、消しゴム貸して下さいね!...あーらー!!デンデン虫よ!青大将よ!生タコがいるわ!おーほほほ。姫宮アンシー正体見たり!....なーんてことになるのよ!!)
石蕗:でも、七実さんだってつらいんだ。傷つけた方が、傷つけられた方より傷つくことだってあるんだから。
七実:姫宮先輩、消しゴム貸して下さいね!(ふふふ、姫宮アンシー、覚悟なさい!)
...ああああああああ!!きやああああああああ!
ウテナ:そこ、勝手に開けると危ないよ。
七実:う、嘘よ...いくら何でもこれは夢よ! こんな巨大な生タコが、生タコの足がああ!
ウテナ:本当にワルだねえ、君って。
七実:ワル?この私が?....ああもう冗談じゃない!あの時は私の方が被害者だったでしょう?
アンシー:....とまあ、姫宮さんを目の敵にしていた七実さんですが....
七実:や、や、や、や、やーねえ。....目の敵になんかしてないのに。
ウテナ:今更とぼけられても。
アンシー:それには深いわけがあるのです。とても人には言えないような、深いわけが。
七実:わけ?
ウテナ&アンシー:うん。

(eyecatch)

七実:ちょっともう、やめてよ!返しなさいよ!
ウテナ:君のじゃないだろ!
アンシー:引っ張ると破れますよ。
七実:こ、この人でなし!悪魔!ならず者!
ウテナ:それは自分だろう!
アンシー:しーっ。
together:え?
七実:どうしたの?
アンシー:聞こえる。
七実:何なのよ?
アンシー:小さな歯ぎしり。風に揺れる葛(かずら)橋みたい。
七実:いいえ、これは海辺のブランコがきしむ音。

石蕗:かつて、生徒会に君臨していた冬芽先輩....。
七実:だーれだ?
冬芽:よせよ、七実。
七実:いい夜ですわね。お兄さま。
冬芽:甘えん坊だな。我が妹君は。
石蕗:七実さんにとって、冬芽先輩は、世界のすべてであり....
七実:あんたたちってばあ!
ウテナ:冬芽先輩だけが、七実さんの理想のすべてを満たす唯一の男性なのです。

石蕗:僕はまだまだ未熟だけど、いつかきっと、冬芽先輩のようなお兄さんになりたい!
ウテナ:もうよそう。
アンシー:え?
ウテナ:よくないよ。これには彼の思いがつまっていたんだ。それをのぞき見るなんて。
七実:ほとんど読んでおいて何が石蕗君の思いよ。私の思いはどうなるのよ!
ウテナ:49kgくらい?
七実:げ!??増えてる!
アンシー:あら、このページは何かしら?作戦その一。
七実:作戦ですって?

七実:ここはどこ?私は誰?....だめ、何も思い出せない....。
石蕗:七実?
七実:誰?
石蕗:忘れたのかい?お前のお兄さまだよ。
七実:お兄さまなのね!
石蕗:おいで、七実!
七実:お兄さまあ〜〜〜!

七実:ちょっと何なのこれ!
ウテナ:さあ、
アンシー:作戦その二。
石蕗:ああっ!ち、ちょっと待って下さい!
七実:石蕗!
石蕗:その先はもう読まないで下さい!
七実:いまさら何言ってるのよ石蕗!あんたの悪だくみを、根こそぎ暴いてやるわ!
石蕗:わ、悪だくみなんてそんな....僕は七実さんに似合う男性になりたい一心で....。
七実:もう!あんたって子は!....
ウテナ:七実、落ち着いて!そんなに興奮すると、また牛になるよ。
アンシー:作戦その二。もう一度七実さんが牛になったら、今度はこんな風に対処しようと思う。
ウテナ:七実!そのカウベルを捨てろ!....捨てろ!
七実:うるさいわねえモウ。
ウテナ:君は、その首の鈴が本来何のためのものであるか、知っているのか?
七実:モーウ、セバスチャンディオールのカウベルでしょうモウ。
ウテナ:カウベルってのは本来牛の首に付ける鈴のことだ!
七実:何言ってるのモウ。
ウテナ:まわりをよく見てみろ!
七実:!.....え!?じゃ、じゃあこの王室御用達のセバスチャンディオールは...?
ウテナ:セバスチャンディオールじゃなくて、子牛ちゃんディオールだ。
七実:こ、子牛ちゃん....!?
ウテナ:君はカウベルの何たるかも知らずに、そのバカでかい鈴を首に付けて、得意になっていたわけさ。今の君は牛そのものだ!
七実:牛....?
ウテナ:すでにしてしまったことは仕方がない。今の君にできることは、身も心も牛になる前に、その鈴を捨てることだ!
七実:な、何言ってるのよモウ!私が牛になるはずないじゃないのモウ、驚かさないでモウ。冗談じゃないわモウ!
アンシー:ウテナさま、やっとできました!
ウテナ:何だこれ?
アンシー:セーターですわ。
ウテナ:ありがと。でも、ちょっと季節はずれだね...。
七実:!モウちょっとで猛烈に注目されるはずだったのに....なんか朦朧としてきたわ。妄想なのかしら?盲腸?それとも猛毒のヘビに咬まれたのかも?だれか、毛布持ってきて....
ウテナ:七実?
七実:モウ、モウ、モウ、.....モウ!
ウテナ:七実その姿は!
アンシー:怖い!
石蕗:な、七実さん!
アンシー:こっちにきます!
ウテナ:あ、分かった!この赤いセーターを見て、興奮してしまったんだ!
アンシー:まあ!
ウテナ:姫宮、逃げて!
アンシー:はい!
石蕗:もういいんです。....もういいんですよ、七実さん。あなたが牛になっても、僕がずっと面倒見てあげますから。....七実さんと一緒に、いてあげますから。....モーウ!

石蕗:やめろーやめてくれー!
七実:往生際が悪いわよ、石蕗!
石蕗:見ないでー!!
全員:あ!
七実:あーあーあーあーあー!

七実:ここは?
石蕗:あ、気がつきましたね?気分はどうですか?
七実:何を、書いてたの?
石蕗:ズレちゃったでしょう、スケジュール。調整してたんです。
七実:そう、どうなった?見たいわ。
石蕗:あとでお知らせしますよ。心配しないで。....あ!
七実:いただき!
石蕗:しまった!
七実:やはり読まれてはまずいことが書いてあるみたいね。...押さえて!
石蕗:や、や、や、や、やめろー!!放せー!!放せー!!!!!
七実:....なになに...作戦その24?
石蕗:うわああああああ!おしまいだ!そのページを読まれたら僕はおしまいだああああ!

影絵少女C:号外!号外!号外!....もうおしまーい、もうおしまいだあ!....どうして?....もう隠しきれない私の秘密、王様の耳はロバの耳!....ロバだったの?....おしい、ロバではありません。....実は、僕は、女の子の顔をかぶったおサルだったのさ、モンキー。....まあ、何て破廉恥、この子はもうお嫁に行けないわ。....おサル、つかまえた、おサル、つかまえた、おサル、つかまえた...
Ordinary guys:カレー、カレー、カレー、カレー....。

(ending)
(preview)
アンシー:今日からお兄さまの部屋で、一緒に暮らすことになりました。ここが私とウテナさまの新しい部屋です。
ウテナ:暁生さんって、なんか懐かしい感じのする人だよね。...ねえ姫宮、もし君に何か困ったことがあったら、まず僕に話してよ。何でも助け合おうよ。僕は、君とそういう友達になりたいんだ。
アンシー:ウテナさま、私、本当は....
ウテナ:次回、少女革命ウテナ、「ふたりの永遠黙示録」
アンシー:絶対運命、黙示録。


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